第35話 あの原作、KAIRIII!
バシイイ!
「ゴメスゥウ!」
「シロ! 大丈夫だ! 俺は大丈夫だし! お前は強い子だ! この前もな、シルバーウルフに襲われた時に、ちょっと引っ掻かれた時も我慢出来ててSUGEEEと思ったぞ! だから、お前は我慢できる子だ! 強い子だ」
ドガアアア!
「ゴメスッ!」
「シロ! 大丈夫だ! お前の目にもとまらぬ速さで的確に相手のウィークポイントを狙う攻撃に比べれば、屁みたいなもんよ。お前の磨かれたスキルはマジでSUGEEEし、そこまで磨いたお前ってほんとSUGEEEよなあ!」
バキャアア!
「ゴメス!」
「シロ! ほら、笑って、お前の笑顔は100万ゴールドの夜景よりも価値があるんだぞー。ほら、笑ってー。はい、かわいいー」
「も、もう! ゴメスったら……えへ」
シロの笑顔、かわいい。100万ゴールド課金します! 金ないけど!
「っなんだよ! この状況!」
盗賊子分ツッコむ。まあ、確かに変な状況ではある。
ゴメス、盗賊に殴られる。シロ、諦めそうになる。のを、遮るように俺が褒める。
ゴメス、盗賊に殴られる。の、永久機関完成。
いや、永久は無理だけど。ひとまず、これでめっちゃ粘ってる。
トレス、早くこないかなー。どこまで耐えられるか。いや、どこまでも耐えるしかない。
原作ではご都合主義の無理やり後で繋げただろ感満載の伏線がSUGEEEある。とはいえ、伏線は伏線だ。それ以上でもそれ以下でもない。
出来るだけ回収しないと、トレスのパワーアップに繋がらないし、トレスがパワーアップしないと進行不可能なイベントが山ほどある。例えば、俺たちが攫われる前に3つほどイベントがあった。お届け物編・強者と弱者編・ダンス編。
お届け物編は、街の我儘貴族からの依頼で遥か遠くに離れた5か所に届け物をしないといけないというもの。トレスが街を離れている間にキアラ達ヒロインを手籠めにしようとする貴族。だが、トレスのチート爆発。ドウラの妹ディアナと致したことで手に入れたチートスキル【カット&ペースト】で自身の存在を切り取り、時空を超え張り付けることで即完了。
原理?
知らん。なんか魔力でわーしたらわー出来るんだろう。ちゃんとした理論なんてこの世界には存在しない。主人公が出来るならそれは出来ることなんだ。ゴメス如きが入れるご都合主義ではないのだ。ちなみに、届け物の5か所は、過去に行ったことのある街。嗚呼、ご都合主義。だが、やはり、原作通りに行ってないと出来なかったイベントなのだ。
まあ、原作では、カット&ペーストは、『悪いな、モブ太。このカット&ペースト二人乗りなんだ』とばかりに、安定してカット&ペースト出来るのが二人までということで、一回ずつなかよくヒロイン達がお出かけする。4回それで、最後の一回はゴメスと、と思いきや一人で移動。
そして、ヒロイン達が貴族に薬で弱らされ襲われそうになるところをトレス帰還。激怒。貴族とその配下をチートぼかーん。トレスSUGEEE、だ。
ゴメスは、ざまぁ感を強くするために貴族の性格の悪さを際立たせるぜとぼっこぼこにされる役です。原作ゴメス、かわいそう。
ですがぁ。本作では、出会ったばかりのドウラの妹ディアナと致しヒロインズにちょっと距離を置かれているトレス。ちょっとスネちゃたトレスちゃま、一人でお出かけ。原作乖離30パー。貴族に薬で弱らせられるはずが、絶賛努力中ヒナの聖魔法で即回復。原作乖離70パー。ゴメスぼこぼこ。原作乖離10パー。ゴメスぼこぼこ。キアラ・ヒナぶちギレ。貴族ぼこぼこ。トレス帰還。事件解決。原作乖離99パー。
まあ、とはいえトレスの名声は広がったから、結果、乖離0パーセントだろう。最終的にトレスが解決すれば、原作乖離は0パーセントで摂取カロリーはゼロだ。原理? 知らん。そういうもんだ。受け入れろ。
あともまあ、大体原作通りだった。うん。
