第5話 ルールがなくなった世界

 「俺マ○オカートとか得意だよ」

 「ゲームと一緒にするなって圭佑! バカか!」

 「バカって酷いな傑くん」


 「車とかどこで手に入れるんだよ。というより俺達高校生だよ」

 「こんな世界じゃあ法律もルールもないでしょ傑。それに入手出来るか分からないけど、九州行きたいなら手に入れたい車がある」


 「どんなやつ?」

 「大ちゃんやっぱりカッコいいやつでしょ?」

 「違うよ! キャンピングカーだよ」


 「「あ〜なるほど」」

 2人は納得してくれたようだった。


 「寝る場所もあってキッチンにトイレまで付いてる。大事でしょ!!」

 「シャワーとか付いてないの??」

 「あるかも知れないけど、とにかくキャンピングカーを探さないといけない」

 「大介、当てはあるのか??」


 「まだネットが使えるから、車屋調べて見に行ってみるよ」

 「え? それで鍵とかどうすんの?」

 「多分どこかにあるんじゃないかな?」

 

 「そんなんで大丈夫なの?」

 「でも行ってみるしかない。どのみち車がないとどうにもならないし……とにかく今日から探りを入れてみるよ」


 「とりあえず僕は朝まで動いて疲れたからご飯食べたら一旦寝るよ! 2人共服がボロボロだから僕サイズの服しかないけど、奥の部屋に服があるから好きなのに着替えていいよ。僕はご飯作るよ」


 「確かにお腹減ったわ〜。じゃあ頼んだよ大介」

 僕は早速食事作りに取り掛かる。


 腐らせる前に野菜を使い切ってしまおうと大量の野菜炒めを作った。

 それに味噌汁とご飯と。すでに1人暮らしをしている僕は料理が得意な方だった。


 「おまたせ〜〜」

 「おお美味しそうだな!」

 「ありがとう大ちゃん」

 「「「いただきます」」」


 僕らはワイワイと楽しい食事を満喫する。

 「「「ごちそうさまでした」」」


 「僕寝るけど、後は好きに過ごしてていいよ」

 2人の返事を聞いて僕は、奥の部屋にあるベッドに横になった。

 横になった瞬間、僕は意識がなくなり深い眠りについた。


 「おい、おい大介。起きろよ!」

 僕の名前を呼ぶ声が聞こえて目が覚めた。


 「あれ? 傑か、今って何時?」

 「もうすぐ夕方の5時だよ! よく寝てたな」

 「マジで? そんなに寝るつもりなかったんだけどな。ありがとう傑」

 「おう」


 僕は体を起こして2人がいる部屋へと向かう。

 「おはよう大ちゃん。ってもう夕方だけど」

 「おはよう圭佑」

 「大ちゃん今日は何するの?」


 「とりあえず近くの車屋のHP見てみて、良さそうなキャンピングカーいくつか探してみるよ」

 携帯食と水を飲みながら僕はモニターの前にある椅子に座った。


 ネットに接続し、ここから徒歩で行ける範囲の車屋を探す。

 やはり大通りまでは出ないと車屋はなさそうだった。


 「大ちゃんそのキャンピングカー良さげじゃない?」

 「これ? デカすぎじゃない? 初心者で運転できないでしょ」

 「慣れれば大丈夫だって! それに長旅なら快適さ大事だって。傑くんもそう思うでしょ」

 「女の子をもてなす事が出来る位の広さはほしいよな〜やっぱり!」


 「え!? もしかして2人共、初めてはキャンピングカーの中でやるつもりなの!?」

 2人はお互いの顔を見合って後、僕に視線を向けてピースサインをした。

 「「当然!!」」


 出来るだけ2人の希望に合うキャンピングカーを探し出していく。

 「大介! 大介! これいいじゃん! 最高じゃん! トイレ・シャワー付き、さらにエアコンに大きなベッド。キッチンにテレビまで付いてるぞ」

 「俺もこれがいいと思う。大ちゃんこれにしようよ」

 「言っとくけどこれかなり大きい車だから小回り効かないような車だけどいいの? 運転大変そうだし、後これネットだから現地で見てみないとあるか分からないよ?」

 「だが、これがいい!」

 渋々僕は意見に賛同した。まあ確かにこれで移動できるのであれば快適なのは間違いない。


 「とにかく動くにしても7日後だね」

 僕らは7日間の間に様々な情報収集をしながら、モニターで街の様子やゾンビの様子、観察をずっとしていた。

 

