第41話 クリスマスイブ
俺はクリスマスプレゼントを渡すと言うイベントが苦手である。
それで、誰から渡したらいいのか、悩んでいる。アモールからだと、同居する女性達に何か変な感じがするし、クリスマス会で渡すというのも子供っぽい気がする。
と言うことで、ニコールさんから渡すことにした。時差があるため12月23日22時頃に領主の館の執務室に転移した。季節は大して変わらないため、空気がひんやりしている。綺麗に掃除されており、机の上もソファーやローテーブルも埃ひとつない。
「キャー、旦那さま、神々しいです」
気配に気がついたメイドさんに、クリスマスの説明をして、日本で購入した4つのクリスマスケーキや、ケーキが綺麗に切れるという謎のナイフを渡した。スタッフやメイドさん達には、シュトーレンや日持ちのするお菓子の詰め合わせを一人一個ずつ執務室においていった。今日のお昼にケーキはいただくとのこと。わらわらと集まってきたため「いつもお世話になっております、感謝しております」と伝えた。ちょこちょこ来てはいるが(この場合帰っていると言うべきか)
執事さんや代行さんが挨拶にくる。俺の不在の間、本当にありがとう。何か必要なものがあれば言ってください。
その後、バタバタしてニコールさんがきちんと着替えてお化粧して執務室に入って来る。
「ゲイトさま、お帰りなさい」
「いつもありがとう。これクリスマスプレゼントです」
「ありがとうございます。何かしら」
「開けてみていいですよ」
こちらでは贈り物を目の前で開けることは、はしたないと言われるようだが気にしないようにいつも話している。
「うえ、これは真珠のネックレスでは」
「あ、お嫌いでしたか、他のが良かったですか」
「いえ、こんな粒の揃ったのは初めて見ました」
執事さんが震えながらいう。
「これ程の物は王室にもないでしょう。鑑定では国宝級とでております」鑑定もちだったようだ。
「ひっ、こんな貴重なものをいただいて」
ニコールさん、気の強いところが印象的だったので新鮮です。
「どうぞどうぞ、お納めください」
「これは、いよいよ私の身体でお礼しなければ……」
「あのう、執務の残りをしたいのですが、その後用事で日本に帰ります」
「むうー」ほっぺたを膨らませている。
「私も日本で暮らしたいです」
「まだ、家が狭いからスミマセン」
土地を買ったほうがいいんだろうが、資産は加納さんとリチャードが管理しているので、今度聞いて見よう。
「早く結婚したいです」
領主になった時に、婚約している形になっているらしい。
……。
俺は神殿に来ていた。
「な、なんじゃ。来とったんか」
のじゃロリのティアリローゼさんだ。パーティーメンバーだから、動きはわかると思うのだが。
「これクリスマスプレゼントです」
「異教徒の祭りか」
「そうですが」
「中身はなんじゃ」
「開けてみてください」
「これはイヤリングか、ん、ちょっとまて、聖金剛石に何か付与されておるな」
「聖属性魔法10倍です×2です」
「……こないだの杖が5倍じゃったろ」
「理論的にはその4倍ですね」
「神級宝具じゃろうな」呆れたようにいう。
「そうですか」
「女性に宝石のアクセサリーを送るのは求婚と考えられておる」
「知りませんでした、返して下さい」
「返す訳なかろうが」
……。
「わし、日本に行きたいのじゃが」もじもじしている。
「観光ですか、また準備しておきます」
「観光じゃないわ、馬鹿者め」
……。
その後日本の自宅に転移すると、もう午前中だった。
加納さんと、リチャードが俺を待っていた。
「今からセーフティルームをつかいたいのですが」
「また夕食前の18時まででいいですか」
「はいそれでお願いします」
ステータス画面に、宅配の希望時間を伝えるようなラジオボタンがでるのだ。🔘18:00とおすとよいのだ。
「その前にプレゼントがあります」
「えっ私たち用意してませんよ」
「加納さん、いつもありがとうございます。これ気持ちだけですが」
「わざわざありがとうございます」
「リチャードもいつもありがとう。これプレゼント。お二人とも資産の運用のことでは助かっています」
