第14話 初めて見たら誰でも驚く

「依頼を受けた荷物はここにあるぜ!」


 バッツが胸をおもいっきり反りながら宣言する。


「どういうことだ? 私には何もないように見えるが」

「へっ! あんたの目には見えないのか? だったら⋯⋯ぐはっ!」


 カリンさんが喋っているバッツの腹部に拳を放つ。バッツはその痛みで膝から崩れ落ち、黙るのだった。


「あんたが偉そうに言うな! 全てユートくんのおかげでしょ!」


 しかしカリンさんのストレートが効いたのか、バッツは喋ることが出来ない。


「ユートくん後はお願い」

「わ、わかった」


 カリンさんは良い拳をお持ちのようだ。ジョブは接近戦向きではないが、世界を狙える可能性を秘めていた。


「それで? 荷物はどうしたんだ?」

「荷物ならここにあります」

「ここに? 君は何を言ってるんだ」

「え~と⋯⋯荷物はこの部屋に入りきらないので、外に出てもいいでしょうか?」

「どういうことだ? 外に置いてある⋯⋯という訳ではなさそうだな」


 ボルゲーノさんは懐疑的な目を向けつつも、屋敷の庭までついてきてくれた。


「ここなら十分な広さがあるだろう。さあ、荷物があるなら出してみたまえ」

「わかりました。アーカイブ」


 俺はキーワードを発すると、古文書が姿を見せる。


「なんだそれは? 本に見えるが」


 そして古文書の最後のページを開く。

 最後のページはジョブレベルが上がったせいか、十二の枠があったが、

 何故なら元々入っていたパワープースター、フォースブースター、真実の目、大岩に加え、新たに八つの物をカードにしたからだ。

 俺はそのうちのカードを一枚手に取り、地面に向かって投げる。


「何をしている。そのカードにいったいどんな意味が⋯⋯何だと!」


 冷静沈着で表情を変えないボルゲーノさんが、初めて叫び声をあげるのだった。


 ◇◇◇


 時は遡り、バッツが依頼達成を諦めると決断した時。


「ちょっと待って」

「ユート?」

「一つだけ試したいことがあるんだ」


 俺は荷物に向かって手を置く。

 そしてまとめられた荷物をカードにするため、言葉を紡ぐ。


「カードとなりて我が手に集え」


 言葉を発してから、十秒程経つが何も変化はない。

 やはり一つの物しかカードに出来ないのか。この荷物ごとカードに出来ればと思ったけど、残念ながらそこまで万能じゃないらしい。

 だけどもう一つだけ試したいことがある。


「カードとなりて我が手に集え」


 今度はこの大量の卵、一種類に向かって言葉を紡ぐ。


「おいおいユート。何やってるんだ。そんなことしても無駄⋯⋯なに!! 卵が消えたぞ!」


 大量の卵は消え、俺の手に一枚のカードが握られる。


 無数の卵(⭐1)か。

 どうやら種類が同じ物ならカードに出来るようだ。

 それにしても一か八かだったけど成功して良かった。これでボルゲーノさんの依頼を達成することが出来るぞ。


「とりあえず種類別に集めて、カードにしようかな」


 だけどその作業は一人では骨が折れる。ここはみんなに手伝ってもらおうと口にするため、背後を振り向くが。


「カードにしようかな⋯⋯じゃねえ!」

「どどど、どういうことなの!」

「卵がなくなった!?」


 三人は驚愕の表情を浮かべていた。

 あの冷静沈着なテットくんも取り乱しているから、それだけ驚いているということか。

 まあいきなり物が消えたんだ。俺も何も知らなければ三人と同じリアクションをしていただろう。


「運ぶのが大変だからカードにしたんだ。これなら簡単に運べるでしょ」

「た、確かに簡単に運べるけど⋯⋯でもカードから元に戻せるの?」

「戻せるよ⋯⋯ほら」


 俺はカードにした卵を再び具現化させる。


「ほ、本当に卵が出てきたわ」

「これはお前のジョブスキルか? カードマスターってマジでとんでもねえな。だけどこれで依頼は達成出来そうだ」

「⋯⋯荷物、運ぼう」

「おっさん! 依頼は継続で頼むぜ!」

「わ、わかった」


 やると決めたら三人はテキバキと動き、どんどん荷物を仕分けしていく。

 そして一時間程で、それそれの荷物を種類別に分けることが出来た。

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