第31話 新たなる旅

 慶子ちゃんの気持ちはありがたいが、俺の見た目は人のそれではない、変に白くて透明度がある肌に光が当たると、どんな理屈か知らんが大理石状に光が漏れ出るのだ。そして極めつけは髪である。青白銀と大神官が称した色はみる角度によって、色彩と光を変え、浮き出るように見えることもある。そしてちょっとまぶしい。外では青が強い虹色に見える。いわゆるモルフォ蝶の構造色と言うものらしい。

 困ったのは、目の虹彩もこれらしく、部屋の中ではそうまでないが、明るくて縮瞳している時には、見つめられるとちょっときもい。


「その髪の毛を少しくれんか、神殿に飾りたいのじゃ」大神官さま何を言ってるんですか。

「お断りします」

「何故じゃ、この大神官ティアリローゼ・クロード三世の頼みがきけぬと申すか」

「何かキモいので」

「じゃあ、死んだらその目をくれ」

「嫌です」

「何故じゃ」

「キモいからです」

「じゃあ、身体全部くれ」

「もっと嫌です。成仏出来そうもないから」

 見た目4歳児の大神宮ティアリローゼ・クロード三世は、所謂のじゃロリだった。

……。

「実はこう言うことで悩んでいるんです」

「そんなもん愛があれば、何とでもなるじゃろ」

「そう言われましても」

「そんな事だから優柔不断と言われるのじゃ」

「良く分かりましたね」

「誰でも分かるわい」

「悩んでるんです。何かありませんか」

「ふうむ、旅に出ることじゃ」

「旅、ひとり旅ですか」

「いや、伴のものを一人つけてやろうぞ、お前一人だとまた女を誑かしそうじゃ」

「根も葉もない言いがかりはよしてください。でも有り難うございます、ではこの貢ぎ物をどうぞ」

「なんじゃ」

「樹木の王、エルダートレントから頂いた枝に、聖金剛石を嵌め込んだ魔法の杖にてございます」

 杖の頭に指輪の爪のように宝石をつかんでいる意匠だ。

「おま、これ一体何千カラットあるのじゃ」

「お気に召しませんか、では引っ込めさせていただきます」

「待てい。何か付与もされておるな、これは神話級のアイテムになるぞ」

「聖光属性がこれでもかと……。悪魔が使っても浄化が高威力で使えます」

「使った悪魔は消滅するじゃろ」

……。

「全然嬉しくないぞ」

 杖を光に透かしながら、ティアちゃんはニヘラニヘラしている。

「女に宝石を贈ることは、求婚と同義とかんがえられておる」

「全く知りませんでした。ではお返し下さい」

「返すわけ無かろうが。コホンそれでは、3日後の早朝、神殿前から出発せよ」

「ははぁーっ」

……。

 その後俺は、神官の女性から汚いバッグに食糧とか入れるように言われた。なにやら、これから行くところは、スキルや魔法が使えず、聖遺物と認定されたものだけが使えると言う。

 確かに、空間収納のままだったら使えないから危なかった。全部で50日ほどの旅程だと言うことで便利そうなものは全部余裕を持って入れて行ったが、全くそこのみえないマジックバッグの優秀さに驚いた。ステータスや炎などの一般法則は適用されるのらしいので、からだの強さはそのままだ。いつも使うことがないオイルランタンを入れておいた。丈夫な杖を入れておく、これは俺がトレーニングに使っていたものだ。これにオイルランタンをつるすフックも入れておく。気持ちとしては遠足に行く前の小学生のあれである。その他、トイレ、グランピングテントや水を入れておいた。そうだ、外で使えるお風呂やサウナを持っていこう。薪も大量に入れてと。おやつやレトルト缶詰め、慶子ちゃんのできたて料理も入れておこう。

……。

 出発の朝、神殿前で待っていると、ティアリローゼ様とおつきの神官が数人出てきた。

「大神官様、バナナンはおやつに入ります」

 汚いバッグを持って引っ張りあいをしている。

「そんなのどっちでも良いじゃないですか。果物の缶詰めはいれてますよ」

「そうか」

「というか大神官様もいかれるんですか、メインで行かれるのは、どちらの神官様ですか」

「わししか行かんが」

「えっ何ですと?」

「女の神官が行くと、お前に誑かされるじゃろうが」

……。

「それでは出発じゃ」

 神官たちを神殿に下がらせるとティアちゃんは、周りを気にしながら神殿の中に戻って行く。

「何か忘れ物ですか」

「違う。こっちの方なんじゃ」

……。

 神殿の神様の像の後ろの壁を何やら触っていたが、ふいに壁の一部か引っ込むと押し戸のように、向こうがわにズズスとひらいた。

「この事は、神官どもにもいうでないぞ。代々の大神官しか開けることは叶わんが」

「は、はあ」

 中に入ると通路があり、その向こうがやけに明るい。

「これは?」

「ダンジョンじゃよ」

「じゃあ、魔物が」

「いや、ここの魔物は襲ってこん。魔素が薄いし、何らかの意図が働いておるようじゃ」

 そう言うと、ティアちゃんは、件の杖を取り出した。

「聖遺物以外は使えないんじゃ無いんですか」

「昨日、聖遺物に認定されたのじゃよ、それとほら見てみい」

「こ、これは」

 杖の頭の所が、玉虫色みたいに飾ってある。

「お主の髪の毛じゃ」

 俺は、思わず頭に手をやった。

「これは、お主が回収されたときに同じく聖遺物である鋏で切られたものじゃ」

「なんて事してくれてんですか、こののじゃロリは」

「その時、お主の髪は腰まで伸びておった」

「切って下さって有り難うございます。普通に切れなくて困っていたんですよ」

「でもキレイにコーティングしてありますね、クリスタルガラスみたい」

「職人の仕事じゃ、キングスライムの体液を魔力で固めたものじゃ、この髪止めを見てみい」

「おお玉虫みたいでキレイ」

「お主の女にも、作ってやろうか」

「是非お願いします。いくつかお願いします」

「そこは一つじゃろうが、そう言うところがケイコとやらを傷つけるのじゃ」

「すみません、一つでお願いします」

「反省せい」

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