第21話 異世界転移……しない後編
俺たち、俺と慶子ちゃんは高速を通って都内に帰る途中だ。オーディオから90年代のJポップスが流れている。リアルタイムで聞いた世代ではないが、アーバンリゾート的なサウンドが運転に合っているのだ(私見です)。
「何で加納さんとアカウント交換したんですか」
「慶子ちゃんだって、交換したよね」
「あの状況で断れる訳ないじゃないですか」
「非政府系の人なら住んでるところもわかってるだろう。なんなら盗撮盗聴されてるかもだな」
「そ、それは鯖田さんの家のことですか」
「逆にそれ以外なにがあるの」
「私と鯖田さんのあれやこれやが……」
「特に見られて困ることはなかったよね」
「あはは、そうですね」
(裸で添い寝したことはばれてないのか、それはそれで残念な気もするけど)
「それで…えっと…加納さんって美人でしたよね」
「ん、あまり顔見てなかったけどそうだったか」
「あのう…彼女のこと気になったりしてるんですか」
「どうかな、俺の口を封じるつもりならもうそうしてるはずだし、こんな衆人環視の中に出てこないだろう」
「そういうことじゃなくて…」
「まさか、パーティーメンバーの候補ってことか、まあ素の戦闘能力が高そうだし、俺の転移能力のこともわかって要求してくるかもな」
「………」
「それと話に出てきたリチャード・ゲイトのことなんだけど、俺とメールをやり取りする友人なんだ」
「それ最初に言ってくださいよ」
「ん、フェアトレードを推進してて、農園の子供たちを支援してる良い奴なんだ」
「わかってて鯖田さんに接触してきたのかも」
「どうかな、会社に電話してきたとき俺に繋がるとは思ってなかったはずだ、メールじゃなくて電話だったのは子供たちの支援を役員クラスに直接頼みたかったからだろう」
「うちの会社ってフェアトレードに関わってるんですか、見直しましたよ、利益優先一辺倒かと思ってました」
「いや支援しているのは俺なんだ。来年分の作物を買ったんだよ」
「鯖田さん…そこまでお人好しだったとは…これからは未来の奥さんである私に相談してからにしなさい」
「そこは命令形なんだ、でも引き続き支援するつもりなんだ、親父も誉めてくれたよ(嘘だけど)」
「それと今日は鯖田さん目立ってましたね(笑)ドラコン最長記録って(笑)」
「慶子ちゃんがやれって言いましたよね(悲)」
(俺のトラウマが軽減して異世界転移できるようになれば、慶子ちゃんもレベルアップできて今後の人生に役立つと思うんだ。本当に良い人でちゃんと秘密が守れる人物なら、パーティーメンバーに入れるのもアリだな)
「私は鯖田さんとゴルフの練習が出来て楽しいですよ」
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