陰心 中編

「…きて、起きて。」


私は、いつもの部屋で起きた。生きてる…?それに、目の前の子は誰?


「…やっと起きた。自分で創っといて等の本人は気絶してるなんて、全く。これが他人だったらどうするのさ。」


「…あなたは、だぁれ?」


「まさか、覚えてない?」


…?知らない。こんな子。創った…?他人だったら…?一体どういうこと?それに、この子、私と見た目が瓜二つ。赤い目、ピンク色のショートヘアー、透き通るような白い肌。130に満たない小さい体。唯一私と違うところは、肩を露出する、雪のように美しい白いドレスを着ている。


「さっき、あなたが私のことを創ったんだよ。ここまで人間たちが運んで、一人になったところであなたは自分の負の感情を媒介にして私を創った。私の代償としてあなたはもう悲しみや怒りという感情を感じられなっちゃうけどね。まあ逆に私は嬉しさや楽しさを感じられない。」


「…私、人の作り方…?なんて知らないよ…?」


「多分、あなたは使えるんだと思う。でもあなたは自分の帰るべき家がどこかすらわからないように、その術を忘れてる。けど、あなたは死の淵で覚醒して、かろうじて私を作り出した。そんなところじゃない?」


…受け入れるしかないのかな。いくら反論しても覚えてないからわからない。本当にやったのかもわからないし、ただのそっくりさんかもしれない。でも、私がつくったって言ってるから、多分味方なんだろうな。


「とりあえず、話したいことがあるから、お風呂に向かおうよ。あなたが気絶している間に今日の仕事の時間は終わったよ。」


「…うん。」


ということで、お風呂。女の子はわりとすぐ殺されちゃうから、実質私達だけの空間。話したいことってなんだろうか。


「あなた、ここから逃げたいってずっと思ってるよね。」


「そりゃあそうだけど…」


「何故か、私はある程度の術式が使えるんだ。明日、一緒にここから出よう。ここの人間は、私一人で殲滅できるくらいには弱い。」


「…」


それは、私が心から望んでいた言葉。ここから出られるというその現実を、私は理解することができなかった。夢にも見たその事実、いきなり目の当たりにすると理解が追い付かない。


「出れ…る…の…?」


「うん。数分私に体を貸して。そうすれば、ここから出てあげる。」


「体を貸す…?」


「そう。私達は、同じ母体から分裂している。私はマイナスの感情、あなたはプラスの感情を媒介にね。だから、やろうと思えば合体することができる。今まではあなたが体を動かしてたけど、私が動かすこともできる。動かしてない方はただ眠るだけ。今はあなたに主導権があるから、私に体を貸してほしい。」


「…出れるなら、いいよ。よろしくね…えーっと、お名前は?」


「ないよ。でも、今つけちゃおうか。あなたの心の闇の部分から生まれたようなもの。闇こころとでも名乗るよ。」


「…うん。よろしくね、やみちゃん。じゃあ私は、対義語で、光こころって名乗るよ。」


「交渉成立だね。よろしく。こころ。」


やみちゃんは私に向かって、手を差しのべた。多分、手を繋ぐと私はやみちゃんの中に入って、体の主導権はやみちゃんに渡る。…後は、この子に全てを任せる。私はやみちゃんの手をそっと握る。


そうして、に体の主導権が渡った。

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