第14話 この原作破壊、KYAAAA!

 オレ達は美人受付嬢のリリアナさんに頼まれて、今度は、幽霊屋敷と呼ばれている廃墟に来ていた。


 幽霊屋敷だなんて本当は嫌だったんだけど、リリアナさんが『トレスさんにしか出来ないんです! お願いします! もし、依頼受けてくれたら、うふふ……』とか言って迫ってくるから思わず引き受けちゃったよ。

 オレのスキルは外れスキルだって言ってるのにリリアナさん、全然分かってくれないんだもんなあ……。あと、リリアナさんが凄い抱き着いて頼んできてすっごくやわらかかったからどきどきしちゃったよ!


「おい、トレス。ついたぜ、ここが幽霊屋敷だ。元々は、とある富豪が住んでいたらしいんだが、そいつがまあ悪党でな。ドレイなんかをいっぱい飼って、ひでえ事をしてたらしい。悪魔の研究をしているとかいう噂もあったなあ。それで天罰が当たったのか、その富豪も死んじまって、そんな屋敷を買いたいやつもいなくてこんな風にボロボロになっちまったらしい」


 ゴメスが教えてくれた。


 うわ、しかし、なんだか本当に嫌な雰囲気だな……。お化けが出てきそうだ。


「ななななんか、怖いわね……」


 キアラが震えながらオレの腕に抱き着いてくる。


「って、キアラ、ちょ、ちょっと!」

「はあ!? なによ、文句あるの? な、なによ……ちょっとはアタシの事、意識しなさいよ」


 キアラがなんか言ってるけど、抱き着いた身体の柔らかい感触でそれどころじゃないんだけど!


「ふーん、じゃあ、ボクはこっち側! えへへー、トレス~」


 シロがなぜかキアラに対抗して、逆側の腕に絡みついてきた。やっぱりシロもやわらかいし、すっごくいい匂いがして、すっごくドキドキするんだけど!


「ほう、ならば儂はこうじゃ!」


 そう言って、ドウラが後ろから抱き着いてくる。頭が胸の間に挟まって大変なことに!


「ほーら、どうじゃ、トレス? こんな胸のデカい儂を番にしたくなってきただろう?」

「む? トレス、ボクがいっちばんお金持ってるし、まだまだ成長期だから胸も大きくなるよ」

「ちょちょっと! トレスが一番最初に見つけたのはアタシなんだからね! 順番は守りなさいよ! トレスは、アタシの胸は……どう?」


 あーもう! みんな、そんな事言われてもオレは困るんだってばあ!

 オレはそんなことを考えながら、ふと気づいた。いつもだったらヒナが『うふふ』って言いながら、オレを守る振りして思い切り前から抱き着いてくるのに、今日のヒナは元気がない。


 どうしたんだろう?


「トレス、敵よ!」

「なあああああああああああああ!? アレは、ヘルゴースト!? ゴーストタイプの最上級モンスターじゃねえか! 俺じゃ一匹倒すことも難しい強力なモンスターがなんでこんなところに! ああ! ゴーストがトレス達のところに! お、おい! トレス、逃げろ!」

「うーん……ちょっと今考え事してるから静かにして、コピー〈メガファイア〉」


 ぼぼぼぼぼぼぼぼおおんん!


「なああああああああああああああ!? 一撃でヘルゴーストを!? トレス、すげええええええ!」

「やれやれ……そんなに強いモンスターじゃなかったよ。だって、オレの外れスキルで倒せたくらいだし、ゴメスは大げさだなあ」

「いやいやいやいやいやいや!」


 それより、ヒナの事が気になるなあ。なんか、この屋敷、妖しい気配を感じるし、大変なことにならなきゃいいけど。


「ヒヒヒ……! ようこそ、強き者ヨ……!」

「な……! いつの間に……それに……あの黒い目に、薄桃色の肌、翼と爪……アレは悪魔じゃねえか! しかも、見ただけで分かるぜ、アイツつええ! 魔王級の強さだ! トレス、逃げた方がいい!」

「いや、倒そう。アイツがいつ悪いことをするか分からない。だったら今倒した方が早い」


 それに、ゴメスは大げさに言うけど、オレにはそこまで強い奴には見えないんだよなあ。

 オレの外れスキルでも倒せそうな雰囲気の敵だし。


「我はキングデーモン。人の弱さが好物の悪魔だ! さあ、かかってこい! 外れスキルもちの雑魚がぁあああああ!」

「みんな、行くぞ! アイツを倒してヒナに笑顔になってもらうんだ!」



 以上、原作の展開ナリ。


 ヒナとトレスの仲がより深まる『幽霊屋敷編』は、幽霊屋敷に居たキングデーモンとの戦いになる。キングデーモンがこの後召喚したヘルゴーストとデスゾンビの集団に襲われるが、トレスが聖水を大量に〈コピー〉して、ぶっかけて撃退。

 キングデーモンもトレスに手も足も出ないままやられるが、こっそり一番心の弱っているヒナの影に逃げ込む。


 そして、ヒナの『トレスのアイテムコピーの力で回復魔法が必要なくなったこと』や『キアラやドウラ、シロの戦闘能力よりも自分がはるかに劣っていること』という悩みに付け込んでヒナの心を奪おうとする。

 それをトレスが自分の魂だけをコピーして、ヒナの中にいるキングデーモンを撃退するという話だ。


 ……まあ、言いたいことは15個くらいある。

 だが、こういう話なのだ。仕方がない。


 とにかく、ここではトレスがヒナを助け、よりトレスに惹かれればいい。それだけだ。

 俺は原作に忠実です。ハリウッド版どうしてこうなった実写化みたいな事や金や上映時間・事務所絡みでストーリーぐっちゃぐちゃの原型なしみたいなことはしない。原作に忠実にしたい。


 だが、既に嫌な雰囲気が漂っている。


「キアラ、大丈夫? 怖かったらオレの傍にいてもいいからね」

「あ、大丈夫。アタシはゴメスに守ってもらうから」


 これである。

 この子キアラさん、今ゴメスの後ろにいるの……。


 キャアアアアアアアアアアア!

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