第25話 そっと繋いで、OTETEEE!
「え、え、えーと、どうした? ヒナ?」
状況を整理しよう。キアラが凄い努力で聖魔法を覚えた。これはマジですごい。ウチでは、聖女であるヒナしか使えなかったし、世界中でも数人しか使えない魔法だったはず。まあ、トレスはコピーして使えるけど。
だから、俺が褒めた。ここまではいい。
そしたら、
「私だって、出来るようになるもん……」
ヒナが怒っている、という現象が起こっている。
ほわーい?
ていうか! ヒナが怒っているせいなのか、黒い魔力がどんどん上がってきている!?
二の腕まで上がってきてるんですけど!
「ど、どうした!? ヒナ!? なんで怒ってるんだ? 落ち着け!?」
「怒ってません……ただ、私だって出来るようになるのになあと思っただけです」
ヒナってこんな子供っぽかったっけ? かわいい。……じゃなくてぇえ!
「そ、そうだな! ヒナも最近すげえ努力してるし、元々頑張り屋さんだし! すぐ使えるようになるよな」
「……ほんとに思ってます?」
ヒナがめんどくさい女子になってる! どしてなんでなぁぜなぁぜ!?
何故か上目遣いでジト目睨まれしている俺、ゴメス。
黒い魔力が上がったり下がったりしてちょうきになるんですけど!
「ももももちろん、思ってるぜ。ほほほほら、ヒナって、毎日ちゃんと朝早くに起きてお祈りとか行ってるだろ。ああいう事を習慣的にちゃんと出来る人間ってのはすげえと思うし、努力の能力があると思うんだよな。それにヒナはちゃんと人の話を自分の中に落とし込んで考えることが出来るだろ。だから、うん、絶対、うん、出来ると思うなあ!」
もうとにかく褒めるしかねぇえええ! 少しでも自己肯定感を上げて黒の魔力を下げて!
ほら、ヒナ黒下げて!
「でも……私、すぐに落ち込んじゃうし……」
ヒナァアアア! 黒上げないで! 黒下げて! って、旗あげゲームじゃねえんだよぉお! なんかヒナ、黒の魔力を利用して褒められようとしてない!?
『ク……女ァア! 貴様……!』
「ちょっとあなたは今黙っててください」
『グワァアアア……!』
ああ! 黒下がる! ヒナの睨みで黒下がる!?
「ちょ、ちょっと! ヒナ!? ゴメス! アタシはどうしたら?」
「キアラはちょっと、その聖魔法を私によく見せてください」
そう言って近づいて、キアラの聖魔法の魔力をじっと見つめるヒナ。
キアラもヒナの迫力に圧倒されてかじっとしている。
『グアア! この魔力は聖属性の魔力は……女! この魔力をワタシに近づけるナァア!』
「もう集中したいのにうるさいですね。……あ。ゴメスさん、ちょっとこっちの手を握って押さえておいてくれませんか。私、聖魔法覚えるので」
もう原作皆無。あんなに恐ろしかったキングデーモンがちょっと元気すぎるトイプードルくらいの扱いに。だが、まあ、流石にヒナが聖属性の魔法の適性があると言ってもすぐには覚えないだろう。フラグっぽいが大丈夫だろう。トレスが帰ってくるまではなんでもいいから時間を稼ごう。
え? 俺、この思考回路であってる? なんか一晩中寝ずに褒めてたから脳が働いてないな、これ。
ひとまず、俺は圧ある笑みのヒナの黒い方の手を握る。
「ちょ、ちょっと! なんでヒナの手を握ってるのよ!」
「え? だって、ヒナが握っておけって。キングデーモンを押さえてほしいから」
何言ってるんだ、キアラは? 手を握ったら時間が稼げるんだから手を握るだろ。
ん? 眠すぎてだんだんわけわからなくなってきたな。
「……もう、ソイツコロすわ。アタシの聖魔法で」
俺が握ったヒナの黒い手を睨みながらキアラが聖属性の魔力を纏った手のひらを向けてくる。
いやいやいやいや! コロしちゃダメだ! だって、キングデーモンを殺すのはトレスで! トレスが帰ってくるのが原作通りで、原作通りにしないとゴメスのハッピーエンドが遠ざかるわけで! だから今はヒナの言う通りにして、ヒナが聖属性魔法を覚えるのに協力して……ん? でも、原作ではもう少し後で聖属性魔法を覚えるけど、でも、キアラが聖魔法を覚えてる時点で原作ではなく……原作は原作だけど、まあ、ほら、実写化したらめっちゃ改変されるし、アニメとかも監督とか脚本とか作画とかほんと当たりはずれもあるよねって俺は何を今考えてる!?
