第111話 辺境伯の街の事件捕縛
side 辺境伯
夜がそろそろ明ける、まだ外も暗い時間帯に起こされた。動揺を上手く隠せていない執事の様子にこちらまで不安が掻き立てられてしまったではないか。と内心で文句を言いつつ、妻を起こさないように気をつけた。
しかし辺境伯の奥方として、わたし同様眠りが浅いのか目を覚ましてしまった。起きたのなら仕方ない、執事に呼ばれたので行ってくると身支度しながら説明する。
妻も身支度を手伝ってくれる。その顔は不安を感じているだろうに、落ち着いた様子を保ちつつ笑顔でテキパキと動く。
理解ある妻の様子に伴侶に恵まれたことを感謝しつつ、何かあった時のために備えておいてほしいと頼み館を出て執事に案内させる。
辺境伯家の敷地の外、門からすぐのところに変なものが置かれている。あれは結界か?騎士団にもすでに連絡がいっていたのか、騎士団長ほか10名くらいの一団が控えている。
2つの物体を素早く観察し、光る文字でデカデカと結界の表面に書かれている内容に皆唖然としてしまった。
結界を調べていた騎士団の者が近づいても問題ないと報告してきたので、皆で調べに行く。はじめは後ろにいるように騎士団長も執事もわぁわぁ言っていたが、気になることはさっさと自分で確認したい性分が今だに抑えられない時があり周りには苦労を掛けているがもちろん自重はしない。
「…これは本当なのか?」
しかし、うっすらと見える中の様子からは多分間違いなさそうだ。人攫いと思われる男たちが入っている結界の方には、身なりの崩れた人相の悪い連中が拘束されているようだ。
どの者も皆ひどく怯え、正気を疑うような状態だ。対してもうひとつの結界では、被害者たちが安心したように眠りこんでいる。
こちらの被害者たちも貧しいのだろう、身なりは皆ひどいものだったがあまり荒んだ様子ではないのでいくらか安心した。
「団長、こちらをご覧ください。」と騎士の1人が呼びに来たので、わたしも騎士団長について行く。
見れば押収品と書かれた結界の中に書類やら何やらが詰まっている。結界の解除方法は簡単で、ほんの少し魔力を流せば解除できるようだ。
まず騎士の1人が試してみると解除できた。金貨の詰まった木箱まであり騒然とする。しかし騎士団長がすぐに騒ぎをおさめた。
とりあえず厳重に管理すること、として騎士団長の部屋に運んでいった。あそこには重要物件を収める魔法の倉庫がある。入室制限も掛けてあり、紛失や破損、災害などからの被害を受けないようになっている。
宝物庫や大図書館、領主の書斎や金庫、場合によっては食糧の備蓄倉庫にも使われる保護や保管の魔法。
庶民や冒険者には魔法の袋として認知され、高価ではあるが頑張れば手が届く憧れの商品となっているが元々は王侯貴族や宗教、芸術、文化学術方面から徐々に広まり簡易な物などが作り出されたていったのだ。
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