 そして7日間が経過した。


 「なあ大介、結局コイツら7日間経っても平気で今日も歩いてるな」

 「残念な結果だけどそうみたいだね」

 「つまりはこいつらって24時間体制で襲ってくるってことだよな?」

 「まあそうなるね」


 「超大変じゃね?」

 「まあそうなるね」


 「心配してもしょうがない。今日から本格的に九州へ行く為の準備するよ。早速だけど僕は今日キャンピングカーを手に入れることが出来るかどうか見てくるよ」

 「頼んだよ大介」


 「出来たらそのまま持ってくるから」

 僕は準備を整えて、地下室から外へと出ていく。


 街の中心地にある大通りに到着した。

 モニターでも見てわかっていた事だが、あちこちにゾンビがいる状態だった。


 わざと空き缶を投げたりしながら音で誘導し、道を開けていく。

 目的地の車屋へとやってきた。


 目当てのキャンピングカーがそこにはあった。

 これを持っていって2人に見せたら、2人の喜ぶ顔が頭に容易に浮かんだ。

 マスク越しに僕はフフッと笑った。


 店の中に忍び込んだ僕は、鍵を探していく。

 どこにあるのか見当もつかないし、あのキャンピングカーがどの鍵かも分からない。

 時間が掛かりそうだった。


 店内にあるテーブルの引き出しなどを片っ端から確かめていくが、ありそうになかった。

 違う部屋にも入り、荒れている部屋の中から鍵がありそうな場所を確かめてく。

 (どこにもないな。ここじゃなくて違う場所とかに鍵保管してんのかな)

 ガサガサと音を立てながら探していると、ゔ〜とうめき声が聞こえた。

 部屋を出て廊下に出ると、奥から太ったゾンビがゆっくりとこっちに向かってきている。


 武器として持ってきていた鎖鎌を使い、ヒュンヒュンと分銅を勢いよく回して躊躇せずに頭をぶち抜いた。

 そのまま近づいて倒れているゾンビにとどめを刺した。


 他にもゾンビが居るかもしれないと思った僕は、慎重に足を進めて奥の部屋を目指していく。

 ゆっくりと奥の部屋に入る。


 部屋には何も居なかった。深く息を吐いた僕は部屋を見て回る。

 その部屋の奥に大きな金庫が置いてあった。


 僕はこの金庫の中に鍵があるかもしれないと思った。

 リュックの中から道具を取り出して、解錠していく。

 忍者の修行の中で習ったものだった。


 「ガチャン!」

 結構複雑な造りの鍵で、30分程かかったがどうにか開ける事が出来た。

 中を開けるとそこには現金などと一緒に大量の鍵があった。


 几帳面な性格だったのか分からないが、丁寧に鍵が分けられていた。

 キャンピングカーと書かれた場所に3つ鍵があり、僕は3つとも手に取り早速キャンピングカーのある場所へと向かった。


 分かりやすくて助かった。

 運転席の鍵穴に鍵を順番に差し込んでいき、1つが反応した。

 「よしよし!!」


 早速運転席に乗り込んだ僕はエンジンをかける。

 「ガソリン入ってるかな? 頼むからかかってくれ!」

 鍵を回すとエンジンがかかった。


 「ブロロブオォォォォン」

 誰も人間がいなくなった暗い夜にエンジンが響く。

 その音を聞いたゾンビ達がこっちに向かってくるのが見えた。


 「え〜と、車ってどうやって運転すんだ?」

 右足のペダルを踏み込む。

 全く動いてくれなかった。


 落ち着け〜。ネットで調べたろ。

 とりあえずサイドブレーキをまずは外さないと……。


 サイドブレーキってどれだ??

 あちこち見渡すが全く分からなかった。

 その間にもゾンビは迫っていた。


 (落ち着け〜)


 とにかくエンジンはかかったんだ。

 なんかDってモードにすると前進するって書いてあった。


 「Dってのはこれか?」

 僕はとにかくいじってDと書いてある文字にレバーを動かしてアクセルを踏んだ。


 「ガリガリガリガリガリガリガリガリ」

 とてつもなく嫌な音と共に車が前進した。

 「なんだよこの音。ヤバいだろ!!」


 テンパった僕はそのまま発進した。

 「ガリガリガリガリ」


 僕はアクセルを踏み込んでハンドルを回す。

 大通りに出ることは出来たが、運転が難しかった。

 わけも分からず運転してゾンビを出来るだけ避けていく。


 「ガリガリガリガリボコッ!」

 途中でゾンビも何体か轢いていく。


 あちこち触っていたら嫌な音がなくなった。

 どうにかキャンピングカーをゲットする事が出来たようだった。


 どうにかして家のある山の麓に到着する事が出来た。

 ふぅ〜と深く溜息をついた。


 エンジンを止めてスマホを見ながら運転の仕方を確認した。

 するとかなり間違っていたみたいだったが、とりあえず今後の活動で必要不可欠な大事なキャンピングカーを手に入れる事が出来た。


 こんなことより大事なことを今日、傑と圭佑にやってもらうつもりだ。

 これが出来なければ、これを乗り越える事が出来なければ先に進めない大事な事だ。


 それは、ゾンビを自らの手で殺してもらう経験だった。

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