第4話 ジローの夢

「こめ、だわら?」

 ジローがむっくり起き上がり首を傾げる。

 長いまつげが、パチパチっと不思議そうに瞬いて、それが、とっても可愛くて、私は、ちょっぴりいじわるをしてみたくなった。


 眉間にしわを寄せ、わざと低い声で困ったように難しがる。


「そう、米俵。米俵がないとね、私たち飢え死にしちゃうかも」

 ジローの大きな目が、もっともっと大きく見開かれた。


「こめだわら……」

 呟いて、ぼおっと考え込んで、それからまたゴロンと横になった。


「こめだわら……」

 ものすご~く考えている。

「こめ……」

 そのうち、ふごー、ふごー、と、寝息が聞こえ始めた。

 そうっと上から覗き込むと、ジローはすでに夢の中。


 私は、くすっと笑って、食器をキッチンに運び、座卓を折りたたんで、ジロー用の大きな布団を敷いた。


「ジロー、お布団敷いたから、ここで寝てね」

「むにゃ」

 目をこすりながら、ジローはのそりのそりと、真っ青な布団に潜り込んでいく。

「それから、歯……」


 ふすー、ふすー、ふすー


 まあ、いっか。今日ぐらい。

 ジローの寝息をBGMに食器を洗う。この時間が、なんか幸せ。


 ふすー、ふすー、ぐご! むにゃむにゃ


「にく、じゃが……」

 これは、ジローの寝言。


「こ、ま、る。 たべ、たい……」


「どんな夢?」

 ふふっと笑って、ジローの夢がいい夢ですように。と、祈った。

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