第4話 行動力
月曜日、高等学校体育館。昼。
「なぁ、連絡先交換出来なった可愛い子に会える方法ってあったっけ?」
制服を脱いで汗だくの上半身を曝け出して、バスケットボールをドリブルしながら俺は友人二人に訊ねる。が、二人揃って「は?」と言う。
「ハモリ過ぎだろ。何? 俺を笑させたいのか? 笑うけども」
「そんなつもりねーよ。つーか、笑い過ぎだろ」
「そうだそうだ」
窓際に座り、外の風を感じながら口にされる(俺と違って制服は着用したまま)。
「それより、連絡先交換してない子ってアレか? お前がナンパしたいだけの」
「人聞きの悪い言い方すんな。ちゃんとナンパ成功させて彼氏になるんだ俺は!」
叫びながら両手でボールを掴み、リングにシュート。
キュポ。あ、リングとボードに挟まった。
俺は挟まったボールを取る為ボード下に向かい、ジャンプ数回して手を伸ばす。
「なあ、
ぴょんぴょんと小学生低学年くらいなら可愛いらしい行動を繰り返す俺に、
「何だ? 手伝うのか? 一七五あるのに届かない俺を手伝うのか? それと、
「手伝ねーし、小野はトイレだ。それより、可愛い子ってどんな子?」
「常にニコニコ笑顔で、二メートルは流石にないと思うけど高身長の子」
説明を終えたと同時に手がボールへ届き、それをようやく落下させる。二十回以上はジャンプしてたかもしれない。
「何? その子大人でバレーかバスケの選手?」
「いや、俺等と同い年。スポーツやってるかは知らない。あと、多分別の学校だと思う。俺がこの学校で見た事ねー女子はいない! 多分」
堂々と答える。何なら女性教師から用務員のマダムも頭に入ってる(ただし、名前まで知っているのは一部)。ちなみに、多分と言ったのは、事情により登校してない子がいるかもと。
「で? その子に会いたいと?」
「ああ、会いたい。会って告白して『良いよ。私も君の事……好きだから』って返事もらいたい」
「その子の事知らないけど、物真似似てないと思う。気持ち悪い」
「それは、俺がやってるからだ。本人見たらマジで可愛いくて絶対こんな感じに言うって!」
「落ち着けよ」
「そうだそうだ」
江口の
だが、興奮を抑えられようものか! あんな可愛い子。他の男が放って置く訳がない。早く行動を移さないと、取られちまう。
「とにかく! 俺はあの子に会いたいんだ。
どうやったら会えるか一緒に考えてくれ。友達だろ?」
「うるせーなぁ。そんなの、その子に会った場所に行けばいいだろ」
会った場所……蕎麦屋か!
「絶対にいるかは知らんけど」と江口は言うが、それでも有り難い。持つべき者は、やっぱり友達だぜ。
「よし! ここで遊んでる場合じゃねー。今すぐ、蕎麦屋に……」
「「いや、駄目だろ? まだ学校終わってないのに」」
即行動に移そうとしたが、二人はまたハモって俺を教室まで連行して行った。俺が脱ぎっぱなしにした制服を置き去りにして。
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