第18話 土曜の夜の狩猟

 打ちっぱなしで時間をとられたがまだまだ元気な俺は、慶子ちゃんをマンションに送り届けてから、今週最後の狩に向けて、装備を点検した。ネットで注文した剣鉈と、何やら金属で補強された杖(じょう)を出して、ネットの杖術や短剣術の動画を見ながら、打ち、払い、切り上げ切り下げ、袈裟がけ、逆袈裟がけ、突きを流れるような動きになるまで練習した。体術の動画も見て、投げ払い極め、締め、寝技、足払い、各種蹴り、合気をイメージトレーニングした。

 杖術と短剣術、体術のスキルが生えていた。なんと杖術は最初からlv2であった。ゴルフでクラブを振り回したのが、杖術と判断されたのかも知れなかった。ナイフlv1を統合して短剣術lv2となった、本当に助かる。

 時間を見ると20時半になっていた。 

(準備出来ました。お迎えお願いいたします)

(分かりました)

 慶子ちゃんのマンションに向かうと、コンビニのレジ袋を持って乗ってきた。

 俺たちはミッションでは、携帯食を食べるようにしているが、何やら、おにぎり的なものを食べたかったらしい。携帯食には、宇宙食みたいなのも売られている。色々試したり、調べたりするのが、オタクとしては嬉しいのだ。金額はそれなりにかかるが、俺たちは週末サバイバーなので、贅沢するのです。

 家に着くと、装備を確認し、タクティカルなものとの整合性、スキルとの整合性を考えて、サブウェポンや取り出しかたを確認していった。

「それとこの銃を試してみよう」

「これは駄菓子屋に売ってあったと言われる、金玉鉄砲じゃないですか」

「銀玉鉄砲な。日本製(セキ○ン)のやつはBB弾を撃つのにとても良いんだよ。雨の日にエアコッキングにしても良いが、これだと安いからたくさん買える。20発以上は必ず入るし、昔はこれに小さな木の実をいれたりしてあそんだよ」

「これから撃ち出しても亜音速で射程300メートルなんですか」

「たぶんそう」

「サバゲーに革命を起こしますね」

「そもそもパーティーメンバーじゃないと使えないし、亜音速のタマが当たったら怪我させてしまうから使えない」

「射撃スキルによって命中率は折り紙つきです。今なら安いですよ奥さん」

「……」


 俺たちはクルマに乗って転移した。先ほどのやり取りがフラグだったかのように、雨がシトシト降っていた。

 俺たちは右手に速さ、貫通、電気を付与したタマをいれた銀玉鉄砲、左手には速さ、貫通、小爆発のタマを入れた銀玉鉄砲を持って、レインコートとヘルメットをかぶり索敵した。マッピングと気配察知によって見つけたゴブリン5体は倒したが、なかなか獲物に出会わなかった。

 ちょうど街道近くを慎重に索敵していたとき、叫び声が聞こえた気がした。

 ハンドサインで、体勢をより低くして進行した。俺たちは匍匐前進を練習する事だってあるのだ。

 街道を見ると馬車3台が賊に襲われていて、すでに矢を受けて1人倒れているようだ。マッピングでは、半径100メートルに賊が10名うち弓持ちが3人、馬車側は残り5人が戦っている。馬車には、5+5+6人の乗客と馭者がいるようだ

「どうします」

「慶子ちゃんはどうしたい?」

「私は見捨てたくないです」

「防弾ジャケットと軍用ヘルメットを着用して俺が先行する。慶子ちゃんは右の二人の弓持ちをやってくれ」

 空間収納からアーマージャケット二着と軍用ヘルメット2つを出して、二人は着用し、レインコートを被ると左手の弓持ちに、速、貫、電を数発うちながら接近し、速、貫、小爆で始末した。

 同様に剣持ち槍持ち三人に駆け寄り、連射する。水たまりは血の海になっていた。馬車に取り付いている剣持一人を電撃で倒した。そして、右の方に進むと、慶子ちゃんが三人を無力化していたので剣持一人を俺が、無力化した。

 あと一人は、乗客を人質に取っていた。何か喚いているが言いたいことはわかった。護衛5人と俺たち二人を武装解除して、無力化したいのだろう。おそらく皆殺しを考えているだろう。しかし一人だけでできるのか。先ほどの一人だけ電撃のみ受けた賊が唸り声をあげている。殺しておくべきだったかもしれない。

 しかし、こちらの数的優位は動かないと思っていたが護衛たちは武器を捨てはじめて、俺たちにも従うように言っている。

 貴人か何かなのか、厄介なことになった。賊をたくさん殺している我々は、生かして置くつもりはないだろう。俺は、武器をしたに下ろすと、手を上げた。賊が近寄るように手招きするので近寄ると、やつは剣を振り下ろして来て袈裟がけに俺を切り裂いた。

 剣筋がはっきりと見え、仰け反ったため防弾ジャケットは前面はカバーしたが肩に痛みが走った。

 その時俺は口に含んで置いた、速、貫、小爆のタマを唇と歯の間に移していたので、プッと吹き出した。

 タマは300キロのスピードで賊の顔にめり込むと、ちょうど頭の厚みの真ん中で爆縮を起こした。顔が消滅し、数本の動脈から鮮血が勢い良く吹き上がり、硬直したように賊は倒れた。

 俺は後ろに向き直ると、ポケットから、速、電を付与したタマを出し、立ち上がろうとしていた賊に投げて昏倒させた。

 俺は自分自身に腹を立てていた。慶子ちゃんを危険な目に遭わせてしまったことを、そしてもう異世界に来るのはやめようと思った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る