第8話 ショッピング02
「大ちゃ〜ん、待った〜??」
「いや、そんなに待ってないけど……圭佑その格好なんなん?」
目の前にいる圭佑は、頭にはどデカイ麦わら帽子、手には虫取り網に肩から虫カゴを下げて、ショッピングカートの中には大量の玩具やゲームが入っていた。
「大ちゃん、買い物している時に俺気付いちゃったんだよね。もう学校がない=勉強しなくていい=毎日が夏休み=毎日遊び放題=今まで遊べなかった分まで遊び放題ってね!」
「だから圭佑が持ってきた物は遊び道具が多いと?」
「それに暇になる事も多いと思ってさ! ゲームなら皆で遊べるしいいじゃん! 大ちゃん見てこれ新しいジェンガだって。やりたくない?」
「……」
「yahーyahーyahー」
その声の方に目を向けると、サングラスにアロハシャツ、そしてビーチサンダルにサーフボードを手にした傑が戻ってきた。
「2人共待った〜?? おー! 圭佑それって新作のゲームじゃん後で皆でやろうぜ」
「「イェーイ!」」
2人はハイタッチした。
よく見ると傑の肌はテカっていて、ココナッツミルクの匂いがした。
「今度はなんだ!? 傑はどうしたんだよその格好!!」
「俺ってバスケ部じゃん!? 隣の芝生は青く見えるっていうかさ、黒い肌してる男に憧れがあるんだよね! だからサンオイル塗って日焼けして黒いボディを手に入れてやろうかと思ってさ」
「白い肌の方がモテるよ??」
「大介、そんな事知ってるに決まってるだろう! だがいいんだ! 俺がしたんだよ」
「それにほら! 男の嗜みになりそうなの沢山持ってきたぞ」
そう言って見せてきたカートの中には、香水やら汗ふきシート、ボディクリームや脱毛剤。
沢山の男性用下着、様々な種類の避妊具まで入っていた。
「俺さ考えたんだけどさ、圭佑って髪の毛オレンジだろ!? 俺は黒髪短髪を目指す。リーダーの大介って何色がカッコいいだろうって考えたんだよ……それで出した答えがコレだ!」
自信満々にカートの中から取り出して、僕らに見せつけてきた。
「えっ!? まさか僕にこの髪色にしろと!?」
「せいかーい」
「へぇ〜。大ちゃんきっと似合うし、超かっこいいじゃん!」
「大介には後で銀髪になってもらう」
「マジで!? 銀髪!?」
「絶対似合うって大介」
「それに一応考えがあるんだよ。俺達が子供だから舐められたくないって大介言ってただろ? 髪色変えるだけで大分印象変わるし、年齢ごまかせる思うんだよね〜」
「オレンジ髪の奴に、日に焼けた長身の男。リーダーが銀髪って高校生って見られなくないか? ずっとマスクして過ごすのも息苦しいし、女の子に会ったときにマスク被ってる方が怪しまれる絶対!! それだけはなんとしても阻止しないと!!」
「……分かったよ」
「ウェ~イ!」
僕は傑とハイタッチした。
確かに傑の言っている事も一理あると思った。
「ただ2人共、服装だけは本気で替えてこい。暑いかもしれないけど長袖、長ズボンは絶対だよ。それに出来ることなら動かしやすい手袋も。ハッキリいってつなぎが一番コスパが良い」
「まあ確かに肌の露出は微妙だよな〜」
「じゃあせっかくだしお揃いにしようよ! 俺達チームだしお揃いのほうがなんかかっこいいじゃん!」
「いいね圭佑! そうしよう」
「僕は着れればなんでもいいよ」
「じゃあ俺が選んでくるね〜」
「ここのリーダーの加藤さんに挨拶してくるよ。終わったらここで合流してそのまま帰ろうか。荷物置いていくから頼んだよ傑」
「分かった待ってるよ」
コンコンコン。
「誰だ?」
「大介です」
「入っていいぞ」
「お目当ての物は見つかったか?」
「ええ、無事に! じゃあ僕らはこれで帰らせてもらうんで。ありがとうございます」
「お前らはこれからガキ3人でどこを目指すってんだ?」
「僕らは最終的には九州に行くつもり」
「九州?? なんでそんなとこに?? ここ茨城だぜ??」
「彼らの生きる希望なもんでね!」
「加藤さんこそ、ここにずっといるつもりなの?」
「ああ、ここで助けを待つつもりだ」
「じゃあ、応忠告しておくけど――」
僕が見た危険なゾンビの種類と特徴を加藤さんに教えた。
「そんなやつまでいるのか……」
「まだ対峙したことない?」
「走る奴は一度だけある」
「多分だけど、他にも違った特異種が存在するかもしれない。これまで通用した事が通用しなくなる瞬間があるかもしれないから注意した方がいいよ」
「お前らがガキなのに、これまで生き残れた理由が分かった気がしたよ。ありがとう大介」
「じゃあ僕らはもう行くよ」
「お前ら死ぬなよ」
「ハハハ、僕がいる限り大丈夫だよ! 加藤さんこそ死ぬなよ」
僕は部屋を出て、2人が待つ場所へと向かう。
「おい大介遅いぜ!」
「大ちゃん帰ろうよ」
「わりぃ。じゃあ帰るか」
「見て大ちゃん。BBQ見つけてきた今日BBQしようよ」
「外でやるの? 危ないだろ絶対」
「むしろ旅の楽しみ取っておこうぜ圭佑」
「確かにそうだね傑くん」
「いいから帰るよ」
僕らは、危なげなく旅に必要な物資の調達を終えて、九州へと旅に出る準備を整えた。
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