第10話 更なるスキルを

 次の日には朝6時にはスッキリを目が覚め、シリアルとヨーグルト、ハムと目玉焼きを食べて、カフェオレを飲んだ。歯を磨き、いつもはチラッとしか見ない英字新聞を読んだ。

 今の会社が中堅の商社のため、もう数年購読しているが、風呂敷代わりに何か包む以外は使っていなかった。しかし今朝はなぜか経済欄に目が止まった、そこには農産物の先物取引の危険性が取沙汰されていた。また、フェアトレードの重要性が指摘されており利益重視の貿易の転換を促す必要性を指摘している。

 家の掃除をしたり、片付けをしたりしていると、妙に心が落ち着いた。要らないものをゴミ袋に入れたり、すぐに使わないものを物置に入れたりと動いている。

 今日は散歩がてら身体を鍛えようと思い立ち、町内の公園を走ったり、歩いたり、体操の真似事をしたりした。もともと地元であり、見知った道であるが、新しい建物が立っていたり、おしゃれなカフェがあったりと楽しく歩くことが出来た。人通りも少なく若干内向的な俺には快適だった。

 細い道に入り後1キロほどで実家に着くという、その時だった。街路樹の影になって人目に触れない路上に黒いワゴンが止まり、数人の男が出てくると、女性を無理やり車に連れ込もうとしている。

 俺は顔をタオルで隠すと、勢いよく走り出した。信じられないほどの速さで近寄ると、心の中で「女性をパーティーメンバーに」と呟くとBB弾を投げつけた。

 車が盗難車だったり、組織的なあれこれで捕まらない腹積もりがあったのかもしれないが、俺には今の状況が気にくわなかった。

 女性以外は電撃により痙攣したように倒れ、その一瞬で風のように加速した俺は女性の手を引くと住宅街に向かって駆け出した。

 奴らは死ぬことはないだろうがチートなBB弾をいくつも食らって普通ではいられない。

 しかし、誰か追ってくるかもしれない。俺は最善策を考えていた。「この女性と異世界転移」と頭の中で呟くと、風景は夕方に、街並みは草原に変わった。

 驚いている女性に、黙って気まずそうにしている俺は、「この事は忘れて貰えますか、俺もあなたのことは忘れますんで」と言った。

「ここはどこですか?さっきは助けてくれましたよね」

「さあ俺もよく分かりません、なんとか戻れればいいんですが」

 俺は実家の近くの警察署を思い浮かべていた。通学時間帯に通学路を通る許可証を両親と俺の分をよく貰いにいくことがあってトイレも何回か借りている。イメージをしていくと転移できることがわかったが、心配そうなそうな顔は変えないようにしたを向いていた。

「トラブルがあるなら警察署に相談したらいいかもですね」

「私もそうしたいですがここがどこか分からないし」

 警察にいったらいけないと言うわけではなさそうだ。俺は心のなかだけでホッとして、転移を始めた。

「ここは?」

「トイレ、男子トイレみたいですね」誰もいなくて助かった。

「外を見てきましょう」俺は心の中でパーティーメンバー一名を解除と呟いた。ステータス画面は頭の中に感じるため、成功したことを確認して、女性がトイレの外に出てこちらが見えないことを確認し、異世界に転移した。

 ステータスを確認するとMP13であった。次に転移できるのは2時間眠るか、4時間休憩するかしかない。その間安全な保証はない。おそらくMPの上限が上がれば回復速度も上がるか自己回復系のスキルが生えるのだろう。喉も乾いてきた。マップ機能がほしいなあ。鑑定スキルで飲めるかどうか分かるだろう。慶子ちゃんは心配しているだろうか。

 これはピンチだ。その時、回復スキルが自分に使われたことがわかったそれも何回も、なぜかMPが徐々に増えていく。20…30…40…50…俺は実家をイメージして転移した。

 

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