強者と弱者編はドウラの竜の戦争の伏線となる話で、薬使われたとはいえ貴族に襲われそうになったドウラが落ち込んでいる最中でチンピラに絡まれる。力のコントロールが出来ず、チンピラに大けがをさせてしまうが、お届け物編のエロ貴族を葬ったことで別のエロくない方の貴族に感謝されているトレスによってことなきを得るドウラ好感度AGEの話。ちなみに、ゴメスはオチ要員でチンピラと同じように金髪美女をナンパしに行ったらトレスに言われて髪型を変えたキアラでぼっこぼこにされる。
まあ、本作では、ドウラあんまり落ち込んでないし、ちょっと怪我させたけどヒナが秒で治したけど、トレスが貴族の力を借りて解決したので原作カイリーはほぼ0パーだ。0パーだったら0パーだ。トレスをAGEたら全部0パーになるんだ、知らんのか。それがカイリーゼロ理論なんだ。テストに出るぞ。出ないぞ。
ちなみに、原作通りキアラを知らない振りしてナンパしたらそのままお出かけになったけど、まあ、原作カイリーほぼ0パーだ。お尻触ろうとして殴られたし。
ダンス編も大体0カイリーだ。エロくない方の貴族の娘に誘われてダンスパーティーに訪れたトレス一行。そこにはトレスを捨てた元婚約者の女がいて元貴族のトレスを馬鹿にする。『外れスキルがダンスなんて踊れるのぉ?』と。
外れスキルとなんか関係あるのか分からんが、言うんだ。もう考えるな。そういうもんなんだ。
この世界では、外れスキルなだけで全部否定する世界なんだ。地獄ガチャだよね。まあ、天才ダンサーの踊りをコピーしたトレス君がヒロイン達とダンス。みんなを魅了。なんか逆ギレした女が取り巻きのイケメンズにヒロインズをこっそり襲わせる。が、トレスチートぼかーん。ダンス会場の女性陣きゃー。女、ザマァー。という話だ。この時のヒロイン達のドレス挿絵は最高でした。
まあ、本作も大体原作通りだったよ、うん。
エロくない方の貴族の娘に誘われたから0カイリー!
トレスを捨てた元婚約者の女が馬鹿にするから0カイリー!
トレススーパーダンススキルコピーAGEてるから特に0カイリー中の0カイリー!
ヒロイン達、遠慮してトレスと踊らない。50カイリー。
なぜかキャルがいてキャルとダンス。このあとこいつら致したんだ! でも、ひとまずみんなを魅了! トレスAGEてるから0カイリー!
元婚約者女逆ギレ取り巻きイケメンズ襲うから0カイリー。
ヒロインズ、トレスより先にぼかーん。まあ、ぼかーんしたら何も残らないから一緒。0カイリー。
ダンス会場の女性、キアラ達にきゃー。キアラ達への声援はパーティーのものでもある。ワンフォアオールオールフォアワン。だから、トレスもきゃーでAGE。0カイリー。
女、ザマァー。はい、終わり良ければ総て良し。0カイリー。
ちなみに、キアラとヒナに執拗にダンスに誘われ俺も踊ったけどめっちゃ下手で笑われた。忘れたいくらい恥ずかしかったので忘れる。0カイリー。笑った奴キアラとヒナがなんかしてたけど知らないから0カイリー。
そして、この話ではダンスで大衆の前に出るのを嫌がるシロをトレスが連れ出し一緒に踊る。人の目がこわいシロだが、少しだけ慣れ、トレスに惚れるという伏線がある。原作では。
ただ、本作では断れない主人公トレスがキャルに付きまとわれていた上にシロがそれに嫌悪感丸出しだったので…………俺が、誘った……! だって、ここでシロがダンスしないと次の話に繋がらないんだ! だから、ゴメス、誘いました……!
『よ、よお、シロ、一緒に踊ろうぜ』
『ボクは、いいよ。キアラ達と踊ればいいじゃん』
『頼む! 踊ってくれ! 美脚で顔が小さくないと似合いそうにないそんな素敵なドレスを着こなす美少女シロさんと一生の思い出に踊らせてくださぁあい!』
『わ、わかったよ! 地面にツルツル頭こすりつけないでよ! まったくもう……ただし、100ゴールドね、にひひ』
そして、ダンス中に起こるハプニングも達成し、原作カイリー0パーにした。カイリーゼロ理論はさいこうだぜ!
