第30話 ないって言ったら異常、NEEE!
そうか、勘違い主人公が悪い方に勘違いするとこうなっちゃうんだなあ。
でも、しょうがないよね、勘違い主人公なんだから、色んな事勘違いしないとただただ無自覚チートの事だけ勘違いしたらそれはもう勘悪い主人公だもんね……。
俺はそんなことを思いながら自分の魂をコピーして拳を拡大させた魂のクソデカナックルパンチをぶちかまし爽やかに笑う無自覚チート主人公、トレスを見ていた。
うん、イケメン。
そして、その周りには目を輝かせているどころか、輝きを失い死んだような目で爽やか主人公を見つめる二人のヒロイン、ヒナとキアラ。
何故こうもコイツは周りを見て行動できないのだろうか。いや、周りの反応が理解できないからこそ、己の強さに気づけない、最強無自覚チートなのだ。
だから、オッケー!
ゴメス的には全然オッケー!
だって、みんな無事だったし!?
トレスがとどめをさしたし!?
事件解決したし!?
まあ、大体原作通りでしょ!
キアラがトレスに同行せずにこっちに居て覚えるはずのない聖魔法を覚えて突然現れ暴れたトレスに引いててヒナが自分で戦うことを覚えてキーアイテムになるペンダントをトレスからじゃなくてゴメスからもらって突然現れ暴れたトレスに引いててなんだったらドウラもちょっと引いててなぜかトレスについていったシロもなんか引いてて本来原作で決戦の場となるところから離れててこのストーリーにかかわるはずのないキャルも一緒に倒しちゃってトレスが突然現れ暴れたというこれらは原作通りじゃないけど、まあ、みんな無事でトレスがとどめをさして事件解決したから大体原作通りでしょう、うん!
もう、寝たい……。ほんと眠い。
こちとら、ヒナを励まし続けて闇キャルに毒かまされていっぱい血ぶしゃあしたんだ!
眠いよ!
だが、一先ず、状況確認せねば。原作とのズレを出来るだけ知っておかないと。
「ト、トレス、お前SUGEEEなあ!」
「急に出て来てアタシたちの話も聞かず、問答無用でぶっとばしたもんね。すごいわ」
ちょっとキアラさん黙っててくれるかなあ!
「お前のSUGEEE一撃でキングデーモンがふっとんだぜ!」
「私もキアラも聖魔法使えるんでぶっとばせましたけどね。『ヒナは危ないから近寄るな』って私をどう思ってるんですかね」
ヒナさん! ヒナさんの言いたいことも分かるけどちょっと黙ってて!
「そ、そうだ! SUGEEEと言えば! トレス、お前、今、一瞬でここにやってきたよな!? 『ペースト』って聞こえたけど、アレは新しい魔法か!?」
「え? あ、ああ、そうなんだ! カット&ペーストっていう存在を切り取って、別の場所に貼り付けることが出来る魔法を覚えたんだ」
やった、原作通り!
「お、おおおおお! トレスSUGEEE!」
「「ふーん、すごいわねー(ですねー)」」
ちょっと、女子ー! あからさまにテンション下げるのやめなよー!
実際すごい魔法じゃん! 本人に引いてるからって魔法には引かないでよ!
カット&ペーストがかわいそうでしょ!
「そ、そんなSUGEEE魔法どうやって覚えたんだよ!」
そう、気になるのはそこだ。原作では、好感度を上げきり同行していたキアラといやーんなことを致して覚醒していたはず。まさか、まだ好感度上がりきってないと思っていたシロと?
と、思ってシロを見るがどうやらそうではない様子。シロは名前の通り白い目でトレスを見ている。
「え、えええと……実は……」
「トレス、言いづらいだろうからボクが言ってあげるよ。トレスはね、旅の途中で知り合ったかわいい女の子とえっちなことしたんだよ!」
「「「EEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!?」」」
シロの話をまとめるとこうだった。
トレスとシロ、楽しい二人旅。
途中立ち寄った大神殿手前の街で魔物の襲撃。
そこに居合わせ一緒に戦っていた冒険者の女性をトレスがチートスキルで助ける。
女性キュンからの猛アタック。
で、トレス陥落。致す。覚醒。
神の強制力だろうか。流石にシロとのストーリーが進んでないから誰かキアラの代わりをあてがったとか……。
まあ、ぶっちゃけそういうお話もある。助けてすぐにキュンして致すハイテンポなストーリーなんてたくさん読んできた。別にそれはそういうものだ。
だが、トレスと神よ。それはそういう世界だからアリなのであって、比較対象があったらもう駄目よ?
キアラはともかく、気持ちを積み重ねてきたシロや待っていたドウラからすれば……。
「はぁああ~、まさかこんなにアピールしてるのに他の女になびくなんて」
この浮気野郎が、となるか。
「儂の何がダメだったんじゃろうか……」
自分が愛されなかった理由を探してしまう。
はずコピのヒロイン達はチョロインではあるが、健気にトレスの為に尽くしてはいた。
そして、ちゃんと順番を踏んで愛し合おうとしていた。
なのに、やっちゃったかあ!
「そ、それで、その冒険者の女はどこに?」
「あ、ああ……それがな、オレについてきたい気持ちはあるけど、先にすませなきゃいけない用事があるからって、どこかへ飛んで行った」
飛んで行った。
すごく不吉なフレーズだ。
空を飛べるほどの魔法を使う人物なんて、とんでもないレベルの魔法使いだ。
すっごく嫌な予感がする。
「あ、あのー、トレス君? その、女性の名前は聞いたかな?」
「勿論! 彼女は、ディアナって言うんだ。紫髪の綺麗な女の子だったよ」
聞いてない。綺麗かどうかなんて聞いてない。
だが、これで確定した。
「ディアナ……? まさか、あのディアナか!? 儂を差し置いて妹と!?」
そっかそっか。
このあと登場予定だったシロの宿敵は倒しちゃったし、そのあとに起きるドウラ編でバチバチにドウラと戦うドウラの妹とは致しちゃったし、色々違うけど、まあ、みんな生きてるしオッケーオッケー!
みんな生きててトレスがモテモテチートでゴメスツルツルヘッドだからまあ大体原作通りだな! 異常ナシ! おやすみ!
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