バレンタイン・ブレイク
「今日はバレンタインデー! チョコはいかがですか!?」
売り子の声が街中に響く。
お店の宣伝も大変だなと私は思った。
私には手作りチョコを渡す相手がいる。
「ふふーん♪ ふふふーん♪」
鼻歌を奏でる私。
あの今、まさに路肩に高級外車を止めている男だ。
高級スーツに身を包んだその男が私がチョコを渡す相手。
私は一欠けのチョコを握り親指で飛ばす。いわゆる指弾という奴だ。
放たれたチョコは不規則な軌道を描き男へと飛んで行く。
しかし――
パキッという軽い何かが割れる音が響いただけで、男の心臓は貫かれなかった。
「ちっ! 相手もチョコ使いか!?」
――チョコ使い。バレンタインデー限定でチョコを操る事の出来る能力者の事。
大抵が暗殺者で毎年、バレンタインデーになると稼ぎ時と言わんばかりに高額の暗殺依頼を受けて仕事を遂行する。
男は懐に板チョコを仕込んでいた。
私は歯噛みする。板チョコの硬度を上げていたから防がれたのだ。普通なら私の指弾は防げない。銃弾ほどの威力があるのだから。
次なる手を打たなければならなくなった。
懐からチョコシロップを取り出す。私はそのまま駆け出した。
男へ向かって加速する。そして。
(狙いは首!)
ウォーターカッターの要領で、チョコシロップを噴出させる。
切れ味鋭い鞭と化したチョコシロップが男の首を刈り取りに向かう。
だが。
今度は首とチョコシロップとの間に男の指が割って入る。そこにあったのは。
「板チョコの欠片……!?」
こいつはかなりのやり手だ。
私の技が通用しない。
チョコシロップを操り結界を作る。
「この結界から逃げられた者はいない。今まで誰も破った事のない必殺技だ」
「それは怖いねお嬢さん。これは板チョコ三枚くらい使う事になりそうだ」
二人が激突する。
チョコ飛沫が舞う。
チョコを吐き出す二人。
チョコを食べて身体強化していたのだ。
結果は引き分け。
――かに見えた。
気絶したはずの私は目を覚ます。
「本命は取っておくものよね」
ハート形のチョコを事前に自分の身体に張り付け、気絶する様な事があったら、すぐさま意識を取り戻すようにショックを与えるように設定したのだ。
「さよなら
ハート形のチョコを男の心臓に押し当てる。
心臓を直接止める一撃。死因は心臓麻痺になるだろう。
あるいは。
「チョコの食べ過ぎによるショック死とかね」
私はその場を後にした。
愛する
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