『ゴメス、ありがとね……誘ってくれてうれしかった……その、必要とされて、うれしかった』
『トレスが言ったんだ。シロが元気なさそうだから。俺に。トレスが、トレスが、トレスが、言ったんだ』
トレスAGEでカイリー0。信じてなさそうでめっちゃシロに笑われるし、キアラとヒナに圧かけられたけど、トレスAGEだから0カイリー。
そして、シロの心に少し人を信じる心が生まれ、盗賊団編につながる。一応、伏線はほぼ100パー回収したから、カイリー0だと信じたい。なので、ここまでの努力を水の泡にするわけにはいかない。俺は耐える! だから、シロも耐えてね!
「いい加減! 観念しろ! クソがぁああああああ!」
それに、この程度耐えられなくてどうする。
「おっさんがかっこつけてんじゃねえぞおおお! おらあああ!」
ドガシャア!
「ゴ、ゴメス!」
「シロォ! 大丈夫だっ! ……お前が、今まで耐えてきた理不尽に比べれば、なんてことねえよ……!」
「……! ゴメス」
そう。シロはクソみてえな環境でずっと耐え忍んで生きて、生きるために手を悪に染めざるをえない環境で頑張って頑張って頑張ってきたんだ。それに比べれば本当にこの程度大したことない。
本当にSUGEEEよ、お前は。シロ。
だから、そんな悲しそうな眼をするな。
大丈夫だから。
「よーし! シロ! 俺があと100回耐えたらお前のぷりっとしまったお尻をなでさせてもらうからな~わはは~」
だから、笑え。もしくは、いつもみたいにいたずらっ子な顔を見せてくれ。
「……いやだ」
真顔で言われた。ぴえん。いや、お尻とか冗談ですやん。
シロの突き刺すような瞳が俺を見ている。いや、冗談ですやん。
「もう、いやだ」
冗談ですやん。
「もう……ゴメスが傷つけられるのを見るのはいやだ……!」
え? そっち?
ありがとう。そんなこと言ってもらえておじさん、涙が出そう。ぴえん。
強い決意の目をしたシロは白い肌をより白く人間離れした驚きの白さに……。
え?
「え? シ、シロ! お前何をするつもりだ!」
やばいやばいやばい! シロがやらかしはじめてる! 原作カイリー力がどんどん上がっていく……カイリー力きゅ……9.000パー、10.000……11.000……バ……バカな……まさか……ま……まだ上昇している……! きゅ、きゅうじゅ……98.000……!? し、信じられん! 信じたくない! 人間離れした白さはマジで人間離れしたもんでして、それが解放されるのは……原作のもうちょいあとなんですけどおおお!
「な、なんだ、シロが姿を……」
「お、おれ、頭領を呼んでくる!」
盗賊子分Bが慌てて頭領の元へ駆けていく。そして、盗賊子分Aはナイフをシロに向ける。
「な、何か分からねえが……大人しくしてろぉおお!」
悪手。実に悪手。
あの状態のシロにそれはない。『アレ』は頭領だけが知ってるシロの真の姿であり、本当に欲しがった力。
シロの身体が魔力体の白い光に変わり、縛られた鎖からするりと抜けていく。そして、光のまま、盗賊子分Aのナイフを呑みこみ、盗賊子分Aさえも一瞬包むと、人に近い形に戻る。
「……ぇ? あ、あ、あ、ぎゃああああああ!」
光から解放され、やせ細った盗賊子分Aの足には盗賊子分Aの持っていたナイフ。めっちゃ痛そう。俺の腿が震える。
「半人半魔のボクに勝てるわけないじゃん。ばあか」
悪戯っ子ぽい、いや、小悪魔的な妖艶な笑みを浮かべるシロ。
そう、半人半魔で、魔力や体力さえも『盗む』ことが出来る最凶の盗人のスキルを持つ少女。それがシロの真の姿。
これが明らかになるのは……原作ではまだあとだったんだけど!
このままだとシロが全部終わらせちゃうんだけど!
原作カイリー100パーセント中の100パーセントォオオオ!
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