第103話 辺境伯の街の商会(付与と鑑定)
side 主人公
わたしは商業ギルドのギルドマスターの前に、魔法を付与した作品を並べた。そしてその横に紹介状も置いた。
「これは…驚いた。付与はなかなか有望な能力だ。生活にも役立つし戦でも必要とされるしね。今の段階でも売り物になるよ。きちんと学べばもっと高度な付与も行えるだろう。今より確実に腕が上がるね。こちらの紹介状も拝見しよう…なるほど、君の鑑定の能力…わたしたちは確かに高ラベルの鑑定の能力についても評価しているよ。わたしのオススメは、商業ギルドに登録し、作った魔道具を定期的に卸してもらうこと。そして鑑定師としても商業ギルドで臨時の雇用契約を結んでもらい、必要に応じて仕事を依頼する形はどうかな。」
「商業ギルドの登録をすれば、露店や屋台も出せるでしょか?」
「ああもちろんだとも。君へのオススメは、DかEランクかな。1番下のランクだと毎回更新しないと登録が抹消されてしまうし、更新の都度登録料が必要になる。それより上のランクに上がれば登録のし直しではなく年単位で税金がかかる。ただ何年か分をまとめて先に払うこともできるし、店を構えるのでなければそれほど負担額も多くはないと思う。」
商業ギルドのランクはつぎのようになっている。
A大商人 各国に支店をもつ
B中商人 国内に支店をもつ
C商人 店を構える
D行商人 各国で活動可
E露店/飲食屋台 国内
F露店 3ヶ月契約
わたしはお店を構える気はないが、各国で同じように活動できるのはいいと思う。飛翔の魔法や転移が使えるわたしには、移動によるデメリットがほぼない。
ある意味、この大陸どころか世界中を好きに飛び回れるのだ。瞬時に、その上アイテムボックス持ちなので商品の輸送にも保存にも不安がない。知られたら厄介で、でも圧倒的な強みである。
わたしは当初の予定通り登録をお願いした。
「ではDランクで登録する、でいいんだね。本来ランクを決める場合、一定期間の販売実績や商品の品質、登録者の素行も判定されるんだけどね。今回は特別だ。君の能力と魔力、商業ギルドへの貢献度を考慮、そして3人の推薦があるということでDランクにしようね。3人というのは、君に紹介状を書いた店主、商業ギルドのギルドマスターのわたし、それからここに同席しているこちらの職員だよ。そしてこの貢献度には期待値も含まれているから、当面は商業ギルドからの依頼をぜひ優先してこなしてほしい。いいかな?」
「ありがとうございます。あのう、商業ギルドからの依頼とは何か聞いてもいいですか?」
「うん、もちろんだとも。予想しているかもしれないが、いくつかの商会を鑑定してほしい。まだ顔を知られていない今だからこそ、こっそり動けるんじゃないかと期待しているのでね。」
もしかしてあの偽物騒ぎは、あのお店だけの問題ではないのかも。とはいえ、わたしは探偵でも警察でもない。悪いことに協力するのでないのなら、お仕事として頑張ります。
「あぁ、紹介が遅れてしまってすまなかったね。こちらは、魔道具部門の副所長補佐だよ。今回の魔道具、買い取っていいんだよね?」
「はい、お願いします。わたしには相場とか適正価格も分かりませんので。」
そうは言ったがわたしには鑑定がある。この鑑定使い続けたおかげで、とてもいろいろなことを教えてくれる。物のだいたいの相場もそうで、市場や露店でも損をすることはたぶんない。
鑑定がなかったら、もっとぼったくられたり、逆に買い叩かれたりしていただろう。注意喚起もしてくれるし、物の鮮度や商品の出来についてもアドバイスしてくれるので異世界初心者の心強い味方さんである。
「この後時間あるかな。じつは魔道具部門に案内したいんだ。それから今後の納品についても話し合っておきたいと思うんだけど、どうだろう?」
それまで黙っていた魔道具部門の副所長補佐の人から提案された。
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