第6話 5年生になった私
さすがに、石入り雪玉事件があって先生や怪我をした子の親だのが杉田の家に押し掛けたこともあり、杉田は少し大人しくなった。
ただ、いつでも八つ当たりの矛先を狙っているかのような嫌な空気は漂わせていた。
誰も、杉田に近寄らない。
それはそうだ。言葉を交わしただけで突き飛ばされたり蹴られたりするのだから。
だから、この無視はいじめではないと私は思う。
友達ではない子としゃべらないのはあたりまえだ。
自分をいじめる子と遊ばないのもあたりまえだ。
これは自衛の手段で仕方がないことなのだと私たちは、自分自身に言い聞かせていた。
杉田との小さな小競り合いはありつつも、大事件は起こらずに私は小学5年生に進級した。
クラス替えがあったが、担任の先生も同じでクラスメイトも仲の良い子とはなれずに済んだので、ホッとしたが杉田とはまた同じクラスで気がめいった。
大人っぽく絵が上手いタカコちゃんにそのことを愚痴ると、たーこちゃんはこういった。
「蘭ちゃん。杉田くんは、悪いことを悪いことだって教わらなかったかわいそうな子なんだよ」
「たーこちゃんは心が広すぎるよ。私は謝ってこない限り絶対許せない。それに、私が悪いことだって教えてやってるのに、全然わかってくんないんだよ」
「そうだよね……。蘭ちゃんみたいに強かったら、私もやり返したのかなぁ。できないから、諦めてるだけなのかもね……」
「いや、たーこちゃんは優しいからやり返さないだけだよ。私はそういう大人の考えができて優しいたーこちゃんが好き」
そう、本当に頭が良いと言うのはたーこちゃんのような人をいう。
杉田のように、中学生の問題が解けるというのは、頭がいいと言っても種類が違う。
私の憧れる頭の良さではない。
「私も、蘭ちゃんのみんなを守ろうとしてくれる優しいところが好きだよ」
私は頭の良いたーこちゃんが、私がただ意地で杉田に反撃をしているのではないことを分かってくれていたことがうれしかった。
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