第11話 葛藤と決意(見舞い編)

週明けの月曜日、彼女は学校に来なかった。僕は内心安心した反面、胸騒ぎがした。彼女に何かあったのだろうか。僕はどうすればいい?

「湊どうした?体調でも悪いのか?」

稜の問いかけに僕は頷く。正直いうと体調はいいのだが、精神が安定しない。

そのまま機械的に授業を受け、帰り支度をする。

「湊、どうしたんだよ?なんか変だぞ?」

「疲れてるだけだ」

「白波瀬さんとなんかあったんだろ」

図星だった。僕の今日の心ここにあらずな原因は彼女と気まずくなっていることだった。

「気になるんだったら、本人に直接聞けばいいじゃん」

「そうしたいのは山々なんだけどな…」

「白波瀬さんの病院知ってるけど行く?」

一瞬迷った。彼女は今僕に会いたくないのではという思いがあったからだ。今の状況のまま彼女に会っても拒絶されてしまうだけだろう。そう思うとなかなか返事ができなかった。

「僕は行かない。遥奈に会わせる顔がない」

「逃げてんじゃねえよ。お前は怖いだけだろ?」

「何が?」

「白波瀬さんに嫌われることが。あいつのことは昔から知ってるけど、そんなことで嫌うような奴じゃねえよ」

「なんでそんなに遥奈のことを知ってるわけ?」

「俺と白波瀬さんは幼馴染なんだ。昔はよく一緒に遊んだけど、今は男女の壁?みたいなのができて話してくんなくなっちまった」

聞いてもいない昔話をし始めた。正直どうでもよかったのだが、不思議と興味を駆り立てられてしまった。

「僕は行くよ。病院はどこ?」

「っておい、話し終わってねーんだけど?」

「今はその話をしてる場合じゃない。彼女のお見舞いが先だろ?」

「ああ。そうだな。」



稜と校門を出て十分ほど過ぎると大きな建物が見えた。ここが彼女の入院している施設なのか。稜はここに来ることに慣れているのか颯爽とドアをくぐっていった。僕もその後を追う。

彼女を担当している女医に簡単に自己紹介をし、病室へ通される。

「遥奈さん。学校のお友達来ましたよ」

「やっほー」

「…久しぶり」

「帰って。凌くんだけでいいから」

予想通りの反応だった。だけど不思議と悲しくなる。僕は彼女に拒絶されてしまったのだ。

「分かった。帰るよ」


そう言って僕は病室を後にする。

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桜の木の下で君と @suzunatukiyoka

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