第47話 思い出、NOKOSEEE!
「皆よく戦ってくれた! 乾杯!」
竜の戦争編完結記念宴。これは原作でもある。
ちなみに、原作では圧勝、というか、最初にドウラが一人で戦って、その後ヒーローは遅れてやってくるピンチにトレス登場ぼかーん、だったのでドウラ以外ほぼ無傷の勝利。ドウラだけかわいそう。
だが、今回はボロボロ。みんな死力を尽くし戦った。
怪我もしているし疲労困憊。だけど、誰もが達成感に満ち溢れ笑っていた。
自分たちの成し遂げたことに満足していた。
小綺麗なのは、一角のみ。トレス達のみとっても綺麗な衣装でいらっしゃる。
あ、ちなみにトレス達は今回もチートぼかーんでした。
俺達が勝利を分かち合って喜んでいるところに、めっちゃ分身したトレスが帰ってきた。
全肯定トレスガールズお一人様につき一人トレスが付いていた。
漁夫の利を狙っていたゲス軍団をトレス&全肯定トレスガールズで襲撃。
それだけで十分なはずなのに、トレス分身。その上でぼかーん。ゲスとクズ以外は消滅したらしい。まあ、全員原作でゲスの極み男って感じだったので同情はしない。
とにもかくにも、ぼっこぼこのぎったぎたにして帰ってきた。
そして、
『もう二度と顔も見たくない! どこかに行ってくれ!』
と逃がしたらしい。なんでだよ。だが、これが原作通り。
これが原作の『ゲスクズ魔物化再びざまぁ』編に繋がる。
のだが、そうは問屋が卸さない。
ヒナが指示した冒険者が捕え、俺が教えた数々の罪で投獄された。
俺の【神言】によって世界も変わり始めているので、ご都合よく逃げ出す段取りが始まったりはしないだろう。
とにかく、ゲスクズを倒したトレスは宴に参加。全肯定トレスガールズと楽しそうだ。
他は誰も近寄らない。
とても綺麗な格好でお姉ちゃんはべらしている男に近寄ろうとするのは下心ある奴くらいだろう。ヒナによって鍛えられた冒険者たちは近寄ることなく勝利をたたえ合っている。
キアラたちもしかり。
それに、トレスは誰かが来るのを待ってはいても自分たちからは動かない。
原作でも囲まれる描写はあれど、トレスから行くっていうのはそういえば見たことがない。
一人二人行っても、全肯定トレスガールズのトレスAGE祭りに疲れてすぐに離れていった。
原作であれば、このあとドウラとトレスが致すのだが、起こりそうにない。
何故なら……。
「ゴメス~! 儂への感謝が足らんのではないか~?」
めっちゃ俺に絡んでた。
「ゴメス……知っておるよな。『竜族は強き者に惹かれる』と……そして、お主は喉から血を吐き倒れるほどに儂のことを応援しておった。お主が儂に惹かれ、儂に対して誰よりも大きな愛を贈ってくれたのをビンビン感じておったぞ」
そう、俺は血を吐いてぶっ倒れるまでドウラに声を掛け続けた。これがドウラの何かに触れてしまったようでめっちゃ絡んでくる。
そういえば、そういう設定があった。『竜族は強き者に惹かれる』。原作web版で、『ドウラは竜たちが殺されるのを見てトラウマになり戦うのが実は嫌いだった設定が後付けで加わりましたけど、じゃあ、戦いまくってぶっころしまくってるトレスなんて大嫌いにならないとおかしくないですか笑』という感想に『竜族は強き者に惹かれるという習性があってそれゆえにドウラはトレスが好きになったんですね。ディアナとかギティルの感じ見たら読み取れると思ったんですけど、思った以上にそういうの分からないんだなと思いましたw』と返していた気がする。
じゃあ、他の子達は普通に強い人が好きなチョロインだったのかなと思うんだが、そうでもないらしい。
「ちょ、ちょっと別に血を吐いて応援したからってそういう事じゃないでしょ! ゴメスは誰にだって本気で応援してくれるのよ! そ、それに、一番最初にゴメスが凄いって褒めてくれたのはアタシだもん! ほ、ほら、ゴメス。アタシが喉にいい飲み物もらってきてあげたわよ」
口調はキツめだが、ずっと心配そうにいろんなものを持って来てくれるキアラさん。
「ふふふ、でもね、キアラ。ゴメスさんは夜通し私の事を褒めてくれたのよ。ゴメスさん、はい、じゃあ、ちょっと治療しましょうね。少しずつ治療しないと負荷が凄いですからね、仕方ないんですよ」
聖女とは思えぬとっても妖艶でとろんとした目で俺の口を開けて治癒魔法をかけてくるヒナさん。
