第28話 スタンピードその2
セーフティルームでモニターを操作して城壁の上を指定する。城壁の高さは、カーソルを合わせると、9メートルと言うところか。
マウスはこういう使い方があったのか、思ったより便利だな。
コンセントというか、電気のアウトプットは各部屋にあった。
延長コードとテーブルタップもあり、雷サージ対策ありと書いてあった。謎だ。
バッテリーを充電しておく。
モニターでは、ゴブリンライダーが城壁にたどり着いており、主力部隊はまだ到着していない、しかし1キロ圏内には2000程度はいるようだ。俺が探知したスタンピードの先端部分だろう。
モニターを遠くまで動かすと、総数20000、後方には大きな影が数十はいるだろうか。
「この女性は」
「美人ですねプンプン」
「そうじゃなくて、前回賊を倒したときの貴族の人ですよ」
「この人の近くにドアを開きます」
密接していれば、攻撃されないだろう。
俺たちは、防弾ジャケットやヘルメットをかぶり、ケプラー繊維で強化された防炎戦闘服(法被とズボンとブーツてきなもの)を着用していた。誰か差し入れてくれたらしい。消防の装備品だろうか?
まばらに弱々しい矢が飛んでくる城壁の上にドアを開き、顔を出すと、兵士たちがビックリしたような表情で、盾や剣、槍を構えている。
「あなたは以前助けて下さった戦士の方ではありませんか」
年の頃ハイティーンとおぼしき、白いフルアーマーを着けた女性が、配下の側近を手で控えさせている。彼女は領主の二女のニコールと名乗った。
「お礼をと思い、あの後探したのですが、近隣の街にもいらっしゃらなくて」
「私もあの時はフラフラで、ご挨拶もしませんで申し訳ありません」名刺を出しそうな雰囲気になった。しかし言語理解lv3はいい仕事をしている。後でもう少しあげておこう。
「助太刀させてください」
「ありがとうございます、しかし危ないですよ、50年前に起こったスタンピードでは都市がいくつも滅びました。今回もむざむざやられるつもりはありませんが勝機は薄いかと」
諦めてはいないのだろう、目には力が溢れている。2日くらいの持久戦になれば御の字ということらしいが。
矢間に居場所を定めている加納さんに、連射のほうが電気系統の持ちがいいことを伝えた。
俺は最初のうちは銀玉鉄砲を使うつもりだ。全員分出すとビックリしていたが、単発ならこれで十分である。
ニコールさんは俺たちに自立式の盾を貸してくれた。弓兵が使うものらしい。
「じゃあ行きますか、疲れたらリチャード、回復を頼む」
「「了解!」」
俺たちは銀玉鉄砲を撃ち始めた。射撃スキルは、ものすごい精度を見せ、BB弾は1000メートルの有効射程を発揮した。
「バイーン、バイーン……」と気の抜ける作動音を発しながらも、敵をバタバタと倒し始めた。
「いいぞ、これなら死なずにすむかもしれない」と兵たちから前向きな意見が聞こえている。
ちなみにこの銀玉鉄砲を作ったのは日本の洗濯バサミを作っている老舗である。
射撃スキルは、色々な能力の総合されたものである。少し考えて見るとわかるが、ガンマンの撃ちあいで生き残るためには、早打ち、狙い、相手の銃口の向きなどを見るなどだろう。
我々の場合は、自分の撃った弾が見えている。次弾が当たりやすくするためと思うが、普通亜音速で撃ち出された直径6ミリのくすんだ弾が見えるだろうか?否である。よって矢の速さぐらいは屁でもないのである。
ゴブリンライダー、コボルトなどのスピードに優れた魔物が見えない弾で身体に直径10センチの穴を空けられ、どんどん死んで行く。しかし、怯むことは一切ない。死の恐怖を感じていない。バーサーカーのような状態になっているのだろう。
この状態の理由があるはずだ。
