第4話 ヒロイン達、全員KAWAIII!

「トレス、アンタすごいけど抜けてるところあるんだから無茶しちゃだめよ!」

「ふふふ、無茶はしてほしくないですけど、怪我をしたらすぐに治療しますからお姉さんのところに来てくださいね」

「ボクのアイテムでもいいよー! ただし、お礼はちゃんと、ね?」

「か、勘弁してくれよー」


 黒髪の青年が三人のカワイイ女の子達にかこまれたじろいでいる。

 それを遠くで羨ましそうに見つめ、青年のモテっぷりをAGEするおっさん、こと、ゴメスです。どうも。いや、これは飽くまで役割としてね。だから、悔しくなんてないですよ、全然。


『外れスキル〈コピー〉で無能扱いされ追放された俺、実は最強のスキルの持ち主らしいんですが、いやいやそんなはずないだろ?』、通称はずコピの一巻の表紙にはこの作品のヒロイン3人が大きくそして超絶可愛く描かれており、その表紙に惹かれて買った人間も多いだろう。前世の俺もそうだった。表紙のトレス? あんま覚えてない。ちなみに表紙に入れてもらえなかったネタでミニキャラで背表紙に1人でポツンといた。それが、ゴメス。


 表紙で一番大きく描かれているのが、王道ツンデレヒロインの女魔法使いキアラだ。

 金髪ツインテール、気の強そうな吊り目、ルビーのような瞳、その服どういう構造スバラシイネという不思議な胸の所だけ膨らんでいる魔法使いというより落ち着いた魔法少女みたいな服を着て手を腰に当てている美少女。ちなみに胸は結構ある。

 それが、キアラだった。

 ちなみに、キアラはトレスが追放されギルド試験に合格して最初の薬草取りクエストの時に、油断してゴブリンにいやーんな目に会いそうな所を助けられて、『いや、俺は大したことはしてない』と謙虚な姿を見せられて即おち、惚れているはずだ。


 一方その頃ゴメスである俺は、記憶を取り戻し、今後の身の振り方を考えていた。


「トレス、大丈夫? アンタ、さっき黒竜にいっぱい魔法使ってたし、その、疲れてるんじゃない? ……ひ、膝枕とかしてあげようか!?」


 ルビーのような真っ赤な瞳と同じ位顔を赤くして照れているキアラ。

 うむ、かわいい。


「じゃ、じゃあ、お願いしようかな」


 そして、遠慮なくお願いする主人公、トレス。君、魔力無限だよね?


 それをニコニコ笑顔で見ながら近づいていくのが癒し系巨乳お姉さまキャラの聖女ヒナだ。

 銀髪ストレートロング、胸、エメラルド色で垂れ目気味の穏やかそうで色気を感じる目、胸、その服どういう構造ありがとうございますという巨乳が強調される神官服に、謎のスリット。おい、教会仕事しろとか言わないよ絶対ありがとうございます。とにかく最高なお姉さん。ちなみに、巨乳。

 それが、ヒナだった。

 ちなみにヒナはキアラを助けたあと街をぶらついているトレスと出会い、その後教会の孤児院が悪人に騙され奪われヒナ自身もいやーんな店で働かさせられそうになっている時にトレスが金をコピーすることで助けられ、『いや、俺なんて礼を言われるようなことしてないんだけどな』と言われ即おち、惚れているはずだ。トレスについてきたキアラも惚れ直している。


 一方その頃ゴメスである俺は、物語正規ルートを守るために色々準備をしていた。


「トレスさん、身体もお疲れでしょう。私が回復魔法を併用したマッサージをして色んなところを元気にしてさしあげましょうか、うふふ」


 とろんとしたエメラルドアイを妖しく輝かせ、巨乳が強調されるような腕組み頬杖をしているヒナ。

 うむ、セクシー。ていうか、いやんなマッサージじゃないか。


「色んな所!? いや、そんなわけないよな! じゃ、じゃあ、お願いしようかな」


 そして、遠慮なくお願いする主人公、トレス。君、回復魔法コピーしてるよね?


