第28話 オッサン
「ふふふ……どうです? ヒントが欲しいですか?」
「え? いや……単刀直入に……」
「ふふふ……当てないと私の依頼は分かりませんよ?」
な……なんて、面倒くさいオッサンなんだ!
だが……そうだな。
腐っても、この早乙女 瞳……ハードボイルド探偵!
このオッサンの服装や立ち居振る舞いから依頼内容を推理するってのも……
まあ、悪くない!!
ふむ……ではこのオッサンを観察だ。
まず、服装だが……上等なスーツだ。
着けてる時計も海外ブランドの高級時計。履いている革靴も良い物だ。
そして左の薬指にはめられた指輪……か。
なるほど……な。
「浮気調査……と言ったところかな?」
「ほう……根拠は?」
「まず……そのスーツ。スーツに詳しいわけじゃあないが……かなり上等なモノだ。にも関わらず間接以外の部分でもシワが目立つ」
「ほう……」
「足元の靴下からですらも、こだわりを感じるオシャレなアンタが、シワがついたスーツで出掛けるのは考えにくい。恐らく普段は奥さんがアイロンがけをしていて、最近はそれがなくなっているのでは? そうでないのなら……アンタは毎回クリーニングにでも出すはずだ。服装や腕時計を見る限り金は持ってそうだしな」
「ほう……根拠はそれだけかな?」
「まあ……これ以上は失礼にあたるんでね」
「構わんよ」
「左手の結婚指輪。……綺麗すぎる。新品とまでは言わないまでも、その年齢ではめてるものにしちゃ年季が入ってない。ここ最近で若い奥さんでも、もらったのかい? 後は、まあ……よくある話だろう?」
「ふっ……なるほどね」
ふふふ……どうだい? オレの観察力は? ダテに娯楽の殿堂で毎朝、台のチェックをしてるわけじゃないんだぜ?
なに?
貴様……昨日の再放送のドラマ『オシャレ探偵
……。
見た。
あれ! あれすっげえ面白いよな! な! 毎週見てる!
ファッションチェックで人物の服装から推理していく謎解きが華麗なんだよ!
謎が解けた時の決めゼリフ! 「そろそろ事件を締めようか」って言いながら、ネクタイを締め直す所がさ! カッコイイんだよー!
オッサンは視線をカウンターに落とし「ふふふ……」と不敵に笑った。
「さすが探偵さん。と言ったところかな? だが……不正解だ」
オッサンは左手の薬指から指輪を外し、コトリとカウンターに置いた。
「これは……フェイクです」
な……
なんて面倒くさいオッサンなんだ……
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