第2話 脅威からの脱出
「それで大介こっからどうするんだよ……」
僕は
「これを使ってこの屋上から下まで降りるよ」
「えっ!? 大ちゃんそれマジで言ってるの? 普通に出ていけないの?」
「校内の様子が分からないのに、校内に行くのは危険だと思うんだよ。それに廊下と階段とかで囲まれたら僕達終わるよ??」
「確かに……大ちゃんの言う通りかもしれない」
「大丈夫だよ。切れたりとかしないから安心して」
「でも下に降りたらその後はどうするんだ大介」
「裏門から逃げよう。多分そっちはまだ平気だと思うから、そのまま学校の裏手にある山に逃げ込んで僕の家がそこにあるからそこで一旦落ち着こうと思うんだけど……」
「そこから後の事は、僕の家についてから考えればいい。今は落ち着ける所に逃げる事が最優先だよ」
「大介の家は安全だっていうのか?」
「少なくともここよりはマシだよ。それに山にあるから人もそもそも少ない。安全だと思うよ」
「分かったよ大介の言うことに俺は賛成するよ。圭佑はどうする?」
「大ちゃんの作戦に乗るしかないでしょ!」
「よし決まりだね。じゃあ行こうか」
僕はすぐにロープを手すりに括り付けて、降りる準備を完了させた。
「僕が最初に降りるから、降り終わったら声かけるからその後二人は順番に降りてきて」
ロープを手に取り、僕は軽やかに下まで降りていく。
下に降りて周りを警戒し見渡したが、どうやらゾンビらしき奴らはいないようだった。
「次〜! 降りてきていいよ〜!」
「怖いよ〜」
そう言いながら圭佑が降りてきた。
「何かあったら大ちゃん受け止めてね」
「任して!!」
安心させる為に僕は嘘をついた。まあでも大丈夫だろう。
「屋上からロープ一本で降りるなんて狂気の沙汰だよ〜」
「無事に降りれたら良かったじゃんよ」
「傑!! 降りてきていいよ〜!!」
「分かった〜」
傑は華麗にスルスルとロープをつたって降りてきた。
「よしじゃあ裏門からでようか」
僕たちは駆け出していく。
「大ちゃんゾンビがいたらどうするの?」
「ダッシュで駆け抜けよう」
「分かったよ〜」
裏門が見えてきた。周りには誰もいなかった。
それはそれで運が良かった。
もし裏門もすでにゾンビ達が囲まれていたらどうしようかと思っていたが、その必要はないようだ。
「このまま山まで走るけど大丈夫?」
「俺は大丈夫だけど圭佑が……」
「ちょっと待って〜。二人とも〜」
息を切らしながら圭佑がやっと追いついた。
「まだ走るけど圭佑大丈夫?」
「頑張るよ〜」
「分かった行こう」
再び駆け出す。
学校の裏手にある山はすぐ近くにある。
山の入り口から上へと登っていく。
そんな高い山ではないけれど、木々が生い茂っているような山だ。
「二人とも僕の後についていきて」
山道のような道から外れて、木々が生い茂って草だらけの道へと入っていく。
「大介、お前の家があるって言っていたけど、こんな場所にあるのか?」
「そうだよ! この先にあるから。とにかく今は僕を信じて付いてきて」
しばらく歩くと、僕が住んでいる家が見えてきた。
「あそこが僕の家だよ。とにかく中に入ろう」
「大介……ここがお前の家なのか?」
「そうだよ」
ドアを開けて、二人を中に招き入れた。
「靴は脱がないで平気だから」
「……」
家の中はすぐにテーブルが置かれていて、近くには簡素なキッチンと、奥にはトイレと寝る場所しかない簡素な作りのあばら家。
床は木で出来ていて、歩くとギシギシと音が鳴る。
二人は家の中をあちこち見ていた。
その二人を尻目にテーブルをどかし、下に敷かれた絨毯をひっくり返し、木目の切り目から床を外すとそこには地下に繋がるドアが姿を現した。
「ピッピッピ、ピッピッピッピッピ」
暗証番号を打ち込み、鍵を差し込んでドアを開ける。
「二人とも先に下に降りて! この下に地下室があるから」
「地下室……!?」
二人共目を見開き、驚いた表情をみせていた。
傑と圭佑を下へ降ろした後、僕はハシゴをつたって下へと降りる。
部屋の電気のスイッチを押す。機械音の立ち上がる音と共に明かりが点く。
「うおおおお。何だここ! 凄いな大介」
「……」
明かりがついたその部屋は、上にあった部屋の数倍の広さがあり、寛げそうなソファとテーブルなどがあり、奥には何十という数のモニターがある部屋だった。
「二人共こっちきて」
僕はモニターの前の椅子に座り、スイッチを入れる。
するとモニターに街のあちこちの様子が映し出された。
「何これ??」
「街にある監視カメラからの映像だよ」
「おいおい、この映像って今俺達の街で起こってる映像って事?」
「そうだよ……」
モニターに映し出されていたのは、逃げ惑う人々と人々を追い続けるゾンビ達だった。
「なんでこんな田舎の街でこんな事に……」
僕も本当に何が起きているのか戸惑っていた。
モニターの1つにテレビをつける。
「緊急速報です! 日本のあちこちで人間が人間を襲うという――」
「ここ茨城だけじゃないのか……」
ため息かのように傑が声を絞り出した。
「日本だけなのかな?」
僕は世界のニュース番組を次々にザッピングしてみる。
どうやら日本だけじゃなく、少なくとも数カ国では同じような事が起こっているようだった。
「世界中で起こってるのか?」
「そう……みたいだね」
