第46話 謁見

 王都まで、あと半日のところまで馬車隊は迫っていた。要所要所で様子を見たりしていたので、状況は把握していたが、お義兄さまからの横やりは、入らなかった。と言うか未然に防がれていた。

 加納さんとリチャードが、セーフティルームのモニターを見ながらパラライズ弾で賊を無力化してくれていた。気配察知とマッピング機能が高度にインテグレートされ、どんな暗殺やテロ行為でも防いでしまう。ドローンやミサイルでも打ち落とせるようだ。もちろんミサイルは、発射前に処理するというが。

 認識阻害のスキルが高まると、こちらの情報を敵や敵になりそうなものが、報告・連絡・相談することもままならなくなる。

 カメラに写らなくなったり、媒体に記録することが不可能になるらしい。紙に書こうとしてもほかのことを書いてしまったりそもそも書けなかったり……。

 敵はこちらの能力を分析したり対応するのが難しかっただろう。同情を禁じ得ない。

 慶子ちゃんが、プロゴルファーなのに追っかけとか遭わない理由はそこにもあるだろう。

 それでいて道で倒れた時に助けて貰えないとか、知らずに車に跳ねられるとかないのもチートと言えるだろう。いい噂はできても、悪い噂が広まらないのだ。本当に都合が良い。

 まあそれはいいのだが、何故かティアリローゼ様が、ニマニマとしてセーフティルームに入り浸っている。入室をリモートでコントロールできるようになったので、セーフティルームがお迎えに行けるようになったのだ。パーティーリーダーである俺の許可がないと入れないから勝手にはできないのだが。

「ティアリローゼ様、王都の神殿にいらっしゃったらいいのではありませんか」

「ティアと呼んでほしいのじゃ」

「……今回大神官様には、危険はないわけですし」どちらかというと俺のほうが狙われている。

「今度の結婚式でお主とワシ(ティア)は、結婚したことになったのじゃ」

 何ですと?

「契約書がある」

 サインしてませんよ。

「大神官は、署名を代行できるのじゃ」

 ナニそれ。ズルい。

「以前は、故人同士を結婚させたこともあったのじゃ」

 ナニそれ。怖い。

「と言うことで我らの世界では、お主とわしとアスカとリチャードは結婚しておるのじゃ」

 えええ?

 サインしてませんよ。

 関係ないって?あるでしょうよ。

「これが婚姻の証の品じゃ」

 と、ティアさんは幼女のむちっと柔らかそうな左腕を見せた。そこには超高級な金剛石入りのお高い腕時計が燦然と輝いていた。ゲイトtoティアと彫られている。買い取りに影響しそうだ。

「これが妻全員のお揃いなのじゃ」

 信じられないことに、この二週間で買った腕時計の総額が二億を超えていた(泣)。

 ……。

 王都の貴族専用門につくと、家紋の入ったキャンピングトレーラーをめっちゃ見られた。

 車輪のジャリジャリ音もしないので、タイヤの辺りとかめっちゃ見られた。昼前の到着で、前後に並んでいる貴族がいたがめっちゃ見てきた。

 此の世界には、犬や猫がいないので車体の下に入り込まないのが助かるそうだ。馬車よりも地上高が低いため下が見にくいのだ。車体下部に爆弾を仕掛けられたら大変だ。爆弾がないけどね。

 王城の車止めに、キャンピングトレーラーを停めて、歩いていく。俺は先に降りてニコールさんをエスコートしている。

 俺は青く輝く髪を隠すために、アートネーチャンのカツラをかぶっている。何でもフィリピンで作られているとか。しかし眉毛、睫毛、瞳が同じ色に輝いているため、目立っている。

 この先は、わざわざ遠回りするような経路を通り、待合室に通された。武器など持っていないか調べられるが、当然持っていない。

 此の部屋は楽屋みたいなものらしく、いくつかあるようだ。カツラを外して見せたが、眩しいので、早く被るように指示された。さもありなん。

 一時間ほど、椅子に座って緊張していると、謁見の時間になり、俺たちを係のものが案内していく。階段を上がったり下がったりしながら進んでいく。

 高さ5メートル、横幅5メートルもある両開きの扉を押し開けると、50メートル先に玉座があり、ルシウス・アドリアーノ・セレスト三世国王陛下が座っている。その横にはエリアル第一王女殿下が澄まし顔で立っていた。

 部屋は奥のほうに細長い作りで、玉座に向かって通路のようになっており、左右には位の高い貴族がならんでいる。

 宰相が、朗々と通る声で「チャイルドマン卿前へ」と呼び掛けた。

「はッ」俺は陛下の顔を見ないように進み出て、玉座の手前に跪いた。

 ニコールさんやお義父さんは、貴族の列にならんでいる。

「先の魔物災害では、見事な戦いぶりであった。よって褒賞を行う。これからも民のため国のために励めよ」

「ははーッ」

 宰相が良く響く声で

「チャイルドマン子爵は、伯爵にしょう爵される。辺境伯相当の扱いとなる」

 とよばわった。

 辺境伯は、伯爵より少し高めに位置付けられる。他国との戦争など、自らの判断で行える。

 ルシウス国王陛下は、自らも武威に優れ、武闘派に共感する傾向がある。俺たちの武勇にも興味があり、後で義父上とお呼ばれしている(泣)

 後ろにはニコールさんやティアリローゼ様が並んでおり、腕にキラキラ光る超お高い腕時計を見せつけている。ニンマリとして悪い笑顔だ。

 対照的に玉座の隣でエリアル第一王女が歯噛みしながらガン見している。腕時計が欲しいのだろうか。コレお高いんだよね。大事なことなので何回もいいます。

 その後、国王陛下に色々と聞かれ、エリアル王女を正妻に迎え入れないかと繰り返し言われたが、間に合っているため丁重に断った。王宮に閉じ込められそうでイヤだったのだ。

 国王陛下も自由がないと嘆いておられた。

「ところで、良い馬車を持っているそうではないか。何台か売ってくれぬか」

 とりあえず一台差し上げることにした。

「綺麗な時計を持っているそうではないか。わしらにも売ってくれぬか」

 とりあえず一つ差し上げることにした(泣)

 

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