次第にゴブリンやメイジ、など次に足の早い魔物がくる。ボアなどの魔獣はちらほら見えるが城壁への体当たりは敢行していない。ジャイアントボアは軽自動車ほどもあり、重さは2トンもあるだろうか。これは城壁にぶつかってくる。早めに倒す必要がある。
大きな魔獣にも各個撃破を心がける。もっと大きいと、三人で集中せざるを得ないかもしれない。もっと大きいばあいは、電動ガンを連射してみるだろう。
1時間ほど撃ちまくり、指がいたくなったので回復して貰う。
レベルはもう15くらいは上がっている。自然回復が加納さんとリチャードに生えたのでスキルレベルを上げて貰う。それと、射撃スキルだ。lv10まで上げればスタン50%がつく。
俺はBB弾特性付与lv10→15で中爆発を得たため、みんなの弾を、速度、貫通、貫通、中爆発に変えた。最大1メートル貫通し、ターゲットの厚みの中心部で、半径1メートルの爆縮を起こす。ほとんどの魔物は一撃である。
徐々にオークやオーガ、魔法や武器、防具を備える敵、ジャイアントボア、地竜などの大型魔獣が増えてきた。これくらいは我々の敵ではない。
そう思っていた時が俺たちにもありました。
「なんだこりゃ」
「虫系の魔物ですね」
「スタンしませんね」
多分スタンはしている。おそらく、中枢神経が身体中に散在しているため、全く止まらないのである。大きさは10メートル、大きいものだと15メートル、外殻を貫いてえぐられながらも、突進してくる。
俺たちは、電動ガンを装備して連射しまくった。戦闘開始からおよそ4時間、虫系魔物に遭遇してから5分、壁外で戦う兵たちは総崩れになり、城門も開けられないまま、逃げ惑っている。飛行する虫系魔物、カサカサするG系魔物にリチャードは気が狂ったように乱射しつ続ける。
弓兵やバリスタがフル回転している。
俺はBB弾に速度、貫通、追尾、中爆発を付与したものを自分に装備して、射撃スキルをlv20へ、両手撃ちを得た。
アクション映画さながらに両手撃ちを披露している。ズシーンと大型虫系魔物が200メートルほど離れた城壁にぶつかり、振動で一瞬落ちそうになった。少年兵や老兵が震える手指で弾を込めてくれる。
20メートル以内に入った飛行する2メートルもある虫が顎をカチカチ言わせて迫ってくる。
俺は節分の豆まきの要領で、弾を投げつけると計算したようにバラけて、数匹の虫が消滅し、臭い体液がそこら中にぶちまけられた。これが、毒や酸ではなさそうだが、水を持ってきて、洗ってくれたらしい。
リチャードをセーフティルームに入れ、10分後に出現させる。これには入って出てMP20が必要になるが、お風呂で洗って来たらしい。交代で身体を洗う。洗濯かごのなかには汚れたパンティやブラジャーが入っていたが、俺は決して二度見はしなかったことを強調しておく。
「住民の7割は馬車で逃げられました、残りは兵士と地下壕の中の動けない人たちです。私は最後まで戦います」ニコールさんは決意を告げた。
「サバダさんたちは逃げて下さい。転移魔法をお持ちですよね」
「限界までご助力致します」
「何故そこまでしてくださるのですか、私が残されたのは、家の存続に必要無いからですよ」
「私たちに御家の内情はわかりません、しかし死んでもいい人なんていないと思います」
夕方になり、夜の防衛戦の様相を呈してきた。威力が高すぎると使いにくいので、弾には速度、貫通、小爆発、聖光属性を付与した。
レベルアップの幅は、40を超えていた。BB弾特性付与をlv20にしたところで、付与スロットが5に拡張した。スロットを速度、貫通、小爆発、追尾、聖光属性に入れ換えた。夜戦用に暗視をlv10にしたところ、昼間のように見えるようになった。
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