きっと、わたしの傍に
わたしは、これまでにないほど充実した夜を迎えた。
学校に行こうとしたこと。父と母に顔を見せたら二人ともわたしを愛してくれているってわかったこと。二人と一緒にご飯を食べたこと。
全部、霊くんに話そう。
そう思っていたのに、霊くんはその夜、姿を現さなかった。
その夜だけではなかった。次の夜も、その次の夜になっても、霊くんは姿を現すことはなかった。
ずっと傍にいてくれるって言ったじゃん、と理不尽に霊くんを責め立てる言葉が思い浮かび、わたしはすぐにそれを掻き消す。
霊くんはきっと、今もわたしの傍にいるんだ。わたしに干渉することなくなっても、霊くんはずっとわたしの傍にいるから。
わたしはそう信じて、次の朝は、早く目覚める。
今日こそ、学校に行こう。
またクローゼットを開けて、埃を被った制服を睨む。
この間のように嫌な記憶が脳裏に蘇るが、霊くんとの記憶や霊くんの言葉でそれを上書きする。
霊くんはわたしの傍にいてわたしを見ているのだから、霊くんに見せても恥ずかしくないように生きようって、決めた。
わたしは意を決して制服に手を伸ばす。
ぴりっ、と手に痛みが走る。
周りの空気がやけに冷たく感じられる。
わたしは、手を引っ込める。
でも、隣に霊くんの気配がする。
「霊、くん……」
霊くんが、背中を押してくれるような気がする。
わたしは、再び手を伸ばす。
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