「こちらこそ、任せて下さってありがとうございます」
「鯖田さんの資産もかなり増えて来ましたよ。(ポーションのことでの)コンサルタント料が多いですね」
コンサルタント料金でとっているのか。
「開けていいですか」
「どうぞどうぞ」
「これは?ブレスレット?」
「そうです。加納さんには、聖属性光属性を付与したブレスレットです。MPをエイっと込めるとヒールやキュアや浄化が使えます」
「ありがとう、私に気があるのかしら」
「……リチャードには、認識阻害を付与したピアスです。リチャード(耳の)穴開いてたよね」
「鯖田さんイヤらしいですね。ピアスはいつもしてますけど」
「よ、良かった。MPをエイっと込めるとカメラにもうつりません」
「やった。鯖田さんありがとう」
……。
「鯖田さん相談なんですけど」
「なんでしょうか」
「会社の土地を買いたいんです」
「良かった。そろそろここも手狭と思っていたんですよ」
「ただ、その場所が都内某所の廃病院心霊スポットなんですけど」
テレビで特集やって、スタッフに死傷者が出たいわくつきの物件である。本当に出ると言う噂で買い手がつかないらしい。相場の半値程度で買えるようだ。
「除霊なら加納さんのブレスレットで大丈夫と思います。MPが足りなかったら慶子ちゃんにMPを送って貰います。聖属性の弾も持っていってください」
俺と慶子ちゃんは忙しいので、行けません。決して心霊スポットが怖いわけではありません。
テトテトとアモールが歩いて来る。
「クリスマスプレゼントどうぞ」
「キュピピ」
嬉しそうに頭を擦り付けてくる。
「着けて見ようか」
チリリンと鈴がなっている。
「一緒にいてくれてありがとう」
加納さんと、リチャードがあたたかいまなざしを向けている。
……。
「ただいま、鯖田さん帰ってたんですね、やっぱり帰る場所は正妻のところですね」
「慶子ちゃん、お帰りなさい……。これプレゼントです」
「えへへ。開けちゃっていいですか」
「どうぞどうぞ」
「綺麗なネックレス、ありがとうございます。着けてください」
後ろにまわって着けようとすると
「良かったら前から着けてください」
「こ、こうかな」
「デヘヘ、チュッ」
「あっ」
「私からのプレゼントはこれです」
「こ、これは?」
「最新ハイサイクル電動ガンです。調整済みです」
これ給弾しなくても500発撃てるやつじゃないですか。それでも20秒で撃ち尽くしますけどね。
「予備用に3丁と新たにミニバルカンを調整して貰いました」
「これほしかったんだよね。この頃豆まきする人と思われがちだったからね(泣)」
ミニバルカンは謎カスタムしてリアルさを失くしてあるらしい。毎秒50発、2000発入るやつだ。整備は自分たちでも点検するがショップのスタッフの職人技も助かっている。何故かこちらの意図を理解して整備してくれる。
しかし俺たちは一体なにを相手にしようとしているのであろうか。
戦力だけは其処らの軍隊よりもヤバくなっていることに全員が気付きながらも力を研ぎ澄ますことを止めない。
俺たちの気持ちは、実銃、実弾を手にする人たちにはわかり得ない。流れ弾やフレンドリーファイアがないだけではなく、もともと傷つけるための力ではないことが関わっている。そして生分解性BB弾は環境にも優しいのだ。劣化ウラン弾の真逆とも言えるのだ。
そうこれは純粋に守るチカラ。
……。
18:00になり、セーフティルームから加納さんとリチャードがでてくる。
「クリスマスイブのパーティー始めまーす」
慶子ちゃんがセクシーサンタのコスプレをしている。可愛いですね。ナイスバディですね。
「「「「乾杯」」」」「キュピピピィイ」
アモールも赤い帽子かぶって可愛いですね。
加納さんとリチャードも楽しそうにはしゃいでいる。
俺も楽しい。今年頑張って良かったな。こんな良い仲間達に囲まれて。死にかけて結構大変だったけど。
「鯖田さんも飲みましょう」
慶子ちゃんが酔っ払っている。可愛い。そして……。
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