第23話 シグマとの攻防

 「うぉ〜! 優ちゃんヤバイよヤバイよ!」

 「うるさいわね! 言われなくてもそんな事分かってわよ!」


 「キュルキュルキュルキュルキュルキュル」

 タイヤとアスファルトが擦れる甲高い音を出しながら、チェリーブロッサム号は左右に揺れながら道路を進んでいた。


 車の中で僕らはゴロゴロと左右に転がっていた。

 座っているのもやっとな状態だった。


 シグマがあちこち四方からやってきて、僕らが乗っているチェリーブロッサム号に飛びかかってくる。


 「朝までこれが続くなら身体と車が持たないよ大ちゃん」

 「それでもどうにもならないよ……とにかく今は逃げるしかないだろ」


 「そうは言っても……マズイぜ! 優ちゃんだってこんなギリギリの運転もたないだろ。なんであいつら迷いもなくこっちに来るんだよ!」


 「あいつらって匂いと音に敏感なはずなんだよ。効果があるか分からないけど、ちょっと試してみるよ。傑のオイル借りるぞ! 後そこにある強烈な香水も!」


 僕は体中にココナツの匂いがするオイルを塗りたくった。

 そして引くほど香水を自分にかけた。その後自分自身の腰辺りにロープを括り付ける。その先には動くことのないテーブルの足に、もやい結びをして絶対に解けないようにした。


 「じゃあ僕は窓から車の上にあがるから!」

 「大介マジで!? 危なすぎだろ!」

 「2人はもし車の側面に奴らがきたら、攻撃してね。じゃあ行ってくる! 優ちゃん運転頼んだ!」

 「おい大介!!!」


 僕は凄いスピードで走っている中、窓を開けてそこから車の上に登る。


 夜の暗闇でも、夜目が効く僕にはしっかりとシグマの大群が来ているのが分かった。

 どれ程の効果があるのか分からないけど、僕は自分自身で警報器鳴らす。

 僕に注目を浴びさせたかったからだ。


 チェリーブロッサム号に向かってくるシグマを、軍で使っているスリングショットを僕は使って、シグマに攻撃を仕掛ける。見事に顔面に当ててみせるが、倒すまでには至らなかった。


 (これは大変だろ……)


 そう感じていると車が急に動きが変わり、外に吹き飛ばされそうになったが、どうにか這いつくばり僕は耐えていた。


 「大ちゃん! 大ちゃん! 街に逃げ込んで狭い場所で戦おうって!」

 「えっ!? 傑今なんて言ったの!?」


 「とにかく街に逃げるってよーーー!!」

 車は広い道路から、狭い道路へと進み、建物が所狭しと並んでいる方へと走らせていく。


 そして狭い場所へとどんどん進んでいく。

 残念な事に僕らの車は、行き止りの道へ入りこんでしまったようだ。


 車の中から何やら大騒ぎしている声が聞こえる。

 その間にもシグマが、こっちの方へと向かってきていた。


 通ってきた道に、身振りしている人の姿が遠くに見えた。

 急いで運転席の窓を叩いて優ちゃんに知らせる。


 「優ちゃん後ろ見て!! 人がこっちこいってやってる!!」

 その言葉を聞いた瞬間に、車が勢いよくバックしだした。


 身振りしてくれた人の方へ向かうと、更に誘導してくれる人が。

 そのまま誘導された場所に進んでいくと、最後は建物の地下へと案内された。

 中は広い駐車場になっている場所だった。


 地下への入り口はシャッターが閉まり、でシグマの侵入を防いだ。

 シャッターが閉まった後、日本には似つかわしくない銃声の音が外から聞こえた。


 「危ない所だったな!」

 その声の主は、明らかに一般人には見えない風貌をしていた。


 チェリーブロッサム号から皆が降りてくる。

 「あなたが私達を助けてくれたのかしら?」

 「ああ……一応そういう事になるな」


 「ありがとう助かったわ! 大変だったのよ」

 「ここまで来たら安心していいぞ。とりあえずゆっくりしてな」


 そう言われたが、外ではまだシグマと戦闘をしている音が聞こえる。

 「僕らを襲っていたゾンビの事を知ってるの?」

 「あぁ!? まあ一応知ってるぞ。あんな大群で見たのは初めてだけどな! こっちは銃を持ってるし大丈夫だろ!」


 「ガシャン! ガシャン!」

 シャッターに突進でもしてるかのような衝撃と音が。


 「おいおい大介! まさか突き破ってこねぇーよな!?」

 「いや……分からないけど」

 「お前らどんだけの大群連れてきやがったんだ!?」


 「ガシャン! ガシャンガシャンガシャン!」

 音はどんどん激しくなっていく。


 「ガシャ!」

 シャッターから突然穴が空いて、そこからベロのような長いニュロニュロしたものが現れてすぐに戻っていく。


 その穴から見えたのは何体ものシグマの姿だった。

 「ちょっとまずいんじゃないかしらね……」


 「ここから抜けられる道ってある??」

 「いやない! 車で抜けられる場所はここからだけだ。人だけなら上に行けば外に」

 「どこかに隔離できる部屋とかないですか??」


 「あることはあるけど……どういう事だ!?」

 「説明してる暇が本当にないんだ! とりあえずその場所に案内してほしい! 僕はこのままシグマと戦うから皆はサファイアをその部屋で頼んだ」


 「おいおい! おいおい! 大丈夫なんかよ!」

 「そうするしかないだろ! それか地下のここで戦うしかなくなるぞ」

 「分かったわ。私達をその部屋に案内してちょうだい」


 僕は刀を抜いた。腰の辺りの服をつままれた。

 ふと視線を下げると、サファイアが僕の服を掴んでいた。


 「サファイア僕は大丈夫だから! こう見えて結構強いんだよ。だから安心して」

 「私達とサファイアちゃんは行きましょ」

 サファイヤは、優ちゃんに抱きかかえられる。


 僕を残して皆は奥へと駆け出していった。


 「さあさあ、戦いますか!」

 「ガシャンガシャン! ガシャンガシャンガシャンガシャン」

 とうとうシグマ達が、シャッターを突き破って地下の駐車場へと乗り込んできた。


 僕は刀でシグマを迎え討つ。

 香水なのかココナツオイルの効果なのかどうかは分からないが、初めてシグマが僕目掛けて攻撃を仕掛けてきた。

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チェリー・オブ・ザ・デッド yuraaaaaaa @yuraaaaaaa

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