ええい とりあえず!
今は、キアラを押さえる! よくわかんないが多分それが一番いい気がする!
俺は、こちらに向けていたキアラの手をとる。
やめて、キアラ! まだヒナが聖魔法覚えているでしょうがぁあああ!
「な……ゴ、ゴメス……急に、そんな……!」
なんかよく分らんが急に乙女の顔になって眉間の皺がとれたキアラはかわいい!
そんなことを思った瞬間、俺の身体に衝撃が走る。
「あばばばばば!」
「な……アタシの魔力がゴメスに!?」
「ゴメスさんを通って、こちらに!?」
『グギャァァ……!』
キアラの聖属性魔法が俺の身体を通過して、ヒナの身体に流れ込んでいく。昔バラエティででんじろ〇先生の電気実験でこういうのあったな……っていうか、キングデーモンが小さく悲鳴を上げている!? 大丈夫か!? キングデーモン!
『ふ、フフフ……この程度の魔力ならば……! まだ耐えられル!』
おお! すごいぞ! キングデーモンさん! すごいぞ! キングデーモンさん!
負けるな! 勝っても欲しくはないが、とりあえず、消滅だけは避けてくれ!
「はぁあああ~……ゴメスさんから私の中に魔力が注がれています……はぁん!」
ちょっと、ヒナさん! えっちなお姉さんな感じで言うのやめて! ゴメス反応しちゃうから!
「ちょ、ちょっと! ヒナ! か、勘違いしないでよね! アタシのがゴメスに注がれてるのよ! んんんんっ~!」
キアラちゃんっ! キアラちゃん! やめて! その言い方! ツンデレ感出して可愛く言ってもダメなものはダメ!
『グァァァ……!』
キングデーモンちゃんっ! がんばって! 負けないで!
なんだこの状況は!? なんで俺は、ヒナとキアラとおてて繋いでんの!?
そんで、なんで二人とも喘いでんの!? いや、三人か!?
カオスだよ! こんなの! おぢさん、もぅたぇられなぃよ!
『も、もう無理ぃイ!』
と、その前にキングデーモンちゃんの泣きが入って、暴れだした!
消滅の恐怖のせいか一段と暴れっぷりがすごい! 二人に怪我させるわけにもいかない!
俺は必死に手を握る。
「ぐぅううおおおおおぉおおおおお!?」
いや、無理ぃいいい! ただでさえゴメス力ないのに、もうへろへろなんですけど!?
徐々に力負けして俺はがくがくと揺さぶられる。だが、どんなに弱い力でも俺が握っている限り、ヒナやキアラを攻撃は出来ないだろ!
俺はとにかくどんなに身体を揺さぶられても離さない! 二人に怪我はさせない!
「くぅううう! ゴメスさん、危ないから離してください」
「ゴメス! アタシがなんとかするから離しなさい! 危ないわ!」
『離セ! ゴメスゥウウ!』
キングデーモンさんまでなんか俺の名前覚えてるんだけど! いやだ! 絶対に離さない! こうなりゃ意地でも離さねえぇええええええ!
と、その時だった。
俺の懐から飛び出す何か。
「あ……!」
声を上げたのはヒナだった。ソレにヒナが最初に気づいたのはやはりそういう運命だったのだろうか。それは、聖母の姿が彫られたペンダントだった……。
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