第3話 仮面の男

第三章 宝石を狙うもう一人の存在

 二日目の夜、侯爵はベッドの上で気持ちのよさそうないびきをかきながら寝ていると、リビングで変な物音を聞いて、目を覚ました。

「何者かがリビングにいる」

そう思った僕はそうっと寝室から出て、リビングへと向かった。確かにリビングからは物音がするが、電気が全くついていないのだ。

「これは怪しいぞ……」

と、僕は思いながら、そうっとリビングへとつながる階段を下りた。リビングにつくと、僕はすぐさまリビングの電気をつけた。電気をつけると、仮面をかけた怪しい男が、電気のまぶしさに目をくらませていたが、すぐさま僕に向かって短剣を突き刺そうとこちらへ走ってきた。が、僕は一応様々なスポーツを習ってきたので、仮面の男の猛攻をくるりと躱し、逆にこちらが一発パンチをくらわしてやった。仮面の男は、壁に激突し、そばに置いてあった花瓶をガシャーンというすさまじい音を立てて割ってしまった。

僕のパンチをくらった仮面の男は、ひるむことなくひょろりと立ち上がり、窓から飛び降りた。僕は仮面の男の行方を知ろうと窓に駆け寄り外を見たが、外にはすでに仮面の男がいなかった。僕は不思議に思いながら窓の外を念入りに調べていると、さっきの花瓶の割れる音を聞いて駆け付けたマルコが、

「侯爵。これはいったい絶対何があったのですか⁉」

荒れ果てたリビングの中を見て言った。

 次の日。朝早くから私は、侯爵の家で仮面の男と侯爵の乱闘があったから、急いで駆けつけてほしいという電報を受け取り、すぐさま支度をして侯爵のお屋敷へと駆け付けた。

侯爵のお屋敷へ着くと、執事のマルコというまだ若い男性が、私を出迎えてくれた。「確か私に電報を送ったのもこのマルコという人だったな」

そんなことを思いながら、私は執事のマルコから昨夜起こったことを教えてもらった。

「では、侯爵は傷一つついていないのですね?」

と、私は少し疑問に思ったことを聞いてみた。それを聞いたマルコは、

「そうなんですよ。私もとてもびっくりしました。

てっきり侯爵が死んでしまったんじゃないかと驚いてリビングのほうへ向かったら、なんと!侯爵は傷一つついておらず、逆に仮面の男を返り討ちにしていただなんて本当にびっくりしましたよ。

でも、侯爵の身に何事もなくてよかったです」

と、安心していった。それを聞いて私は

「よかった。侯爵の身には何事もなかったんだな」

と、安心してマルコに次の質問をした。

「それで、その仮面の男には、何か特徴的な服装とか傷とかってありましたか?」「それは私にはわかりませんね。今のことは全て侯爵から聞いたものですので、私自身はその、仮面の男自体は見ていないのでよくわからないんです。

もうすぐ侯爵のいる寝室につくので、あとで実際に侯爵に聞いてみたらどうでしょうか?」

「そうすることにします」

と、私はマルコに言って、侯爵がいるであろう寝室へと向かった。

寝室へ行くと、侯爵が本を読んでいた。が、侯爵は私を見つけるなり

「あ!リチャード先生。ちょうどいいところに来ましたね」

と、元気な笑顔で私に手を振りながら言った。

「このページなんですけど、この前リチャード先生がこのお屋敷のことが気になっていたので、私なりにこのお屋敷のことを調べていたんです。そしたらこんなことが書かれていたんです」

と、興奮した様子で私に今侯爵が読んでいた本のページを見せてくれた。

私は、そのページを見た瞬間すぐさま手帳に書かれていた数字をもう一度確認しながらしばらくの間目をつむり考え事をしていたが、急に何かを思い出したかのように目を見開き、侯爵に

「侯爵。少しの間一人にさせてもらえますか?」

と、聞いた。侯爵は「わかりました。それではマルコに図書館を案内してもらってください」と言って、私に今持っていた本を

「これはリチャード先生が持っていたほうがいいですね」

と言って私に渡した。

「ありがとうございます侯爵」

と、私は一言残し、図書館へと向かった。

数時間がたった。辺りはもう暗くなり始めているのに、私はいまだに侯爵から授かった本と手帳を見つめて考え事をしていたが、突然椅子から立ち上がり、

「と、解けたぞ……この塔の謎が全て解けたぞ……」

と、あまりの驚きに、自分でもどうかしてしまったんじゃないか?と、思ってしまうぐらいに私はとても驚いていた。が、すぐに正気に戻り、

「このことを早く侯爵に伝えなくては。怪盗ファントムがブルーベル・ルビーを手に入れに来るのはもう明日となってしまった。一刻を争うことだ」

と、本と手帳を片手に持ちながらリビングへと向かって廊下を歩いているとき、私は後ろから何者かに切り付けられた。

背中全体に痛みが走り、生暖かいどくどくとした血液が、背中から流れ出てきた。幸いそこまでの傷ではなかったので、即死はしなかったが、私は振り返り、次の攻撃に備えようとしたが、その時には私を切り付けてきた物はもう、どこにもいなかった。

                              to be continued

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