第24話 プロゴルファーへの道その2
俺と慶子ちゃんはいつも通り、走りながらアウト9ホールを文字通り駆け抜けた。このゴルフ場のスタッフは、情報を与えられていたのにビックリしていた。坂崎さんが先行するプレイヤーがいないように調整してくれていたのだ。一体いくらかかったのか?怖くて聞く気にもなれなかった。
何とアウト9ホール20分だった。スピードゴルフでも何か貰えるかもしれないな。
「はあはあ、君たちそのままイン9ホールも回るかね」
「はい」
「二人だったら何処までもいきたいでーす」
「……」
俺たちは18ホールを40分で回ってしまった。スコアは俺が70、慶子ちゃんが69だった。
「また私が勝っちゃいました。何か一つ願い事を聞いてくれる約束でしたよね」
「そんな約束はしていない」
「えー忘れちゃったんですか、しょうがないですね。婚約指輪で許してあげますよー」
「………」
「何なんだ、この人たちは、プロじゃないのか」
「こんなのプロでも無理だろ、化け物だ、人間じゃない」
「私の友人に失礼なことを言わないでくれ、まあ気持ちは良く分かるが」
坂崎さんたちはゆっくりとハーフを回って行った。
加納さんはハーフ38、リチャードはハーフ39だった。
「プロの大会に予選から出て、本選で優勝すればプロ宣言できるらしいぞ、予選はプロも入れて1500人くらいだがねハハハハ」
アマチュアでプロの大会に出て優勝したプレイヤーは本当に少ないらしい。昔、優勝したのにプロになれないのはおかしいと言われたことがあってできた制度であるが、普通にプロテストで合格するよりはるかに難しい。
慶子ちゃんと俺は、来年アマチュアの大会に一回出場して、その後のことを決めることになった。
スキルを確認すると、自然回復lv1が二人とも発現していた。この頃になると、スキルの詳細説明画面でも、どのような効果があるか分かるようになっていた。
このスキルは、体力やスタミナ、回復力に優れたプロ選手と同等の身体能力を1~2週間維持する。その他プロボクサーであれば、網膜剥離やパンチドランカーにならないし、投手やピアニスト、ギタリストであればイップスにならないなどぶっ壊れスキルだ。どんなスポーツでもトッププロ選手で何年も持続できる選手が、どれほど一般のプレイヤーと隔絶した能力を持っているか推して知るべしである。その力を二人は努力したとは言え短期間に得たのだ。
異世界にいかなくともパーティーメンバーであればこのような恩恵が得られる。
しかし、俺たちの心の中には、このようなスキルを異世界に貢献せずに無料(ただ)でいただくのが申し訳ないと言う気持ちと、チートな能力で他のプレイヤーとの差異を得ることに罪悪感が生まれていた。
しかし、応援してくれる社長や坂崎さんには、プロになると言う責任と言うようなものを感じている。
俺と慶子ちゃんは、話し合った結果プロの大会で優勝するそしてプロ宣言すると決めた。その後会社の仕事に専念し、場合によってはプロ資格返上を宣言することも視野にいれた。
色々な立場のプレイヤーには、本当に申し訳ないと思うが、俺たちも心が痛んでいると言っておく。もちろんそれでチャラになるわけでないことも分かっている。
……。
「鯖田さんと慶子ちゃんには本当に申し訳ないと思っているけど、私たちもステータスを持続したいし、スキルもあげたいの」
「言われると思ってました」
「……」
慶子ちゃんは無言だった。ゴルフの楽しさを知ってしまっていたからだろう。
「脅迫する気もないし、ダメと言われれば引き下がる。私たちの仕事では、生存率が上がるだろうってことは知っておいて欲しい」
彼ら二人は身体能力を上げて、プロスポーツで儲けようと言う気持ちはない。情報員として生き残りたい、この世界に貢献したいと言う気持ちがある。
「分かりました。ただ条件があります。それはお二人のことではなくて、経験値の割り振りの詳細が分かることですそれと……」
「慶子ちゃんはこれ以上、異世界に連れて行く気はありません。しかし、地球に残っていても経験値が入ってしまっては、他のプレイヤーとの差異が広がってしまいます。慶子ちゃんには詳細が分かるまでパーティーを抜けてもらいます」
「鯖田ざーん、ヒック……あぁーん」
慶子ちゃんは、号泣していた。それほどまでに異世界に恩を返したいのだろう。
「鯖田ざんと、一緒にぐらじてもいいだらぞれでいいです、グズッ」
「……。これハンカチどうぞ」
「ズビズビズビーーーっ」
慶子ちゃんは、盛大に鼻をかんだ。そのハンカチ上げるからね。
結果的には、以前考察していたように、慶子ちゃんのステータス画面は、パーティーメンバーでなくなっても、自分だけは見ることができた。異世界でレベルアップを経験すればパーティーからはずれても永続的にスキルは固定すると考えられた。
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