第4話 この世界で生きる活力

 「えっ!? なんだって!? もう一度お願い!」

 僕は自分の耳を疑った。


 「だから〜、大介は童貞なの?」

 「大ちゃんは童貞なの?」


 「ハハハハハッ!」

 「何笑ってんだよ大介」

 「ごめん、ごめん悪気はないんだよ。それって大事なの?」


 「大事ってもんじゃない! 俺達にとっては死活問題なんだよ大介」

 「大ちゃん聞いてよ! 俺達の死闘を」


 そういって説明しだした。

 「大介が外に出ていった後、俺達二人はぼんやりしてたんだよ。そしたら急にモニターに目がいってさ、コンビニに向かって行くおじさんが居たんだよ。何がって訳じゃないけどちょっと目に入ってさ……」


 「カゴの中に食料と水分が入ってて、そのままコンビニから出てきたんだよ。でもさ、そのおじさん結局ゾンビに噛まれて死んじゃったんだよ」


 「それで、どうしたの?」

 「大介の家は安全でさ、俺と圭佑は何も考えずにいたけど、本当に混沌とした世界になっちまったって思ったんだよ。外に出たら本当に一瞬で人生が終わっちゃうかもしれないって……」


 僕は静かに傑の話に耳を傾けた。

 「明日死ぬかもしれない、俺達がやりたい事、やり残した事はなんだ? って話に圭佑となって。それで、童貞のまま死にたくないって話になったんだよ」

 「……」


 「これは大事な話なんだよ大ちゃん。男3人でこの茨城の田舎でずっと過ごすのか? って考えたらそれは無理だってなったんだよ! いつか外に出るしかない! 生き残っている女性と出会いたいってなったんだよ〜!」


 「それで?」

 「外に出たらどこを目指すかって話になって」


 「俺は北に行きたいんだよ大ちゃん!! 秋田美人探しに行きたいんだよ!!」

 「さっき調べたんだよネットで色々と!! すると九州にはとんでもない美人が多いって情報が沢山載っていたんだよ大介!!」


 「それで俺達は北に行くのか南に行くのかって話になって大喧嘩になって、決まらないから大介に任せようって話になったけど、大介がそもそも童貞じゃなかったら同盟にならない」


 「だから大事なんだよ大ちゃん。それでどっちなの?」


 「「童貞なの??」」

 息がピッタリだった。


 「安心しなよ……僕もちゃんと童貞だよ!」

 「「よかったぁ」」


 最初は呆れたが、2人の熱量を見てると、生きる活力がそこまで出るなら理由はなんだっていいんじゃないかと考えを改めた。


 「それで大介はどっちなんだ? 北か? 南か?」

 2人から熱い視線が突き刺さる。


 「結論から言うと、南に向かおうと思ってる」

 「よっしゃあああああああ!!!!!」


 「なんでだよ〜大ちゃん!! 美白の秋田の方がいいじゃんよ〜!!」

 圭佑が僕の肩を掴み、凄い勢いで体を前後に揺らしてくる。その手を振りほどきながら僕は話す。


 「とりあえず聞いてくれ圭佑。学年1位の圭佑なら分かるだろ?」

 「分からないよ〜」


 「今は7月だけど、半年も経たないうちに冬になって、北の地域は極寒の雪だらけになる。今は電気やガス、水道が使えるけどその時はもう使えないかもしれないんだよ?」

 「雪国育ちでもない僕達が、電気やガスが止まった慣れない雪だらけの土地で春まで耐えられると思うか? 無理だろ?」


 「それに雪が積もり過ぎて動けなくなったりするかもしれない。そうしたらどうにも行動が出来なくなる。奴ら、ゾンビもここより動きが鈍いかもしれないけど、それよりもリスクが大きいと思うんだよ」


 「確かに……大ちゃんの言う通りだよ……」

 「圭佑分かってくれた? それに九州にだって色んな女の子がいるよきっと」


 「って事で、皆で目指すは南! 九州って事でいいだな?」

 「そうだね」

 こうして僕らは、現在いる茨城県を脱出し、九州へと向かう事が決まった。


 「まずやる事と言えば、ショッピングモールでショッピングだな大介」

 「お買い物に行こう大ちゃん」

 「……いきなりかよ!!」

 確かに遠出するなら行かなくては行けない場所ではあるけど、それよりも前にやらなくてはいけない事がある。


 「とにかくもっと奴らを理解してから旅立つべきだよ。とりあえず7日間はここの地下室から出ないからね」

 「どうして!?」


 「僕は朝までゾンビを観察してきたんだ。奴らは朝までずっとゔ〜ってうめき声あげながら動いていたんだけど、元々は人間だったんだよ。水や食料なしでさらに睡眠もせすに7日間なんて日数、普通の人間は動けない。7日間あれば何かしらの奴らの反応を見れるかもしれないんだよ」


 「もしかしたらだけど、7日間で力尽きたゾンビがバッタバッタと勝手に倒れて本当に死んでいくかもしれない」


 「なるほどね……大ちゃんの言う通りかもね」

 「この街から出発するなら、他にもやらないといけない事が沢山ある。1発アウトのサバイバルに出掛けるんだよ。慎重になるべきだと思う」

 「わかったよ。俺達は大介の言う通りにするよ」


 「朝までに僕が経験してきた事を全部伝えるよ」

 僕は1日で得たゾンビの習性や特徴、弱点や攻撃手段等を詳しく話す。


 「本当に映画みたいな世界だな」

 さらには運動神経のいい走ったりするゾンビや特殊な個体がいることを2人に伝えた。もしかしたらもっとヤバい奴が存在するかもしれない事も話した。


 「え!? 俺達大丈夫なの!? なんか心配になってきたんだけど大介」

 「そもそも安全じゃないからね。それとも童貞のまま過ごしておっさんになる?」

 僕は奮起させる為に煽った。


 「いや! 行こう! 美人が俺を待っている!」

 「その意気だよ。だけど僕達の九州行きの計画の中で、ゾンビよりも問題な事がある」

 

 「「なに!?」」

 「誰も車持ってないし、運転したことがないって事だよ」


 「「あ!」」

 僕達の計画は、早くも前途多難だった。




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