 そんな3人のやりとりをほっぺたをぷくーと膨らませて見ているのが一人。

 俺じゃあない。俺、ただのスキンヘッド親父ゴメスがぷくーしてもかわいくねえだろ。

 3人目のヒロイン、女盗賊シロだ。

 水色のボーイッシュなショートヘアーに、零れ落ちそうな程まん丸で大きな水色の瞳、女の子な上に冒険者なのにそんな足出すんじゃありません敬礼! というくらいのショートパンツを履いている元気っちっちゃい子だ。ちなみに、びにゅう。

 それが、シロだった。

 ちなみにシロはギルドの実力者だけ集められた盗賊団壊滅作戦の前に偵察に来ていた時にトレスと出会う。そして、偵察と気付いていないトレスに優しくされてキュンしちゃって、その後、裏切り者扱いされいやーんな罰を与えられそうになっている所を救われて、『俺はただ君のことを助けたかったんだ』と言われ即おち、惚れているはずだ。トレスについてきたキアラは惚れ直し直しし、ヒナは惚れ直している。


 一方、その頃ゴメスである俺は、オチで3人にモテるトレスとのギャップを見せるために、三人のガチムチ盗賊に追いかけ回され『うおーい、トレスー! 俺も助けてくれー!』と言っていた。


「じゃあ、ウチはトレスの抱き枕になってあげるっ! きっと抱き心地いいよー」


 無邪気な笑顔で膝枕とマッサージをされて寝転んでいるトレスの腕の中に潜り込むシロ。

 うむ、犯罪的。



「シ、シロ、これはそのなんかよくないよ!」


 そして、そう言いつつ、やれやれ仕方ないかとシロを抱きしめる主人公、トレス。君、ほんとうに純真な心を持った少年?


 嫉妬に震える俺、ゴメス。これは本心だが、ストーリーにのっとった行動でもある。

 何故なら……。


 どがあん! と黒竜が倒された方から轟音がして、俺はその衝撃で吹き飛ばされ、壁にめり込む。なのに、死なない。それがゴメス。


「ぬわああああ! 負けた! 負けたぞ! やるなあ、お主! 黒龍である儂を打ち負かすとは気に入った! 儂の名はドウラじゃ!」


 そう叫びながら現れたのは二巻表紙に登場する人化した竜の美女、4人目のヒロイン、ドウラだ。

 赤紫髪のポニーテールに、赤と金のオッドアイ、八重歯のような牙に、それってポロリしないんですかという真っ黒なはだけた着物を着ているアジアン美女だ。ちなみに、胸は相当大きい。

 それがドウラだった。


「よし決めたぞ! お主を儂の番とする! さあ、子を為そうではないか!」

「こ? 子ぉお!? いや、お、オレは……」


 手でドウラを制そうとする割には逃げようとはしない主人公、トレス。君、コピーした魔法使えば絶対に逃げ切れるよね?

 だが、それより先に3大ヒロインが前に出る。さっきボッコボコにされた黒竜相手に急に強気。


「ちょ、ちょっと! 何急に、こ、子作りとか言ってるのよ! アタシは認めないわよ! ねえ、ヒナ?」

「そうねえ、キアラの言う通り。順番は守ってもらわないと~うふふ。ねえ、シロ?」

「そうだそうだ! 絶対ウチの後な! やーいざまぁ!」

「ぬぅうううう! なんじゃお前らぁああ!」

「これからもっと騒がしくなりそうだなあ。俺なんて外れスキル持ちなだけなのに。はあ~やれやれ」


 あきれ顔で溜息を吐いているだろうトレスが駆け寄るヒロイン達の主人公争奪戦。

 それらを壁に突き刺さったまま、尻で聞く男、それがゴメス。

 壁に刺さったままで言うべきことはひとつ。


「おぉ~い、みんなぁ~、助けてくれぇ~」


 オチ要員、それが、ゴメスだった。

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