第2話 家族を失った少年②

『ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 』


男は女の怨霊に向かい和歌をよんだ。

すると、周りの瘴気が一気に晴れた。


「あら、いい歌ね。貴方の自作かしら?」

「まじか、まだ全て咏んでないとはいえ無傷とは。

三大怨霊にも通用した歌だぞ。お前は一体なんなんだ?」

「ふふ、私はみーんなのお母さんよ」

「キモ」


そこからはとてもすごかった。

男が歌を詠めば、周りの瘴気が一気に晴れて、

女の怨霊が呪いの言葉を吐けば周りが瘴気に侵される。


「凄くきれい」


その時僕は、男の歌に引き込まれていた。


「おいおい、動きが鈍くなったんじゃないか?

案外、最初の歌が効いていたりしてな。」

「本当に生意気な子ね。いいわ、少し躾けてあげるわ。」

『思いやれ都はるかに沖つ波立ちへだてたる心細さを』

「これは崇徳天皇の歌?どうしてお前がその歌を?」


女の怨霊がその歌を歌った瞬間僕は気絶した。


「ふふ、そんな事を気にする余裕があるのかしら?」

「お前、子供を巻き込みやがって。」

「何を言ってるの?元々私の狙いはその子供よ。それを、貴方が邪魔しただけじゃないの。」

「それもそうか。だが、お前には退いてもらう。」

『ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれないに水くくるとは』


その歌の効果は素晴らしかった。先程まで女の怨霊の歌で、

呪われた土地と化していた場所が、神の住むような場所になった

そしてその効力は、女の怨霊にも届いていた。


「うぅぅぅ、中々やるじゃないの。」

「無理すんなよ、今にも消えそうだぜ。」

「ふふ、そうね、この体では、貴方に勝てそうにないわ。」

「この体ね、負け犬の遠吠えだな。おばさん。」

「本当に生意気ね。必ず殺すわ。」


そう言うと、女の怨霊は、消えていった。


「子供は無事か?...良かった息をしてる」


そう言うと男、在原業平は安心したように息を吐いた。


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