第2話 悪魔のささやき
「みなさん、今夜は、生まれ変わりたいと願ってる男女10人にお集まりいただきました。ようこそ。辛いこと、悲しいこと、変えようと思っても変えられないこと、いろいろありますよね。皆さんの辛い気持ち、よくわかります。私も、昔はそうでした。」
部屋には、うなだれて、人生に悲観した9人と、周りをキョロキョロ見渡している1人、そしてサラリーマン風の40代に見えるおじさんがテーブルの席に座っていた。怪我をして包帯を巻いている男の子、お腹を押さえて苦しそうな男性、涙で目が真っ赤になってる女性とかがいる。
そのおじさんは、10人と違い、自信ありげに意気揚々と話し、みんなの人生を変えてあげると語っている。
「人によっては自殺しようと考えてる人もいることはわかってます。でも、皆さんはラッキーでした。今日、私と会えたのですから。」
そう、10人とも、道を歩いているときに、このおじさんに声をかけられた。大きな悩みを抱えてますねって。そして、その悩みを解決してあげましょうって言われ、少しでも良くなればと思って、この部屋にきたんだ。
この部屋は、おじさんが話してる内容とは似つかない感じだ。壁は真っ白で、蛍光灯は白く、強い光をテーブルに当てている。まぶしいぐらいだ。魔法のように、暗く、怪しげな部屋だと思っていたが、爽やかな雰囲気は、おじさんの話しとのギャップが浮き立っている。
「人生を変えるかどうかは、皆さんが判断してください。今までの生活でいいと思う方は帰っていただいて結構です。でも、人生を変えたいという方は、今日は、そのチャンスを与えましょう。ただ、一回、人生を変えると、もう元に戻ることはできません。よく考えて見てください。」
そんな都合のいい話しなんてあるわけないだろう。何かの詐欺かもしれない。でも、もう失うものもないし、試すだけ試してもいいんじゃないかと思い、このおじさんについてきた。何も変わらなければ、帰ればいいし、問題が起これば、このおじさんを訴えることもできる。
その話しを聞いて、女性1人は帰ると言ってきた。他の9人はどうするか悩んでいたが、いずれも、このおじさんの力を借りて人生をやり直せるなら、やり直したいということになった。
「まず、そのままお帰りいただく方には記憶を消させていただきます。この青い薬を飲むと、道を歩いているうちに記憶がなくなり、ふと自分に気づくという感じになります。では、お飲みいただき、退出してください。で、他の9人は、この赤い薬を飲んでください。眠くなりますが、すぐに目が覚めます。そしたら、新しい人生に生まれ変わってます。」
「本当なのかな?」
「やばい薬じゃないんですか?」
「大丈夫です。さあ、信じて、飲んでみてください。」
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