第24話 それでも早乙女…

 懐から取り出したバールを振りかぶると、オレは一気に目標目掛けて振り下ろした。


 ゴッシャ


 鈍い音が店内に響く。

 オレがバールを振り下ろしたのは拓の頭……

 ではなく店のレジ。

 オレはレジから現金を鷲掴みにすると、それを拓の前に突き出した。


「さあ! お前の目的は金だろう!? これ持って、さっさと帰ってくれ!!」


「え?」


「え? じゃないよ! さっき聞いたろ!? そうだ! オレが早乙女……早乙女瞳だ!!」


「はぁ……」


「これさえあれば、マスターにもピーコにも用はないだろう!? これ持ってさっさと帰ってくれ!」


「え? じゃあ……この人が……」


「そうだよ! ここのマスターだよ!!」


「ええ!? じゃ……じゃあボクはまったく関係のない人を……


 って違うじゃろーがい! このオッサンがいきなり襲い掛かってきたからじゃろーが!!」


 そう言うと拓はしがみついていたマスターの首根っこを掴み床に押し付けた。


「おーい! スイッチ入れてんじゃないよ!! お前みたいな顔のヤツがピーコ連れてたら、そりゃ誤解するだろうが!」


「そ、そんな……ひどい」


「いいから、マスターを離せ!!」


 オレは拓を突き飛ばし床に押し付けられていたマスターに駆け寄る。


「おい! マスター! 大丈夫か!?」


「・・・・・・。」


 返事がない……気絶? ……気絶してるだけだよな? なあ?


「あのぉ……」


「なんだよ!?」


 後ろからおずおずと話しかけてきた拓に乱暴に返答する。


「あの……お金なんですけど……」


「足りないってんだろ!? 足りない分は今度払うよ! いいから今日はもう帰ってくれ!!」


「いや、その……ちょっと多いんですけど……」


 ・・・・・・。


「え? ウソ……マジで?」


「はい……」


「ああ……そう……うん……多い分は、その……返してくれるかな? そこに掛けてる上着、それオレのだからさ。その上着のポケットの中に入れといてくれるかな?」


「え? でもコレここのお店のお金なんじゃ……」


 ・・・・・。


「あ、あとで返すんだよ! いいからさっさと……」


「う……うう」


 あ! マズイ!! マスターが目を覚ました?

 って、いや……まずくはないか……


「早乙女君……」


マスターがオレの名前を呼んだ。

 

 

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