第40話 クリスマスまで

「寒くなりましたね」

「寒くなったね」

 野球に打ち込んだ11月を俺と慶子ちゃんはしみじみと振り返っていた。

「ニチロウさんいい人でしたね」

「本当に」

 あの後、野球雑誌や週刊誌から取材を受けたり忙しかった。スカウトの人から、今年のドラフト会議は終わっているので来年は必ず指名すると言われた。まだWLBC (ワールドレディースベースボールクラシック)への出場は、未定だし、野球女子日本代表にとどまれるかどうかも分からなかった。考えても仕方ないことはどうしようもない。

 街はクリスマスに向けて、イルミネーションが多くなり、きらびやかな印象が強くなって行った。

 慶子ちゃんのご実家にもご挨拶をと思うのであるが、お父様が早期リタイアされて夫婦でマレーシアに移住されているため、「結婚式には行くよ」と言われている位だ。もちろん慶子ちゃんの活躍は、ご存知で「大変だけど、娘を頼む」と言われている。

 セーフティルームを使えば、どこへでも安全に転移できるのであるが、そういうわけにも行かないだろう。

 北関東の俺の両親には、挨拶してもらって「こんな変な息子だけどよろしくね」と言われている。オンラインでは、何回も慶子ちゃんのご両親と交流しているようだ。

 言い忘れていたが、ティアちゃんがパーティーメンバーに入りました。向こうで「火炎の魔神」との戦いに勝利したとのことで、大量の経験値が入った。俺とアモールはそれぞれ500程度のレベルアップを果たした。

 たまに加納さんとリチャードから頼まれて、セーフティルームを貸していることがある。出入りは、リーダーである俺だけが決定出来るが、タイマー機能がつき、出るときだけは俺が指定した時間に全員が出ることが出来、いつでも変更できる。俺に万が一のことがあって出られないとか、強制的に排除されて危険にさらされる可能性がかなり軽減した。

 念話が出来るので、助けに行くことも出来るし、セーフティルームから攻撃することも出来るようになった。空間超越弾をモニター越しに当てることが出来るようになったのだ。

 よくゲーセンにあるガンシューティングゲームの銃型のコントローラーの上のところに弾を入れる場所があって、給弾するようになっている。もう、銃もスキルで作れる。セーフティルームから文字通り安全に、攻撃出来るのだ。

 加納さんとリチャードが何をしているのかは、分からないが、ドローンやミサイルであっても、モニター機能で標的を追従して、撃てるのでテロや紛争への介入もやろうと思えば出来る。俺としては知りたくもないのであるが、そういうことはしていないと信じている。

 二人から作って欲しいと言われた弾のスロットには、速度、貫通、貫通、貫通、小電撃、射程∞、空間超越弾、必中の魔弾が付与されている。貫通距離は驚きの最大100メートルだ。

 このコントローラーから発射される弾にはそもそも実体がないため、射入孔もなく、出血で死ぬこともない。射手の望む深さで電撃を与えるため、コンピューターなどであれば、サーバー室に跳躍し、その後構造体に貫通、ウェハースに電撃を与えることが出来る。人を殺さず破壊工作が出来るのである。

 神級爆発が半径100000メートルの爆縮を起こすため、なんだったら、小惑星も消失せしめられる。オルマゲドンの世界をとうとう超えたな。(計算上は125発以上必要であるが)

 ……。

 今日はクリスマスプレゼントを買いに、都内のデパートに来ている。一番は慶子ちゃんのためであるが、女性陣にも良いものがあればと思う。アモールは、女性陣にモフられている。寒いのは、耐えられるが好きというわけではないらしい。

 気配察知を駆使して、良さそうなものを選んで見る。

 まずアモールには、猫用首輪と鈴のセットである。幸運の付与を行いたい。間違えて他のを手に取った時に破邪の付与をしてしまった。あれを買う人は、ラッキーなのか。そうでもないのか。

 慶子ちゃんには、ネックレスだ。これも幸運の付与が出来るやつで良さそうなのを選んだ。渾身の力を込めて付与してみるつもりだ。

 加納さんには光属性の付与を行えるブレスレットだ。魔力MPを込めるとそれに応じて、回復や浄化が出来る。

 リチャードには、認識阻害のパッシブ&アクティブ特性の付与が出来るピアスだ。魔力MPを込めると、カメラからも逃れられると言う謎の能力が使える。

 ティアちゃんには、イヤリングにした。以前伝説級の杖をあげてしまったので反省していたら、聖属性魔法威力10倍と言うもののが出来上がった。両耳に付けると邪神も魔王も消滅させられるぞ。(前回5倍程度)

 ニコールさんには、いつも領地の管理を任せているので、真珠の首飾りにした。向こうでは天然しかないし、粒が揃わない。これに幸運をこれでもかと付与した。

……。

 これで、皆丸くおさまってくれるだろう。

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