第23話 そのツンデレ、KOEEE!
『クソ……! ココまでこノ女が粘るとハ……予想外だ……!』
ヒナの右腕が邪悪な魔力を纏い黒く染まり独立した動きをしている。そして、よく見れば手に口が。
どういうことだ……? 原作と違うんですけど!? 原作であれば、全身を乗っ取って、普通に喋っていたはず!
『手しか乗っ取れなかった……! 蒼の月夜であればと思ったが、クソクソクソ!』
なるほど。全身を乗っ取るのは諦めて、手に集中したわけか。キングデーモンも涙ぐましい努力でヒナの意識を奪って原作に戻そうとしているんだな。だけど!
「ちょっと待て……!」
俺は暴れる手を必死に抑えようとするヒナに近づく。
「ゴメスさん……こっちに来ちゃダメです! この右手……私の意志とは関係なく……!」
『女ァアアア! 貴様の意志などいらぬ! とっととその体をワタシに渡せェエエ』
黒い右手がヒナ自身を狙う。俺はすかさずその右手を掴み押さえつける。
『ヌウ!?』
「ゴメス、さん……?」
「待て……待て待て待て待て!」
まだトレスが来てないでしょうが!
もう結構話は破綻し始めている! それはもう仕方ない! 俺が色々やっちゃった! 『え? 俺なんかしちゃいました?』なんて言えないレベルでやっちゃった! 理解してるよ! だって、俺イカれたレベルの鈍感主人公じゃねえから!
だけど、基本的に主人公しかボスを倒せねえ無理ゲーストーリーなんだ!
主人公を、トレスを待て! 倒されるべき敵!
「ふんぐおおおおおおおおおおおおおおおお……!」
俺はヒナの右手を全力で押さえつける。多分、顔は激やば気持ち悪いふんばり顔だ。
をっさんだもの。鼻水も出てきてるし。
「ゴ、ゴメスさん……!」
「ヒナ! 負けるな! こんなヤツに! がんばれ!」
マジで頼むマジで頼むマジで頼む!
今、キングデーモンを本気で押さえつけられるのはヒナの心しかないんだ! ゴメス右手を押さえるだけで鼻水ぶしゃあのクソ涙目だから! マジでゴメス攻撃力カスだから!
「は、はい……」
ヒナも左手を添え押さえつけながら、心を落ち着かせようとしている。
だが、
『邪魔を……するなァアア!』
キングデーモンもがんばるなあ!? 力では下から数えた方が早いゴメス・ヒナの二人では押さえきれそうにない。かなりの力で暴れだすヒナの右手。
「う、うおおっ……!」
「きゃあ……!」
ヒナが小さく悲鳴を上げた瞬間、バランスが崩れ、俺とヒナの目が合う。
「あ……!」
ヒナのやさしそうな少し垂れた目。大きな瞳がもうすぐそばにあって吸い込まれそうで……え? これ、なに、偶然キッス?
「ヒ、ぅおおおおお!」
なわけもなく! キングデーモン大暴れで俺が吹っ飛ばされるぅうう!
「ぐえ……! げほ……!」
ゴメスの頑丈さのお陰でそこまでダメージはないが、派手に吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた。切り傷も少々。
キングデーモン、ほんとがんばるなあ。
ヒナは………怪我はしていないようだ。だが、
「ゴメス! 大丈夫、今、悲鳴が……!」
勢いよくドアが開かれ、キアラ登場。え? 助けを呼んでないのに?
早くね? もしかして、ヒナが心配でずっと近くで待機していたのだろうか。
「ゴメスッ!!!!! 誰にこんなにやられたの!?」
「い、いや……」
そんなにやられてない。ゴメスの力が弱いから派手にふっとんだが、頑丈さは鍛えたおかげもありピカイチなのでほとんどダメージはない。ちょっと背中を打ったくらいだ。あと、ゴメス仕様なのかすげー血は出てる。ただ、貧血になったことはない。ゴメス用血ート仕様だろうか。なんだ、その仕様。
だが、話を聞いてくれないキアラちゃん、部屋の奥にいるヒナちゃんに気づく。
「ヒナが!? ゴメスを……そんなバカな……」
勝手に読み取るキアラちゃん。まあ、正解なんだけど。ちょっと怒り方が強すぎる。
眉間に思い切り皺寄せて目が吊り上がっている。
俺は慌ててキアラを止める。
「いやいやいや! キアラ! ヒナがそんな事するはずないだろう!」
「いや、アレはきっとヒナの中にいるキングデーモンの仕業なのよ。とうとうヒナの意識を一部奪い取ったみたいね。ヒナはすごい魔力持ってたしキングデーモンは呪いでパワーアップさせたいに違いないわ。今、ヒナ自身が抑えているみたいだけど勝てるかどうか……それにヒナを直接攻撃したらヒナが傷ついちゃう……なんとかキングデーモンの魂だけ攻撃できれば……」
ん?
んん?
んんん?
んんんんんんんんんんんんんんん?
……………。
……………。
……………。
それ、俺の原作台詞ぅううううううううう!
いや、ちょっとは改変されてる。されてるがほぼ俺の台詞だ! お巡りさん、パクられました! どうしてキアラちゃん、なぁぜなぁぜ!?
「ん? どうしたの? ゴメス?」
「あ、い、いや、キアラ……その今の状況をよく把握できてるなあって」
ゴメスばりの無駄に長い説明台詞をつらつら言うなんて……マジで驚きだ。
第二のゴメスの座を狙っているのか? そんなの必要ないぞ! ヒロイン!
そんなキアラはちょっと顔を赤らめ唇を尖らせている。かわいい。
「アタシだっていっぱい勉強してるのよ。ゴメス物知りですごいなあと思ったから……アタシも勉強しようって……ね? えらい?」
ちらと横にいる俺を上目づかいで見てくるキアラ。かわいい。
ホメてほしそうにこっちを見ている!
「え、えらい!」
「ふ、ふふふ………」
うれしそうにしている! ヨカッタね!
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