第7話 レッツゴー・ショッピング

 「ブロロロロロロロー」

 僕達はいま、キャンピングカーを走らせてとある場所へと向かっていた。


 「ガシャン、ガシャン」

 「おーい圭佑! このベッド凄いぞ! フカフカだよ!」


 「傑くんこっちのソファも凄いよ! 座り心地最高だよ!」

 運転している僕の後ろで2人は、テンション高くはしゃいでいた。


 「冷蔵庫にテレビ! トイレにシャワーって走る家だなこりゃあ」

 「大ちゃん最高だよ」


 「ちょっと静かにしてよ2人共。運転に集中してるんだから!」

 「大介〜、気楽に楽しく行こうよショッピングなんだからさ」

 「運転大変なんだぞこれ!」


 キャンピングカーでゾンビを所々で轢き倒していきながら進んでいった。

 目的地の巨大なショッピングモールに到着する。


 「静か過ぎじゃないか……」

 「駐車場に全然ゾンビいないね」

 「注意しながら、慎重に行こうか」

 僕らは車から出て歩き始めた。


 入口まで難なく辿り着き、作動していない自動ドアを手で開ける。

 中に入るとモール内は散乱していた。だが、それよりも不気味なほど静かだ。


 「なんでゾンビいないんだ? いてもよくないか?」

 「やっぱりだけど、大人数で人が暮らしてるんだと思う。これだけデカイショッピングモールで誰もいないのはおかしい」


 吹き抜けの開けた場所に僕らは出た。

 「止まれ!!」

 聞こえたその声に僕らは歩みを止める。


 周りを見渡すと、おびただしい数の人達に僕らは取り囲まれていた。

 「ちょっと大介、俺達どうなんの?」

 「ん〜わかんない」

 「超怖いんですけど〜」


 「お前達のリーダーは誰だ?」

 傑と圭佑はまっ先に僕の方を指差した。


 「なんでだよ! 傑やれよ! そういうの向いてるじゃん!」

 「どう考えたって大介だろリーダー」

 「そうだよ大ちゃんやってよ」


 「何を揉めてるんだ! それでリーダーは誰だ!?」

 「僕がリーダーだ!!」

 そう言って僕は手を上げた。


 「戦う意思はない。物資を調達しにきただけだ! 出来るなら話し合い出来ないか?」

 「分かった! 武器は悪いが渡してもらう。2階に上がって来い」

 

 僕らは仕方なく武器を預け、2階へと上がっていく。

 先程会話をした男の人と、その護衛と見える人達の前に案内された。

 「悪いがパンツ一丁になってもらえないか?」


 僕はすぐに脱ぎ始めたが、2人は躊躇していた。

 「悪気はないんだ。貴様らも生きてここまで来たって事は色々あっただろう。俺達もそうなんだ。助けた人の中に怪我人がいて、助けたのはいいが急にゾンビになって危うく全滅しかけた事があったんだ。だからそれ以来確認するようにしているんだ」


 男の言葉を聞いて2人も脱ぎ始めた。

 「そのマスクも取ってもらえないか?」


 「それだけは出来ない」

 そうキッパリ僕は断った。


 「絶対に空気感染しないって確証がないからだ。あなたが僕らをパンツ一丁させたのと同じように僕らはマスクを外せない」

 空気感染もそうだが、何より舐められたくないって理由も大きい。


 僕らは高校生だ。顔を見せたら一瞬で子供だってバレる。きっと話し合いや交渉すらさせてもらえない。そうなる事が嫌だった。


 「分かった……マスクは取らなくていい」

 パンツ一丁になった事でむしろ威圧出来たかもしれない。


 僕と傑の体付きは、お世辞を抜いてもかなりいい。

 身長もある傑はさらに威圧的だろう。


 体の確認を終えた僕らは、事務所のような場所へと通された。

 「2人は何も話さなくていいから、僕に任せて」

 そう小声で2人に伝えた。2人は黙って頷く。


 椅子に座った先程の男の人が、じっと僕らを見て話し始めた。


 「俺は、ここでリーダーをやっている加藤ってんだ」

 「僕のことは、大介って呼んで」


 「それで? ここで何を調達したいんだ?」

 「僕らはここ茨城を出ていくつもりで今準備を進めている。その為に必要な物が欲しい」


 「食料と水分以外ならいいぞ」

 「それ以外だったら何でもいいのか?」


 「なんでもいいぞ。どうせ余ってるんだ。使い道もほとんどないし」

 「じゃあ、ありがたく僕らはショッピングさせてもらうよ」

 僕らはそのまま事務所を後にしようとする。


 「……なあお前らってまだ子供だろ? 顔は隠せても声は隠せない。流石に若すぎる」

 「だとしたらどうすると? 加藤さん」


 「ここに住んだらどうだ? 安全だし食料だって大量にある」

 「ハハハ。安全だって!? それって今はってだけでしょ」


 「加藤さんは知らないかも知れないけどね、ゾンビの中には特別な進化を遂げた変異種までいるんだよ。そいつらがここにやってきたら、ここにいる皆一瞬でやられちゃうよ!」


 「それでも外よりマシだろ? ましてや県を出るなんてもっと危ないだろ」


 「それでも僕らは、目指さなければいけない理由と決意があるんだ」

 「それはなんだ?」


 「言った所で加藤さんには理解してもらえないから別にいい。僕らはショッピングが終わればすぐにここから立ち去るから……加藤さん1つ聞きたいんだけど、今までで空気感染した人っていた?」

 「いや、俺は知らない。少なくともここで空気感染した人はいない。やはり噛まれたり怪我させられたりすると感染するけど」


 「そうなんだありがとう」

 それを聞いた僕らは部屋を後にし、預けた武器をもらって早速ショッピングをしに行く。


 「大介お前スゲ〜な! 大人相手にタメ口でよく話せるな。俺なんて普通にビビってたよ」

 「やっぱリーダーは大ちゃんだね」


 「舐められたくないからね! 傑と圭佑も敬語とかもう捨てた方がいいよ。でもゾンビだらけじゃなくてよかったよね。買い物はすんなり出来そうだね! 効率良くバラけてショッピングしようか。終わったらあそこに見える広場に集合で」

 そうして僕らは、3人バラバラになって物資を集める事にした。


 僕は、これからの旅で必要になると思うものを探しにいった。

 ガソリンタンクに発電機、簡単に武器になりそうな物。持ち運べる浄水機。キャンピングカーがもし駄目になったしまった時を考え、サバイバルに適した道具や防寒具なども手に入れた。


 「まあこんだけあれば、最悪の状態にならずには済みそうかな」

 僕のショッピングは終えて、2人の買い物が終わるのを待ち合わせ場所で待つ。


 しばらくすると、とんでもない荷物を抱えたとんでもない姿の2人がやってきた。

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