第42話 メンバー会議
年末にかけてあわただしくなってきたが、俺たちパーティーは、今年一年の振り返りをするために反省会をすることにした。
「どうしてここで反省会なんですかあ」
あ、慶子さんお怒りのようで。皆さん防寒のために、ダウンコートとか着ていらっしゃるようですね。
俺は、デザートカモフラ柄のダウンですね。本来冬は草木が枯れた色になるため、迷彩色と言ってもなかなか難しいですね。登山とかだと目立つほうがよかったりします。間違えて撃たれたりしないように。あるいは遭難したときみつかりやすいようにとか。いまはビーコンがないと見つけにくくなるので、携帯が推奨されたりですね。
この辺りが、サバイバルとサバゲーとの差異だったり、ミリタリーとアウトドアの差異もあったりする。冬山では白いアウターとスキー、白い銃のカラーリングなどなかなか興味深いですね。
また、ミリタリーでキャンプする人もそういないだろうが。ミリタリーでキャンプは過酷すぎる。北海道で陸自のサバイバルとか大変すぎるだろう。クモをとって食べるとか出来ますか。
ちなみに筆者の大学時代の先輩は、セミを食べたりしていた。「セミはアリほど苦くなくて美味しい」とのたまわっていた。土のなかで苦節ウン年の幼虫時代をすごし、地上に出てきて、羽が伸びきらない柔らかいまま炒めて喰われる無念さやイカほどに。
加納さんとリチャードは、何か暖かく過ごせるインナーみたいなのを着ているらしい。スッキリしている。上からコートを着ている。
ここは、都内某所の最恐心霊スポットの廃病院である。なかなか電気工事の人が入りたがらないらしく、ライトはバッテリーからひいてはいるが、さっきから意味不明の明滅を繰り返している。アモールは、何か見えるかのように天井や壁や窓をみて、唸り声をあげている。
アモールさんや、見えているのね、ね、そうなんでしょう。
「わし、ここは嫌いじゃないのう」
「そ、そうですか」
「なんじゃお主苦手なんか?」
「俺がと言うより得意な人がいるのでしょうか」
「私も苦手です」慶子さんは俺の後ろに隠れるようにしている。
「ここはの、魂や思念の通り道じゃな。人が多く生きて多く死ねばそういう所が出来るのは自明のことじゃ」
ティアリローゼ様、頼りにしてます。
大神官様の話によると、魂やエネルギー体の流れと言うものは一定ではなく、澱んだり、逆巻いたりするし、集まりやすいところが出来たりするようだ。
「しかし、ここは澱みが強すぎて流れ自体が呻き散らしておるようじゃ」
「何とかなりますでしょうか」
「一体わしを誰と心得とるんじゃ、大神官ティアリローゼ・クロード三世なるぞ」
ティアリローゼ様は、頼りになるのじゃロリ様であった。
「あれをもて」
「ハハーッ」
数体のじゃロリ女児像(立像)を収納から出すと、部屋のすみにおいて行く。ここは病院の集中治療室だったところらしい。
「これに聖属性を付与するのじゃ」
「ハハーッ」力を込めて、これでもかと付与していく。結界のようなものになるのだろうか。
「それでは、これから御霊を鎮めるぞよ」
ティア様は聖属性5倍の杖と、聖属性10倍×2のイヤリングを着けて祈りの言葉を紡いで行く。徐々に青い清らかな光が元病院だった建物を包んでいく。
「俺たちも撃つんだ」銀玉鉄砲でバインバインと聖属性マシマシのBB弾を撃ち出して行く。
まるで、天国のような清浄な明るさが真夜中の街を照らしている。そしてどこかから苦しげな声がこだましている。
「これから、此方は聖なる天国への道になるのじゃ。近寄る霊は幸せのうちに神なる国へ旅立てるであろうぞ」
空からあたたかな光の束が地上に降り注ぐ、天使が霊達を天へと誘っていく。
……。
「ここが新しい会社の敷地建物になります」
まだ建物は新しいため、基本的にリフォームするらしい。
加納さんとリチャードからこれまでの活動や会計について説明があった。
何と会社の総資産は、500億円あまり。税金なども問題なく納めており、優良企業とのことであった。やはりポーション類の取引をコンサルタント料として算定しているようだ。
次に慶子ちゃんから、来年の活動について簡単な説明があった。慶子ちゃんの活動には、俺とアモールがついていくことが多いので重要だ。
そして、アモールは色々なメンバーの姿に変われるようになったとアピールした。慶子ちゃんの姿になって見せたかったようだが、全裸は困るのでとめておいた。この頃慶子ちゃんは女神かと言えるほど神々しい完璧なプロポーションをしている。
ティア様からは、スタンピードの際俺が使った味方を強化し、若返らせる能力を使えるようになったと報告があった。20歳くらい対象者を若返らせたようだ。これをポーションに付与すれば、大変なことになりそうだ。
そして俺からは、ポーションや宝石以外にも付与できるようになったことを発表した。
「そして、あまり嬉しくないんですが…。羽が出せるようになりました。そしてゆっくりですが飛べます」蝶みたいな羽が出る。蝶みたいな羽にしては60キロ位出る。タケコプター程度ですね。モスマンかな?
「鯖田さーん、人間に戻って来てください」
人間です。実感はないけどね。
「鯖田さんは非常識ですね」
事象が非常識なのであって、おれ自身は至って常識的です。
「その羽とやらを出してみるのじゃ」
「じゃあ出しますね」
「「「眩しい」」」
それはそうだろう。いわゆるモルフォ蝶のあれである。
「早く閉じるのじゃ」
「はいはい」
「まさに神のお姿じゃ。死んだら全身くれ神殿に飾りたいのじゃ」
「嫌ですよ」
……。
「アスカとリチャードからは他にも言うことがあるじゃろう」
「……」
「仲間なのじゃ、話せばわかってくれるじゃろう」
「皆さんに黙ってテロ対策や紛争介入を行っていました。すみませんでした」
「……薄々みんな気がついていたと思うよ」俺は正直に話した。それに二人にはそれが仕事なのだろう。
「でもそれに甘えて、勝手に活動していたんです」
「それより今後の影響について考えるほうが良いと思う」
「いずれこの世界から異物として弾き出されるかもしれんな」
「ティア様……」
「その時は皆わしらの世界で暮らさんか。わしにとってはお主ら仲間が何より大事じゃ」
「ティア様ー」「キュピー」
メンバー以外でも転移させられるようになったことで、家族ぐらいは連れていけるかもしれない。それでも大勢は無理だろう。
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