「大ちゃん、傑くんウソだよね? やっぱこれ夢だよね?」
僕は、椅子にもたれながら天井を見上げて、深く溜息をついた。
「とにかく飯にしよっか……」
「大介突然どうした? 飯ってさっき食ったばかりだろ」
「いいんだよ。僕も正直混乱してて何がなんだか分からないよ! でも一旦温かい食べ物食べてお腹いっぱいになって、落ちついた後どうすか考えた方がいい」
「僕が簡単に何か作るから、二人はソファに座って待ってて」
傑と圭佑は言われたようにソファに腰を下ろした。二人共険しい顔をしていた。
キッチンに僕は向かうと、簡単におにぎりとお味噌汁を作り始めた。
それと冷凍食品だけど唐揚げも一緒に。
「出来たよ〜〜〜」
二人の前に食事を出すと、静かに手を伸ばし食べ始めた。
僕達は、食べている間に会話はなかった。
「……」
「ごちそうさまでした。大ちゃん美味しかったよ」
「ありがとう圭佑」
「ねえ、大ちゃんに聞いてもいい?」
「いいよ、どうしたの?」
「大ちゃんはこうなる事を知っていたの?」
僕はお茶を飲もうとした手を止めた。
「圭佑それはどういう意味だ?」
傑が圭佑に尋ねる。
「傑くん考えてもみなよ? 高校生がなんでこんな施設持ってるんだよ。それに俺なんて今でもこんな震えてるんだよ。大ちゃんはなんでそんな冷静でいられるのさ……」
「前から知っていないと辻褄が合わないじゃん」
圭佑が言っている事は、至極真っ当な事だった。
僕が圭佑や傑の立場だったら同じような事を考えたと思う。
「本当に知らないし、僕は全く関わっていないよ」
「この地下室については、亡くなった父さんが造ったんだ。凄く心配性というか用心深い人だったんだ。こんな形で役に立つとは思わなかったんだよ本当に」
これで納得してもらえるとは正直思っていないけども、僕もどうしようもない。
「まあでも圭佑。仮に知っていたとしたら、事件が起きる当日に学校来るか? 俺だったら1年前から助かる準備してる引っ越ししてるね。それに俺達は大介がいたからこうやって助かってるんだぞ」
「まあ確かにそうだよね……俺達はこれからどうしていけばいいんだよ〜。これじゃあ家にも帰れないし。家族もどうなってるのか分からないよ〜」
「とにかく僕が言えることは、ここに居れば少なくても安全は保証するよ。食料と水も大量にあるから、しばらくは心配しなくて大丈夫」
僕は2人を安心させるように振る舞った。
食べ終わった食器を僕は片付け始める。
モニターの前に椅子に座ると僕は、現状を詳しく観察し始めた。
ゾンビといっても、僕達がよく知る映画出でくるようなゾンビと同じなのだろうか? という事が、最初に浮かんだ疑問だった。
映画と同じようなものだと、この世界を見たらほとんどの人は思うだろう。でもそう取り繕って違うものだという可能性だってある。
考えだしたらキリがなかった。
そろそろ夕方になり、もうすぐ日が暮れる時間に差し掛かった。
僕は自分の疑問などを解決、払拭する為に行動に移す事に決めた。
「ちょっと外に出掛けてくるよ僕」
「はぁ!? 大介マジで言ってんの!?」
「超大事なことなんだ。マジで言ってるよ」
「危ないよ大ちゃん! 見てみなよモニター! そこら中ゾンビだらけだよ! それにもう夜になるよ? 危ないって!」
「だからだよ。夜にどうしても確かめたい事があるんだよ」
「大ちゃん言ってたじゃんここなら安全だって。自衛隊とか動いてるだろうし、助けが来るまで待とうよ」
「絶対に来ると言えるか? こんな田舎の茨城県にすぐに来ると思う? 自衛隊だってすぐに動けないし、人数だって限りがある。主要都市から助けに行くに決まってる。茨城県なんて後の後の後ぐらいだよ!」
「俺も大介が外に行くのは反対だよ。明日の朝になって明るくなってから3人で外に行けばいいじゃないか」
「2人が反対しても僕は行くよ。2人に渡しとくけど、これがここに入るための暗証番号と鍵だから。一応渡しとくね」
「後これトランシーバー。ここのボタン押しながら喋れば僕の持っているトランシーバーに届くから、何かあった時だけトランシーバーに連絡してきて」
外に行くことに決めた僕は、奥の部屋に入り着替え始めた。頑丈な動きやすいつなぎに着替えブーツに履き替え、手袋まで
リュックに荷物を詰めて、部屋の壁についているスイッチを押すと壁が開き、そこには様々な武器が現れた。そこから武器をいくつか持っていく。
「これも持っていかないとな」
僕は本格的なマスクにも手を伸ばした。
「本当に行くのか大介……」
「心配しないで傑、大丈夫だから」
「もし明日のこの時間、19時になっても僕が戻らなかったら僕はゾンビになったと思って2人は行動して。まあ朝には戻ってくるつもりだから」
「食料は奥に沢山あるから一ヶ月は余裕で持つから。2人はお風呂にでもゆっかり浸かってゆっくり寝て、明日の僕の帰りでも待っててよ」
僕はそそくさとハシゴを登っていき、2人に向かって元気に挨拶を交わす。
「じゃあ、行ってくるね!」
重い地下の扉を閉めた。
「さあ、行ってくるか〜」
僕は走って街へと向かう。
誰にも言えない秘密が、僕にはある。
僕は忍者一族の末裔として、幼い頃から父さんに厳しく育てられたという事だ。
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