第105話 辺境伯の街の子供たち

side 主人公


 ダンジョンで子供同士で狩りや採取をしていると、知らない間に顔見知りが増えてきた。顔見知りと言っても子供ばかりであるが。


 ダンジョンに行く顔ぶれは都度変わるので毎日会うわけではないが、このところ見かけないなと思う子供たちもいる。


 見習い仕事の関係だったり、学校の課外授業の関係だったりと理由がはっきりしている場合は安心だ。


 しかし今日のような時は、放っておけない感じ、胸騒ぎ?嫌な感じ、とにかくそんな感じがする時はお節介とは分かっていてもじっとしていられない。


 はじまりは、2、3日前。何人かの子供たちの様子がおかしくなり始めたこと。どこか怯えているような、周囲を警戒しているような、それでいてもう諦めているような、嫌な感じが漂っているのだ。


 それとなく聞いてみると、時折り身の回りから子供が消えるようなのだ。しばらくなかったそうだが、なんとなくまた始まったような気がすると皆言う。


 気がつくと人が減っていて、知り合いを見かけなくなっているという。気になって探しても見つけられない。噂の中には、いいお家にもらわれたようだとか、王都に行ったとか、良い仕事が見つかったとか聞くのだがどことなく胡散臭いと皆感じているらしい。


 わたしは森での活動の中で、盗賊の討伐や人身売買の摘発を行ったことを思い出していた。


 今回のこともわたしはどうしても気になって気持ち悪くて仕方がないから、いなくなった子供たちをボランティアで探すことにした。


 と言っても、全員に面識があるわけではないので採取しながら考える。とりあえずこれ以上行方不明の子供を増やさないことから何とかしよう。


 この世界の人々は多かれ少なかれ皆魔力を持っている。そして個体識別がそれによって出来る。もちろん人間の国が魔力で人口を管理とかしているわけではない。


 産まれたもの、死んだもの、すべて即座に把握できたらすごいのだろうが、まだどこもそんなことはできていない。


 わたしは不安そうな、怯えている子供たちに小さなお菓子を配った。そして、住処に戻ったら知り合いの皆に配るように言い含めた。


 とくにいなくなる子供たちに似ている子供たちに食べさせてと。そして出来ればさらにたくさんの、いなくなりそうな雰囲気の人たちにも食べさせてと頼んだ。


 ほかにも子供たちにやってもらったことがある。それは粉末状の非常に細かい粉(原料は魔物の骨粉に蛍光植物の粉砕したものを加えて魔法をかけた。触ったものにどんどんくっ付いて広がるように、そして合図をしたら光るように。呼びかけた時には匂うように。)を一振りづつ皆にかぶってもらうこと。


 そしてこれも身近な人たちに振りかけて周ってと。なるべく皆に行き渡るように、ほんの一振りでいいとお願いした。


 わたしは森の拠点の洞穴に帰ると、この街周辺の地図をテーブルの上に広げる。


 お菓子には発信機のような作用を持たせた。もちろん食べても問題はない。地図上にお菓子を食べた者たちを表示させる。お菓子の中に、魔力に作用する術式を組み込んだのだ。


 個々の持つ魔力に作用し、状態や周囲の状況も簡易ながら伝えることができる。ソナーのようなものである。


 わたしはさらにテーブルに何枚かの地図を広げて、そっと地図の上に手をかざす。


 一枚の地図には割と細かく、お店などが書き込まれている。もう一枚の地図にはしっかり住居表示が描かれている。もう一枚は何かの理由で色分けされている。


 お店などが書き込まれた地図にたくさんの光の点が現れた。

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