第22話 幸運ステータスの仕事
「加納サン、もしミスター鯖田サンに何かあれば、私も子供たちも黙っちゃいませんよ」
リチャード・ゲイトはオフィスの前でスマホを持って話している。
「フフ…怖いわね。大丈夫よ、あなたには色々とお世話になってるし、会ってみたけど鯖田さんもいい人みたいね」加納飛鳥は、営業の途中で通話している。眩しそうにしながら、それとなく周囲を見回している。
「彼に会ったんですか、羨ましいな」
「もし会いたければ、セッティングしましょうか。坂崎さんも鯖田さん秋田さんとは個人的にラウンドしたそうだったし」
「私はゴルフはしないんですよね」
「大丈夫、これから練習すれば間に合うわ」
(それにしてもあの二人は凄いステータスのようね、あるいは身体強化系のスキルかしら、安定して能力が発揮できるようにサポートしているのでしょう)
(私にも、あの力があれば。他の人に広げるのは危険ね、どの媒体にも記録しないで良かった。盗撮盗聴もしてないし。他の組織に情報が渡らないように気を付けよう)
その頃俺は、慶子ちゃんと郊外のショッピングモールに来ていた。この週末から早朝ハーフか、薄暮ハーフに行こうということになり、寒くなる頃なので準備に来たのだ。
まあ慶子ちゃんは朝に弱いみたいだから午後からになるのだろう。
「慶子ちゃん、まさかと思うけどプロテスト受けるつもりじゃないよね」
「まだそのつもりはないですが、社長さんも応援してくださるって」
「そうか、知識を増やすにも、それを実践するにもいい環境にあるのか」
「鯖田さんはずるいと思いますか」
「いや努力も必要だろうし、今は向こうには行けないもんな。ああ、そう言えばステータスがどうなったか確かめてなかった。後で一緒に見てみるか」
「鯖田さんが大丈夫なら。これからは見る場所も考えたほうが良いですね」
「ん、なんだか危ない場所とかわかるようになって来ているんだ、これもご利益なのか、誰か助けたほうが良いときも虫の知らせがあるかもな」
ショッピングモールにつくと、立体駐車場の4階にクルマを止めた。
「あ、宝くじを買ってたのを思い出した。慶子ちゃんは先にスポーツ用品店に行って待っててくれる」
「わかりました、冬物を先に見ときます」
寒くなりかけの気候で外で待たせるのも悪いので、俺は一人で宝くじ売場の列に並んだ。
俺の番になったので、当選くじを調べてもらう。カシャカシャカシャ…と機械で調べられていく。
「お客様、こちらでは換金できないものがありますので、説明書をご覧になりご換金ください」
高額当選の時の対応である、俺は一度10億円の時、経験がある。
(やれやれ、面倒だな。また良いときに換金しよう)
ジャケットの内ポケットのボタンがかかるところに入れると、ボタンをかけておいた。
俺はショッピングモールの正面玄関から中に入ると、エレベーター脇の階段から二階に上がる。夕方の買い物客の中を、気配を消す積もりで流れに沿って歩いて行く。
後ろから誰か尾行してくるような気がした。
キョロキョロと周りを見渡している男性が4人通路にバラけてゆっくりと歩いている。
俺は気配を消しながら横の店舗に一歩入ると、商品を選んでいるような体でゆっくりと動いている。
男たちは何か見失ったかのように目で合図しながら進行方向に走っていった。
高額当選者を狙っていたのだろう。尾行して俺が帰るときに襲うつもりだったようだ。
後でステータスを確認すると、認識阻害lv1のスキルが新しく追加されていた。
幸運値の高さに感謝した俺だった。
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