五年前の願掛け【短編】
真辻春妃
現在.1
その日、僕は本当にのん気だったと思う。
「ねぇ、覚えてる? 五年前の今日、二人で
「え……」
学校の正門を抜けたところで、幼馴染の
珍しく里帆から「一緒に帰ろう」と声をかけられ、僕は舞い上がったのだが、彼女は判決を待つ被告人のように、暗い
「……いや。あんまり覚えてないけど」
歩幅の小さい里帆に合わせながら歩いていると、中学の制服を着たクラスメイトが僕と里帆を追い越し、いかにもな様子でにやついた。
僕が好きな子と一緒に帰っているからだろう。明日にも教室で冷やかされるのが目に浮かんだ。
「小三の七月二日に私と
「へ……?」
俯きながらも淡々とした口調で里帆が言い、僕は間の抜けた返事をもらした。
「今から行くって、
「……そう。あのとき書いた願いがちゃんと叶ったかどうか、確認しに行くの」
顔を上げた里帆と目が合った。強い意志をはらんだその瞳に、僕は「うん」と頷くしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます