第110話 辺境伯の街の事件収束

side 主人公


 わたしはまず早く帰りたい者たちを送ることにした。街の地図を広げて何処に送るか教えてもらう。


 地図に触れると扉が現れ、光る扉を開けると目的地に出るという便利魔法である。なんてことはない。転移と地図を繋いだだけであるが、被害者たちはそんな事は分からないのですごく驚き感心していた。


 家に帰れた者たちから無事に帰れたよと、メッセージが届く。言葉を運ぶ小さな蝶がわたしの周りを飛び交う。


 時間は今はまだ真夜中にはなっていない。頑張って急いだが、それでもだいぶ遅くなった。つぎは人攫いたちと被害者たちである。


 この街の辺境伯はとても評判がいい。街の人たちで悪く言う人もいない。子供たちも同じような反応だったので、たぶん良い領主さまなのだろう。


 さて騎士団の方はというと、こちらも大丈夫そう。男の子たちの多くが騎士たちに憧れを抱いているようで、でも騎士に庶民がなるのは難しいからか強い冒険者に次点で人気が集まっているようだった。


 ちなみにこの街には庶民でもなれる兵士の職もあるし自警組織もあるのだが、制服がイマイチだとか強くなれば稼げる冒険者の方が夢があるし装備が格好いいとかの理由で4位や6位に甘んじているらしい。あくまでこの辺境伯領限定のなりたい職業ランキングの話のようだが。


 ということで、人攫いたちや被害者たちの対応を辺境伯や騎士団に任せてもたぶん大丈夫そうなので辺境伯のお屋敷の前に結界の檻を作って閉じ込める。


 森から転移させようとして改めて気づいた。


 「臭い!汚い、えっ、どうして?」


 森の空き地に戻ると、人攫いたちはガタガタ震えながら恐慌状態だった。あれっ、なぜ?失禁したり、嘔吐の痕跡があったりと酷い有様だった。


 しっかり結界に守られていたはずなのに、なにが怖かったというのか。


 とにかくただでさえむさ苦しいのに汚くて臭いなんて困る、わたしが。こいつらを連れて行かないといけないのだから、なんとかしなくては。


 わたしはクリーンをしっかり人攫いたちにかけて、とりあえず側によっても吐きそうにならないくらいにはなったと思う。


 檻にはこいつらが何をしたのか、魔法の文字で結界に書きこんでいる。


 隣には檻からは見えないようにして被害者たちを保護した結界がある。被害者だと表示しておき、中ではゆっくり休めるように床が柔らかくしてある。


 朝になって助けが来るまで彼らには眠ってもらうつもりだ。だいぶ消耗しているし、精神的にも辛かっただろうから何も心配せずに助けを待っていてほしいと思った。

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