レンタル夜空

 ……そこには


 レンタルのを入力いただきました。レンタル夜空の権利が移譲され、引き続き10分間、夜空を独占してお楽しみいただけます

  

と、あった。


「ひゃあ」

 メグが叫んだ。

「ど、どういうこと?」

 タカを振り返ると、ニヤリと笑い返してきたかれの視線と交わった。

「え……? まさか、貴クンがレンタル夜空したの?」

 すると、タカは三脚のほうへ歩きながら、

「そうだよ」

と、答えた。

 ぼそり。

 ぼそりのあとには、グサリがつきものだ……メグは狐につままれたような顔のまま、三脚に近づいた。

「おやじの金だよ」

「え……やっぱ、生きてらしたのね……」

「ほら、おれを尾行してたのは、おまえやおまえの仲間だけじゃなかったんだ。おやじがね、おれの大学資金のために3000万近く用意して、どこかの弁護士事務所か雇った探偵さんに持たせてくれたようなんだ」

「え……? どこにいるの? お父さん元気なの? いまどうしてるの?」

 矢継やつばやにメグが言い立てた。

「どこにいるかなんて知らないし、知っていても言えない……誰かさんにリークされるから」

 そう笑いながら言ったあとに、タカはおだやかな口調のまま続けた。

「……ほら、はじまったよ。これ、おれからのみんなへのプレゼント。旅立つ君にもね」

「え? 知ってたの? あたしが海外に行くこと?」

「うん、逆探偵してもらったんだ……ほらほら、せっかくだから、そんなに喋ってばかりいないで、しっかり観たら?」


 すると、メグはこくんと頷いて、かれのとなりにそっと腰をおろした。

 引き続き夜空にはモザイクはなかった。

 いやむしろ、子どもたちが吐き出した歓喜の白い息と、メグの湿った涙のしずくが、ざわざわしずしずと立ちのぼって、タカの超望遠レンズをもやらせていたかもしれなかった……。


             ( 了 )

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レンタル夜空 嵯峨嶋 掌 @yume2aliens

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