第9話 狐の柑橘系

「という訳で午後は王都を回ってみたくて…お姉さんなら王都で色んな所知ってるんじゃないかなぁって…」

「全然いいよー!勇者くんもまだ来たばっかりで分からない所とかきっとあるよね、ここはお姉さんに任せてよ」

頼ってくれたことが嬉しいのか嬉しいですオーラが凄い…ゲームとかだったら周りに花でも飛んでるんじゃないかな。


幼なじみは聖女としてこれまでの聖女の歴史とかまだ学びたいことがあるから今日は学園の図書館に行くらしい。俺もゲームの知識だけじゃこれから困るかもしれない、ちゃんとゲームと現実のすり合わせをしないとな。


後は協会で渡された白い服とは違い今日は私服?というか村で着ていた服でシスターを待つ。協会の者だけどオフの日なんかは皆も私服だったり何処かへ私用として行くならみたいな感じで切り替えをハッキリするみたいだ。


「勇者くん待ったー?」

「いえ、俺も今来た所なんで全然大丈夫ですよ?」

「そっかーありがとう。じゃあまずはお昼ご飯食べに行こっか」

「はいっ」


「ここがねー多分王都の中でまぁまぁ安くて美味しい所だよー」

「狐の柑橘系…」

「うん、朝から夕方までやってて料理も沢山あるから飽きないんだよ」


そう言われながら店の中に入ると店の中の3分の2ぐらいが人で埋まっていた。人気だけど座れるぐらいの余裕はある…いい店教えて貰ったなぁ。ありがたい。


「何かオススメとかありますか?」

「うーんどれも美味しいけどオススメは鳥と白菜のクリームスープと丸パンのセットかな…具材もゴロゴロ入ってて美味しいよ、後は生姜とか胡椒が沢山あるから飲んだ後は体の中からぽかぽかするんだー」

「じゃそうします」

「うんうん、じゃ呼ぶねー」


「すみませんー!」

「はーい!あらっシスターちゃん今日は彼氏連れかい?」

「違いますー!後輩くんでーす」

「はいはい、で何頼むんだい?」

「こっちが鳥と白菜のクリームスープと丸パンのセットね」

「で、私がローストビーフのバゲットサンド」

「はいよー」


事前に仕込みがしてあっても作り終わるのは十数分かかる。

こういう時スマホが欲しくなる。暇だ。


「お昼ご飯を食べ終わったら何処に行くんですか?」

「うーんまぁ王都の中をぐるっと回る感じで歩こうかなって思ってるよ」

「了解です」


その後もポーションは飲む方が効果が出るとか言われて飲むことが多いけど苦いから少し値段が高めの甘い果実ポーションが売れてる。でも実はポーションを飲まないで振りかけても効果は同じとか、学園の制服のカスタマイズを自由に出来るのが羨ましい。協会ももう少し自由に着こなしても良いってなって欲しいとか、少し奴立つ話や愚痴とかを聞いていたら料理が来た。


「シスターが言った通り美味しそうですね」

「相変わらず食欲そそる見た目だよねー」

「じゃあ神の恵に感謝していただきます」

「いただきまーす」


少し大きめの木のボールにゴロゴロとぶつ切りされた野菜、肉が沢山ある。メニュー通り白菜、鶏が多かったけど玉ねぎとかジャガイモとかもあった。クリームスープの味つけはミルクのほんのりある甘さと胡椒、生姜の辛さが良く合っていた。


丸パンは外がカリッ中はフワッフワのモッチモチ。3個の丸パンがバスケットの中にあるけどこれ追加とか出来たりしないかな?めっちゃ美味い。


シスターが頼んでいたバゲットサンドは長いバゲットを3つに切り分けそれぞれレタス、トマト、チーズ、ローストビーフ、ソースを挟んだものが木の平たくて丸い皿に置いてある感じ。


ご飯と一緒についてきた果実水も美味しかったし、期待をはるかに超えたというか何というか。絶対ここ王都に居る間はリピート確定だろ。


「めちゃくちゃ美味しかったです」

「そう言って貰えると連れて来た甲斐があったよー」

「値段はそっちが850でシスターちゃんが830だよ」

「はーい」

そう言ってサラッと俺の分まで出してくれるシスター…これはチョロいと言うのか?まぁありがたいことには変わら無いし思惑通りなら良いか。

「ありがとうございます…」

「ん?良いの良いのシスターともなるとあんまりお金使わないからこういう時に使わないとね!」

「じゃっ後輩くん腹ごしらえもしたし王都探索へレッツゴー!」

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