「でもでも! ゴメスは、どんなに痛めつけられても、ボクの事を褒めて励ましてくれてたんだよ! ゴメス! 今日はボクがゴメスの頭をなでてあげるからね!」
すっごいおっさんツルツルヘッドをツルツル撫でてくれるシロさん。
すっごいしんどいわあ。
いや、別に、嬉しいのは嬉しいよ。美女に囲まれて。だけど、なんだろう。このキャバクラ感。いや、そういう意図じゃなく純粋な好意だとは思う。だけど、一度みんな囲まれてみるといい。こんな状態でわはわは出来るのはマジでナルシストか、キャバクラ豪遊おじさんだとおっさんは思う。小心者おっさんはいたたまれない。
おっさんは周りに気を使っちゃうんだ! 人の目が怖いんだ! あと、シンプルにトレスの様子を見てて思う。
「あ、あはは。みんな、ありがとう。オレはみんなにやさしくされてしあわせものだな……」
ナルシストキャバクラ豪遊お兄さんだなあって……。
そういや、前世ブラック企業社員時代に社長の息子にキャバクラに連れていかれてすっごい女の子に囲まれているところを見せつけられた。すっごい息子楽しそうでした。
「おいおい、ゴメス。トレスの方を見て、お主、ソッチの気があるのではあるまいな」
ドウラが不穏な声を掛けてくる。
ない。仮にソッチに目覚めたとしても、アイツだけはマジでない。
だって、絶対浮気するもん!
「え!? ゴメス……それで……」
それで……じゃねえよおお! キアラさん!? それでアタシの方に振り向いてくれないのかみたいな顔するのやめて!
「いやいやいや! 俺は普通に女の子が好きだよ! どすけべですからあ!」
「くっくっく、分かっておる分かっておる。お主がどすけべであることはな。それに、儂の胸をよく見とることもな」
はい、ソノトオリデス。
だって、すっごい魅力的なんだもの。ゴメスだもの。
「じゃが、お主の場合は、胸以上に儂らの内面や努力をちゃんと見てくれておるからな。他の者が大層惹かれておるのも分かる。じゃは、ゴメスよ。儂の『竜の血』を呑んだことを忘れるでないぞ」
飲みました。
竜の血。これをゲスクズ親子たち人間とその裏で暗躍する魔族が欲しがった。
竜の血を飲んだ人間は一気に体が回復・進化する。ただし、頑丈な人間でなければ血ブシャアアアアアア肉バァアアアンで死ぬらしい。
生きててよかった。
血を吐いて倒れた後に、また女神さまに会ったくらいだもんな。
『よく死にかけますねえ』
『すみません』
『いえ、こちらこそウチのバカ息子がすみません。まあ、今回も大丈夫そうですよ。キアラさんが新しいゴメスさん専用の聖属性治癒魔法を、ヒナさんが新しいゴメスさん専用の闇属性魂魔法を、シロさんが新しく勉強して覚えた薬スキルで作ったシロさんの魔力がこもった秘薬使ってくれてますから』
『すぎょい』
『ふふふ……彼女たちの聖魔の力と魔族特有の魔力でゴメスさんの【神言】が進化しましたから、またパワーアップするかもしれませんね』
『ゑ?』
『ああ、もしかして【神言】の進化は私の力だけだと思いました? 違いますよ。あの三人の神の予想を超えた進化が貴方のスキルの進化を促したんですよ』
『OH……あ、そういえば、女神さまもしよければ、教えて欲しいんですが、はずコピ書いたのって……』
『ええ、貴方の想像通りです。なんか書いてみたくなって書いたみたそうです。まあ、ほぼ設定丸パクリのAIだよりですけど』
『くそったれがぁああああああああああああ! ちょっと面白いと思ってた自分がにくいぃいいいいいいいいい! …………って、あのー女神さま!? なんか体がどんどん熱くなってるんですけど!?』
『今、ドウラさんも貴方に血を飲ませることで復活させようとしていますね。ふふふ、また進化しそうです』
『え? マジで? ……め、女神さま、もし進化できるなら……!』
『大丈夫。分かっています。……あの世界をお願いしますね』
というわけで、俺復活。
ドウラの竜の血で瀕死状態から復活し、ドウラにはとてつもなく大きな借りができたというわけだ。
「竜の血をやったんじゃからな。とりあえず、一発……」
とりあえず一発じゃねえよ。
「なんじゃ、どすけべなんじゃろう? 一発くらい良いではないか。どうせ、そういう店で何発も……」
やめなさい。
「ゴ、ゴメス!?」
「あらあら」
「~~~~! ゴメスのすけべええ!」
すっごい怒られてる。なんでだよ。ゴメスだよ。いいじゃないか。ゴメスだもの!
