第15話 このスキンヘッド、SAKETEEE!
幽霊屋敷で、守ってもらうからとキアラさんが誰の後ろにピタッとくっついているって?
ゴメスだぁああああああああああ!
キャアアアアアアアアアアア!
「ゴメス、守ってね。ね?」
キャアアアアア!
カワイイィイイ!
だけど、イヤァアアアア!
なんで、主人公じゃなくて、スキンヘッド解説おじさんの方に来るのさ!?
いや、知ってるよ! 俺が悪いよ! 俺が励ましたせいだってことは分かってるよ!
だけど、こんななると思わないじゃん! だって、スキンヘッドのおじさんだよ、ゴメス!?
いや、まあ、実際の現実世界では、スキンヘッドのおじさんがモテてる例なんていくらでもあるけれど、フィクションの世界では本当に少ないじゃん! クソソソが、金髪ショート美人の無限エネルギー美女とケッコンしたりしてるけどさ!
「あ、か、勘違いしないでよ! 壁にすればいいと思ってるだけだから!」
はい、ツンデレ乙~。
「で、でも、守ってくれたらアタシが魔法でアンタを助けてあげるから。アンタにはいつもお世話になってるし……」
はい、ツンデレ乙! 乙! 乙乙乙!
この子キアラさん、今頬を桃色に染めているの……。
イヤァアアアアアアアアア!
もし、この原作から外れ始めたこの話をどこかで見ている読者的存在がいるならば、こう思うだろう。
『もうキアラ受け入れちゃえばいいじゃん』
そりゃフィクション的にはアリだよ! だけど、俺は現実を知っているんだ!
何を隠そう前世の俺には彼女がいたことがある! しかも、結構かわいい! ふはははは! どうだ悔しいか、もしかしたら俺を見ているかもしれない、神様、もしくは、読者的存在よ!
まあ、二週間だけどな! ……しょぼん(´・ω・`)
何故二週間だったのか。
理由はいくつかあるがその一つが、彼女が可愛すぎた事だ。
惚気ではない。だって、別れたもん。
付き合い始めた頃に、よく言われたのが『なんでアイツがあんな可愛い子と……?』だ。
ラブコメでありがちなアレ。
そういう場合大体、ラノベとかだとヒロインがムキになって『あんな人たちのいう事気にすることありません! 私は〇〇君の事大好きですから!』でどっきどきらぶらぶシーンになるわけだ。
だが、現実は違う。結構彼女もそれにダメージを受けるし、疑問を持ち始める。
『あの人のどこを好きになったんだろう』と……。
だが、彼女を責めないでほしい。あんなメンタル鋼ヒロインなんてレアメタルだ。
そして、こっちはこっちであまりにも言われるし、視線で物語られてるからメンタルにクるのだ! 豆腐メンタルはぐっちゃぐちゃ。
そして、別れた。
そして、ラブコメラノベにハマった。
やっぱりフィクションは最高だぜ、と。
じゃあ、はずコピもフィクションだからだいじょぶじゃね?
どこかで見ている読者的存在はそんな風に思っちゃったんじゃねえの!?
だが、俺はリアル経験者なんだ!
キアラと仮に付き合い始めても俺は多分コンプレックスで苦しむ。
だって、ハゲでおじさんでただ頑丈でヨイショと解説が得意なだけのおじさんなんだぜ?
無理だ。
まあ、ただ嬉しくないわけではないのでキアラとはいいお友達でいたい。
それに、キアラはアレからより一層の努力を重ねている頑張りやさんだ。
おじさん、応援したいよ。
「わかった。じゃあ、キアラがピンチになったら俺が囮になってやるよ」
「囮なの? ふふ……かっこわる。でも、ありがと、ゴメス」
キャァアアアアアア!
かわぇぇ……。
一方、フラれたトレスさんはこっちをちょっとうらやましそうに見ているが何も言わない。
「トーレスッ! ボクにその腕貸してよっ!」
はい、シロたん、ないす~。
シロがすかさずキアラの為に伸ばした腕に絡みつく。
シロとしてはライバルが減ってしめしめくらいのものなんだろう。
ドウラも逆側に回って腕を絡めてしなだれかかっている。
「ほーら、どうじゃ、トレス? こんな胸のデカい儂を番にしたくなってきただろう?」
「む? トレス、ボクがいっちばんお金持ってるし、まだまだ成長期だから胸も大きくなるよ」
うむ、キアラの台詞はないが物語は順調に進んでいるようだ。
「ひゃっ……ゴゴゴゴメス、その、近くにいていい?」
キアラが俺の服の裾をつまんでくる。
ちょっと順調じゃないようだ。
フレィバァアアアアアアア!
ああー、すっげえいい匂いがするんですけど~!!!!
しょうがないじゃん! しょうがないじゃん! 俺は欲望に忠実なんだよ!
しょうがないじゃん! あんな致す方法は知ってて直ぐに致せる癖に、うぶうぶな雰囲気出すむっつりスケベ主人公とは違うんだよ!
だから俺は言う! 正直に言う!
「キアラ、キアラの匂いが良すぎてちょっと俺今、えっちな気分になっちゃってる」
「………………」
「………………」
「はぁああああああああああああああああああああ!? ばかゴメス! ばかゴメス! ばかゴメスゥウウウウウウウウウ!」
イタァアアアアアアア!
ばちこんとビンタの音が響き渡る。
こんな時でもちょっと褒めちゃう己の性が憎いぜ……。
だが、キアラが怒ったし離れたし、ゴメスらしさも残せたし、良かったんではなかろうか。
あとは、トレスがヒナを心配すれば、良い感じの距離感に。
「ふ、ふふ……」
横を見ると、ヒナが笑っている。お上品に口元に手を当てて。
「ヒナ?」
「あ、ごめんなさい。なんだかキアラとゴメスのやりとりを見てるとおかしくて……ふふ。でも、ゴメスさん、なんでも正直に言うのはよくありませんよ。折角最近キアラとなかよしさんなんですから」
「なかよしじゃないもん!」
キアラの突っ込みが遠くから飛んでくる。
そして、ヒナが近づいてくる。とてもよいにおいがします。
フレイバァアアアアアアアアアア!
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