第33話 新たなる旅の終わり
俺は、もふもふを触って、もふもふの下は温かい痩せた猫みたいな骨格と柔らかい筋肉と良く伸びる皮膚があることに気づいた。
ドラゴンって、卵で生まれるから変温動物じゃないのか、そもそも動物ではないのかと考えていた。
荷物のなかに猫用チュールが入っていたため、あげてみると食べた。
後で犬用チュールもあげてみよう。
ティアちゃんが抱っこしやすいように、赤ちゃん用のスリングを調節して見た。
幼児には重いんじゃないかと思ったのでスリングの端を背負子の柱にむすんでみた。
霧が晴れると、爽やかな山の空気が気持ち良かった。
それから俺は、歩き続けた。ティアちゃんは時々、叱ってくれたり、もふもふを撫でたり、俺の頭を撫でてくれたりした。
「お主、どこからも必要とされなくなったら神殿にすんでいいぞ」
「ありがとうございます」
「振られたって嫌われたって、お主が変な面白いやつというのは変わらんのじゃからな」
「ありがとうございます」
もふもふは、キャットフードでもドッグフードでもほどほどに食べた。体格からみて、食べ過ぎたりすることも、少食ということもなかった。
トイレは、猫用のトイレロボットを使った。
夜は、二人と一頭でくっついて眠った。お風呂にも、もふもふを入れた。
もふもふが名前をつけて欲しがっているみたいだった。
「何か名前をつけてやるのじゃ」
「そうですか」
「お主がつけるのじゃ」
「俺が?」
「キュピピピピ……」
「じゃあアモールってどうでしょう」
「キュピキュピピピピ」
気に入って喜んでいるようだ。
「お主、最初は変な名前を提案して、気に入られないというくだりがあるのが、異世界のあるあるということを知らんのか」
「もう人の期待に応えようとかそういう生き方はやめたんです」
「そうか、思いきったもんじゃな」
ちなみにアモールというのは、キューピッドの別名である。キュピキュピと鳴くので、キューピッド、少しひねってアモールである。
「このまま親が見つからなければ連れていく他ないじゃろう」
「性別は分からないんでしょうか」
「近頃は性別とか余り気にせんのではないのかの」
「しかし大神官は女の子なんですから、お風呂の時スッポンポンで走り回るのはどうかと思いますよ」
「……黙って見とるお主が悪いんじゃあ」
もふもふを抱いた幼女がスッポンポンで走り回ろうと、俺には正直どうでもいいことだが、世間の常識があるので、一応言っておく。あ、サンダルを履いていたので厳密には全裸ではないか。
……。
そろそろ、この旅も終わりに近付いている。今日は85番目の札所であった。
あと、残り2日と言うところだろう。アモールの親は、見つかったと言えば見つかったが、キュピキュピ、グルルルルと言う親子の交流ののち、俺のほうにトテトテと歩いてきた。親ドラゴンももふもふで体長15メートル位はあったが、こちらを向いて頼みますと言うようにうなずいていた。
85番札所から86番札所まで、1時間余り。86番札所から87番札所まで1時間余り。87番札所から88番札所まで2時間弱。88番札所から1番札所に戻るのが8時間位だろう。
特に急ぐ必要もない旅だ。
慶子ちゃんが作ってくれたケーキをみんなでたべた。
日本で買ったたこ焼きとたい焼きとアイスと回転饅頭と肉まんといろいろ食べた。
88番札所の近くで最後のテント設営を俺だけが行った。お風呂をわかして交代で入った。北欧の薪で沸かすお風呂があるのだ。結構ゆったりしている。
サウナに関しては、幼女が入れるか分からなかったのでやめておいた。
最後の8時間歩く。何故か分からないが涙が流れた。ティアちゃんも泣いていた。アモールもキュキュキュと鳴いていた。
俺たちは、神殿に帰った。
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