このままだとなんか嫌な流れになりそうなので、この場を去ろうと腰を上げたその時だった。
「やあ、ゴメス」
「……よお、トレス」
全肯定トレスガールズを引き連れたトレス登場。これでみんなを平等に愛せるからと出したはずの分身は一旦消したみたいだ。どういうことだよ。
「ゴメス、竜族との戦い。おつかれ。ゴメスもすごかったな」
「ああ、ありがとな」
「いや、本当に、ゴメスもすごいよ。みんないっぱい怪我はしてるけれど勝てたんだもんな」
あー……。
「ごめんな、オレがもう少し早く駆けつけることが出来れば、外れスキルのオレだけど少しは楽に戦えたかもしれないのに」
あー……。
「みんなもすごかった。オレの【コピー・治癒】でみんなのけがを……」
「いいわ、治さなくていい」
「キアラ?」
キアラが、とんでもなく低い声で呟き立ち上がる。あーあー。
「この怪我は、私達がゴメスと一緒に一生懸命戦った結果。いわば勲章よ。消さなくていい」
「い、いや、でも……大変だっただろ。オレなら一瞬で……」
「一瞬で治せるのに貴方は外れスキルと言う。私達が必死で覚えている様子や必死に治療している様子を見てくれていないのですか」
ヒナが悲しそうな笑顔でトレスを見つめる。
「違う! そうじゃない! なんでみんなオレのスキルがあればもっと簡単に強くなれるのに」
「簡単に強くなれなかったからみんなで頑張れたんだよ、トレス。ボクには大切なたくさんの思い出が出来たよ。トレスにはある? 素敵な思い出。みんなと一緒に何かを成し遂げた思い出」
「……それは」
シロがぎゅっと自分の胸に拳を当ててトレスに伝える。
「トレスよ。お主らより長く生きてきた儂からのアドバイスじゃ。ただの強者は寂しいぞ」
「……あ、え、う」
ドウラの言葉が何か言おうとしたトレスの言葉を詰まらせる。
周りの人間たちもトレスを見ている。その目は、称賛ではなく、可哀そうなものを見るような目。ここではトレスは、強いけど変な人間になってしまっている。だって、彼らはトレスとは……何の思い出もないから。
居た堪れなくなったトレスが去っていく。
そういえば、はずコピを思い出してもチートぼかーんおもしれーで心震える思い出はない。
当時の俺はそれでよかった。とにかく何かぼかーんとぶっ壊して欲しかった。
でも、今は、守りたい。
複雑な感情でトレスを見送り、そして、声を掛け合う彼女たちを。
少しでも幸せであたたかな思い出で満たしてやりたいと思う。
「ゴメス……ちょっと、落ち込んでるから褒めて」
「私も」「ボクも」「儂も」
出来るだけね、出来るだけ。
褒め地獄からの生還。
俺は、満足して眠っている女性陣を任せ、1人酒を楽しもうと宴会場の外れへと歩いていた。
すると、
「やあ、ゴメス」
「……やあ、トレス」
トレスがわらっていた。
「ゴメスはすごいよ」
いやなかんじだ。
「あ、ああ、ありがとな」
なんだ、この感じは……。
この感じは前世でバカ息子にクビをちらつかせられた時の……。
トレスがぽんと肩に手を置きわらう。
「でも、絶対オレの方がSUGEEE」
「……! トレス!」
「【コピー】『褒める』。そして……」
「てめえ! トレ「【カット】」
「ふふ……あははははははははは! オレの勝ちだ。オレ、TUEEE!!!!」
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