第37話 シスターズ

 慶子ちゃんと俺(とアモール)は、世間からはAKS(アイコ・ケイコシスターズ)と呼ばれ、スポーツ万能姉妹として、メディアの注目を集めていた。

 年末にかけて、女子プロ野球のドラフトやトレード、ワールドレディースベースボールクラシックWLBCのメンバー召集があり、慶子ちゃんが始球式に味をしめたこともあって、俺たちは女子野球界への接触をはかり始めた。

 金銭的な見返りや、女子プロ野球でやっていくつもりはないため、主にWLBC での参加を目指して行った。これは、資金難や怪我に悩むことのない俺たちならではと言えるだろう。とても他の女子プロゴルファーにはお薦め出来ない。女子プロゴルファーの中には、ソフトボールの経験者も少なからず存在するため、これからは、ゴルフ↔️野球の行き来が盛んになるのではないだろうか。

「慶子ちゃんもキャッチングの練習しようね」

 二人でキャッチングの練習をする。キャッチャーって、本当に大変だなって実感する。女子プロ野球の試合の映像を大量に見て、投手と捕手の動きを学習していく。ボークの事が本当によくわからない。俺も慶子ちゃんもノーワインドアップモーションのため、投球動作でグラブをしっかりとめること、プレートを外す時は後ろに外す、サインは大変なので、出来るだけ二人で投げきる。念話で何とかなるからね。しかし、投球動作が始まったら念話で投球の邪魔をしないようにとりきめた。盗塁の時はキャッチャーを信じて投球して貰わないとだな。内野手への送球はキャッチャーでとかね。これがサインをしないといけないなんてルールになったら終わりだな。サインは出来ないもんね。他のピッチャーに変わるときはキャッチャーも控えに変わって貰うのもありかもしれない。

「女子野球日本代表とニチロウさんのチームとのガチンコの試合が決まりました」

 その前に日本代表になれるかわからないが、慶子ちゃんは大喜びだった。俺だってニチロウさんに会えるのなら嬉しい。ニチロウさんの振り子打法やレーザービームをこの目で見てみたい。そして憧れの元プロ野球選手たちと真剣勝負を繰り広げるのだ。

 二人は、フォーシーム、カーブ、スライダー、チェンジアップを練習していった。どれだけ練習してもすぐに回復して、怪我してもすぐなおってしまうので多少の無理は大丈夫だ。イップスにもならないので安心して練習できる。

 つどつど身体の感覚が適正に調整されるため、スライダーを投げたら、ストレートが悪くなったとか全く無いのがすごい。スランプ知らずだな。

 バッティングはもっとチートだった。ボールの回転や、風の動き、ボールから出る音や振動から、精密なバットコントロールが可能になる。内角球で感覚を狂わされたりもないし。

 多分、刀でハエとか蚊とか切れるな。あいつら音や振動がするもんな。剣でゴキを切ったら気持ち悪かったよ。異世界でやったことあるもん。

 と思っていたら、バッティングピッチャーの球を受けてみた時、バッターの筋肉の動きや振動もわかってしまうのでキャッチャーからピッチャーに念話出来る俺たちは最強とわかった。

 バッターが意図していることがわかるのだ。気配察知で打つつもりかどうかわかるし、何だったら悪い人かいい人かもわかるのだ。まあ、バットで殴りかかられたら大変だからわかるとも言える。

 同様に相手ピッチャーが故意に死球を当てに来ているとかもわかる。わざとじゃなくてもよけれるけど。そして故意にぶつけてきてもおこらないよ。精神耐性があるからね。

 さらに女性でも男性でも俺たちを狙っている人はわかるよ。においでもわかったりする。

 結果的に俺たちは、テストを受けて女子野球日本代表に選抜された。これで憧れのニチロウさんにあえるのだよ。

「やあ、君たちが噂のシスターズかい、似てないね」

 うるせーよ。あ、すいません。尊敬してます。

「スポーツ万能らしいじゃない。まるで百獣の帝王みたいだね」

 うるせーよ。あ、尊敬してます。

「ニチロウさん、尊敬してます」

 俺たちは握手して貰った。なんかいい匂い、やべえドキドキする。やっぱりスターは違うね。

「本気で勝ちにいくから君たちも頑張って」

「光栄です」

 何か今まで女子のチームはニチロウさんたちに勝てたためしはないそうだ。まあ、そうそうたる面々だからな。彼らが全盛期だったら日本代表で行ける。

 今回が女子チームの初勝利になるのか?あ、俺は男だったな。まあ、身体や血液や尿を調べられてもわからないらしい。だってそれがチートってものでしょう。

 

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