怪盗を追いかけてタイムスリップした先は壮絶な未来の世界でした
碧居満月
さくらを守護する者の務め 上
背中に、白文字で『封』一文字が刻まれた浅黄色の羽織。緩いパーマのかかる、濃紺のショートヘアの頭に巻いた白色の
現世に不釣り合いな侍の出で立ちをしているその後ろ姿はまるで、幕末時代に活躍した
名を、
冥界に宮殿を構える
怪盗フィース。魔法界、天界、魔界、冥界を股に掛ける大泥棒。高価な美術品と宝石を狙う。
そんなヤツがなんで人間界に姿を現したのか。突然降って湧いたこの疑問を解決したいところだが、今の俺にそんな余裕はない。
早いとこ取り返して、さくらを安心させたい。自宅で不安な思いをしながら俺の帰りを待つさくらの大切なモノ。どういうわけか、怪盗フィースに奪われちまった。
さくらに頼まれて、逃走中のフィースを捜しているところだが、神出鬼没の怪盗を捜し出せるわけもなく……って思ったけど、どうやら天が味方をしてくれたらしい。
住宅街の、アスファルトの道路のど真ん中に佇むひとりの青年。耳にかかるくらいの、黄土色の髪に
「やっと見つけたぜ、怪盗フィース」
背後から忍び寄る人の気配を察知し、怪盗フィースが振り向く。
「お前がさくらから奪ったモノを返してもらおうか」
「へぇ……あの
気取った含み笑いを浮かべた怪盗フィースは、
「タダで返すわけには行かないな。君にとって、最も大事なさくらちゃんの私物……返して欲しければ、ここまで俺を追いかけて来いよ」
気取った口調で捨て台詞を残し、青白い
ふと気づくと、住宅街の、アスファルトの道路のど真ん中で、俺はただひとり佇んでいた。
怪盗フィースの姿はもう、ここにはない。あれこれ考えている暇はないので、とりあえず手がかりを求めてこの場から離れることにした。
怪盗フィースを追いかけて住宅街を駆けることしばし。思わず立ち止まった俺は息を
その視線の先に、全身傷だらけの少女と、少女を守るように佇む
桜の花をイメージした色と柄の袴と着物を着た女に心当たりがあり、にわかに緊張が走った俺は、
「さくら!」
「剣次……?」
やや驚いた表情をしつつも、大人の女性らしくも若く、透き通る声でさくらは返事をした。
「よく頑張ったな。あとは、俺に任せろ」
そう、左手でそっとさくらの頭を
「……頼んだわよ」
剣次の優しさに触れ、ほっと安堵の笑みを浮かべて礼を告げたさくらは、まるで力が抜けたように
「今度は、俺が相手だ」
「返り
闘志を
俺がまだ、
冥界に宮殿を構える、死神結社に属する死神とは全く異なる力を持つ死神が現世にいると。
刃を受けた人間の魂を消滅させるだけでなく、魂そのものを無に還かえす力がある
そいつの名前は確か、カリストって言う名前だったな。
もしもいま、俺が対峙をしているのがそのカリストって言うヤツなら……
そして、ヤツの狙いが、さくらが命懸けで守っていたあの女の子なんだとしたら……体を張ってでも、ここで俺が食い止める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます