第12話 独立国への襲撃

 僕は目が覚め体を起こす。まだ2人は寝ているようだった。

 時間を見ると、昼の12時を過ぎているようだ。


 2人を起こさないように外の空気を吸いに車から出て、体を目一杯伸ばしていると僕の体にサッカーボールがぶつかった。


 「お兄ちゃんごめん!」

 小さな男の子とその後ろからお母さんと思える女性がこちらに向かってきた。


 「ごめんなさい! ほら雄一ゆういちもう一度ちゃんと謝りなさい」

 「ごめんなさい……」

 「全然大丈夫ですから、そんな謝らなくて大丈夫ですよ」


 「ありがとうございます」

 深々と頭を下げたお母さんが顔を上げると、その顔に見覚えがあった。

 僕は分かってしまったが、昨日の夜に飛田と一緒にいた女性だった。


 「一緒にサッカーしようか?」

 「え!? いいの!?」

 「いいよ! 一緒にやろう」


 僕は雄一君と一緒にサッカーをやり始めた。特に理由はなかった。あえていうのであれば、ただ単純に暇だったからだ。

 僕らの車の側面をゴールに見立ててサッカーを始めた。


 サッカーをしている声に気付いたのか、傑と圭佑も起きていた。

 僕らがサッカーをしているのを見て、二人も参加した。

 4人でサッカーをやり、汗を流した。


 「あ〜疲れた。大介ご飯作ってくれない??」

 「いいよ了解した!」

 「この子とお母さんも一緒に大ちゃんいいよね?」

 「もちろんいいよ」


 「やったぁ〜!!」

 「いいんですか?」

 目の下に青々とクマがあるお母さんが、弱々しく僕らに尋ねた。


 「お母さんも一緒にどうぞ。缶詰のものしかないですけどね」

 笑いながら僕らの車の中へと招き入れる。


 「すご〜い! 何ここお家みた〜い」

 「凄いだろ〜!!」

 「僕は食事作るんで座って待ってて下さい」


 「私も手伝います」

 「大丈夫ですよ。こう見えて結構料理が好きで得意なんです」

 お母さんが手伝おうとしてくれたが、僕は優しく断った。


 「そうそう。大介の料理って美味しいんですよ」

 「大ちゃん今日はなに?」


 「凝ったものは作れないからスパゲッティにするよ! 2人は雄一君とゲームでもやったら?」 

 「えっ!? ゲーム出来るの!?」

 「テレビまで付いてるんだぞ雄一。凄いだろ〜??」

 自慢気に傑が語っている。


 「まあこの車は大ちゃんのおかげなんだけどね!」

 「そうそう! 大介がパクってきたんだよ!」

 「パクったってな〜に?」


 「あ〜大介が持ってきてくれた。って事だよ!」

 「へ〜凄いんだね」


 「大介さん達は、街から来たんですか?」

 「ええ、一応そうですけど? どうしました?」

 「街の様子ってどうなっちゃってますか……?」


 「どうって言われても僕らも必死で……他の様子はよく分からなかったですね」

 「そうですか……街にいる旦那は大丈夫かなと思ってまして」

 「なるほど……」


 「僕らは山に逃げ込んで人里離れてたんで詳しくは分からないですけど、避難所とかそういった場所にいるかもしれません。僕ら以外でも沢山生存者はいました。ショッピングモールに立て籠もってる方々なんかもいて、大勢が無事に生活していましたよ」


 「大介さん達はなんでわざわざ街の外に??」

 「その話をすると長くなりますけど、こんな世界になってしまったなら、どうせなら好きな事して生きようぜってなったんです」


 「なんとなくその気持ち……分かります」

 「……きっと大丈夫です、旦那さん生きていますよ」


 「……」

 「おーい食事ができたぞー!!」


 「お!! 出来た!? 腹減ったー」

 「大ちゃん聞いてよ! 雄一くんめちゃくちゃマリカ速いんだよ全然勝てなかった」


 「お兄ちゃん達が遅すぎるんだよ」

 「まあまあ、とりあえず座って早く食べようよ。はいじゃあ皆で」

 「「「「「いただきます」」」」」


 食事を済ませた後は、皆でゲームをして遊んだ。

 雄一君以外全員ゲームが下手くそで、雄一君の足元にも及ばなかった。

 僕らはコテンパンにやられてしまった。


 「皆弱すぎるよ〜」

 「クソッ!! なんて強さなんだ雄一くんは!!」


 「雄一! そろそろ帰るわよ」

 「え〜もうちょっと居たいよお母さん」

 「迷惑になるから駄目よ! ほらいらっしゃい!」


 「またいつでも遊びにきなよ」

 「いいの!?」

 「勿論だよ」

 傑と圭佑も頷いた。


 「お兄ちゃん達また遊びに来るねバイバイ!」

 「「「ばいばい」」」


 2人を見送った後、キャンピングカーの中で僕らはゆっくりしていた。

 3人でテレビゲームやボードゲームをして楽しんだ。


 今までこういった事で遊んでこなかった僕ら3人はあまりにも熱中しすぎて、あっという間に時間が過ぎていった。


 気付けば20時を回っていた。

 簡単な食事を取りながら再びゲームに熱中していると何やら外から音がしていた

 「パンッ!! ピュ〜パンッ!! パンッ!!」


 「なんだ!? 何の音だ!?」

 僕はすぐに車の外に出て状況を見に行く。

 音と共に火薬の臭いが充満していた。

 駐車場の中央あたりで、飛田達のグループが花火をして遊んでいるようだった。


 「なんだ〜、花火か」

 「いや! 駄目だってこれは! かなりマズイ!」

 僕はかなり嫌な胸騒ぎがした。こういう時の勘は残念ながらよく当たる。


 「2人はいつでも逃げられる準備して!! 僕はちょっと止めてくる!!」

 急いで武器を手にした僕は、飛田達がたむろっている場所へと急いだ。


 「何やってんだ! 今すぐやめた方がいい!」

 「おお! 大介じゃねえか。お前もやるか?」

 千鳥足になった飛田が近づいていくる。


 「いますぐやめた方がいいよ! ゾンビ達に場所を知らせてるようなもんだぞ」

 「そんなに怒るなよ〜。大丈夫だってどうせ奴らは入ってこれないんだからさ〜」

 「入ってこれるやつもいるから言ってるんだよ」

 僕が大きな声で静止しようとしても、誰も聞いている様子はなかった。

 すぐ隣では、打ち上げ花火が打ち上げられていた。


 「うわぁああああああ!!!」

 悲鳴が聞こえた。駐車場の奥で人がゾンビに襲われていた。


 「おい! ゾンビが中に入ってきてるぞ!」

 「あぁ〜!? どういう事だ!?」

 「ギャーーーー!!!」

 一瞬でパーキングエリアがパニックになっていった。


 人が次々に襲われている。僕はその時に冷たい視線を感じて冷や汗が垂れた。

 いつでも戦えるように日本刀に手をかけたまま、恐る恐る視線が感じた方を見る。

 そこには奴がいた!


 「ギギギギギギギギギ」

 と鳴き声なのかそれとも何かで音を鳴らしているのか、不愉快な音が鳴り響いた。

 

 パーキングエリアにある店の上に佇んでいる四つん這いのゾンビは、両手を耳の辺りに当てて同時に臭いを嗅いでる仕草をしている。

 目が見ていない奴が、獲物を探しているような動きをしていた。


 そして瞬間の出来事だった。

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