第2話 少女との出会い
ここは夢なのだろうか?僕はそう自分に問いかける。
目の前に広がるのは自室ではない。かといって外でもない。何もないのだ。
誰かの声が聞こえる。僕の名を呼ぶ声が。
「~!」音にはなっている。だが言語としては認識できない。
「ピーピー」無機質な電子音が聞こえる。
「はっ」僕、綾瀬湊は布団を剝がし、身を起こした。さっきまでの光景はいつも僕が見る夢の世界だったらしい。壁掛け時計で時間を確認すると朝の七時。僕は我に返り、朝の支度を始める。
洗面所で身だしなみを整える。鏡には不愛想な少年が映っていた。黒髪を左右に分け、顔を泡で洗ってコンタクトをつける。
キッチンで朝食の用意をする。冷蔵庫から作り置きの食材を取り出しさらに盛り付け、電子レンジに入れる。
黒いスマホを見ながら朝食をとる。両親からはテレビを買えと言われたが、買わずにスマホのニュースアプリを使う。なぜ世間は無駄な受信料を払ってまでテレビを使うのだろうか。
僕には全く理解ができない。
自室で制服に着替える。黒いワイシャツにネイビーのネクタイ。ダークグレーのパンツと同色のブレザー。ブラウンの靴下を履き、スクールバックを肩にかけ玄関で靴を履き家を出る。
バス停に着いた瞬間にバスが着く。いつもの光景だ。機械にカードをかざし、空いてる席に座る。周りを見れば中身の無い会話に花を咲かせている者、騒いでいる子供など、ここはいつから動物園になったのか。そんな疑問を流すべくイヤホンをして雑音を遮断する。
バスが止まり、人が入れ替わる。一人の少女が僕の目の前に来る。
「どうぞ」そう言って僕は彼女を隣に座るよう促した。少女はお礼を言って僕の隣に座った。
少女の容姿は、肩まで伸びる黒髪で、雪のように白い肌。服装は白いブラウスに灰色のカーディガン、どこぞの馬鹿な女子どもとは違うひざ丈の黒のチェックスカートにタイツ、黒のローファーを身に着けていた。どうやら彼女は僕と同じ学校の生徒らしい。少女の顔に疑問の表情が浮かび、僕は謝る。初対面の異性が自分をじっと見ていたとなればいい気持ちはしない。
「いえ、その…どこかで会ったことがあるような気がして」
僕は手を顎に当てて組んで考え込む。名前を思い出した。
彼女の名前は白波瀬 遥奈。彼女はいつも楽しそうに、朗らかに友人たちと笑っていた。まるで花の蕾がゆっくりと開いていくように。
「それもそうだと思いますよ。貴女、僕と同じクラスでしょう?」
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